合流
幻覚魔法の核を見つけたガウェイン達。
核であるガングラティ・ガングレトとの戦いの中、ピンチを切り裂いたのは……。
「「うわわっ!?」」
放たれた無数の水球と氷塊によって吹き飛ばされるガングラティとガングレト。
そこに巨大な火球が直撃して爆発する。
だが、
「いったーい!」
「ひどいよ!」
未だ元気なガングラティとガングレトが姿を現す。
ダメージは確実に与えているはずだ。
「いまの攻撃でも駄目ですか」
「面白いよね」
「何も面白くないですよ!」
ランスロット、ガウェイン、ペリノアがガングラティとガングレトの相手をしている後方で静かに魔力を溜めていた。
その横にはトリスタンが治癒魔法を掛けてくれていた。
少しでも私の負担を軽減するためだ。
ランスロットの立てた作戦は単純だが、確実なものだ。
前衛の三人で足止め(出来れば倒す)をして私の最大出力で一気に仕留める。
幸いな事に先ほど一掃してから人形達が出てくる気配は無い。
「今度はこっちの番だよね」
「「いくよー!」」
ガングラティとガングレトが声を合わせながら両手を突き出すと、吹雪となって襲いかかって来る!
「ウォーターウォール!」
ランスロットが前面に水壁を作る。
「っは!」
ペリノアがランスロットの作った水壁を凍らせる事で分厚い氷壁が出来上がった。
と、その氷壁を溶かす勢いでガウェインのガラディーンに炎を纏わせる。
「いくよ……はぁ!」
ガウェインがガラディーンを振り下ろすと燃え盛る炎が氷壁も迫り来る吹雪をものともせずに突き進んで行き、ガングラティに直撃した!
「っラティ!?」
ガングレトが悲鳴を上げる。
「いきます」
カリバーンを構え直すとガングラティとガングレトの周りを水壁が覆った。
ランスロットが逃げ場を塞いでくれたのだ。
「カリバーン、いきますよ」
私の声に応える様に輝きを強くなる。
ガングレトに向かって振り下ろすとカリバーンからこれまで以上の巨大な光が放たれた。
「あ……」
光はガングラティとガングレトを呑み込み幾つもの壁を突き抜ける。
「はぁ……はぁ……」
荒くなった息を整えながら様子を伺う。
「っ!?」
周りの景色がぐにゃりと歪むと、戦闘でボロボロになった筈の部屋が豪華な広間になっていた。
「違和感がなくなりました」
トリスタンの言葉を聞いて幻術魔法が解けたのだと分かった。
前方の床を見ると、ボロボロになった青と赤の人形が転がっていた。
「……これは!」
前方から巨大な魔力を感じて広間の奥を見ると巨大な扉が出現していた。
魔力は扉の向こう側から感じる。
「どうやら、あの奥にお目当てのボスがいるみたいだね」
ガウェインが嬉しそうな声を出す。
「でも、ロキさんがまだですよ」
トリスタンの言葉に周りを見渡すが、ロキの姿は無かった。
「なに、幻術魔法も解けたんだから彼もすぐに来るさ」
「……どうしますか?」
ランスロットが私に尋ねる。
「ロキの事もあるのでトリスタンはここに残ってロキを待っていて下さい」
「分かりました」
と、トリスタンの周りを氷が囲った。
「……内側からなら簡単に出れるわ」
ペリノアがトリスタンに告げる。
どうやら防壁のようだ。
「あ、ありがとうございます!」
「……」
返事は無かったがトリスタンは嬉しそうだった。
広間を進み扉の前まで行くと館の入口にあった門と同じく勝手に開いた。
扉の向こう側はまた通路になっていた。
が、肌に感じる魔力が格段に強くなった。
この奥に組織のリーダーが居るのは間違いなさそうだ。
「……行きましょう」
メンバーと顔を見合わせて進んで行くのだった。
〜
「っちぃ!」
右頬を掠めたトンファーに舌打ちする。
迫るもう片方のトンファーをフェンリルで防ぐ。
「……」
少女は無表情のまま淡々とトンファーを振るってくる。
「くそっ、これじゃあ人形を相手にしてんのと変わんねぇ!」
疲れを知らない人形の様にそのスピードは一向に劣る気配は無い。
「っ……このっ!!」
フェンリルから放たれた魔力弾が少女の左腕に直撃する。
が、少女は直撃したはずの左腕でトンファーを振るってきた。
「おいおい……タフってレベルじゃねえぞ!?」
振るわれたトンファーをフェンリルで受け止める。
「!?」
その時伝わってきた感触に顔をしかめる。
振り下ろされた右のトンファーをフェンリルの銃口を向けてながら軸として使い少女の背後に回り込む。
「少し大人しくしとけ!」
バスターをほぼゼロ距離で放つ。
さすがに今回は避け切れず少女が吹き飛ばせれて壁に突っ込んだ。
だが、俺は気を抜かずに様子を伺った。
「ちっ……やっぱりか」
そこにはボロボロになりながらを立ち上がった少女がいた。
完全に精神操作(マインドコントロール)されているのだろう。
右腕は完全に折れているので痛覚による意識回復を避けるために痛覚遮断も施してあるのは間違いない。
……これ以上やると不味いな。
そう思うがこちらの思考を中断させる様に再び少女が向かって来た。
「くそっ!」
襲いかかって来るトンファーを避けながら打開策を考える。
既に少女の動きは読める様になっており避けるのは簡単だ。
「……さて、どうすっかな」
攻撃してくる少女を見る。
相変わらず無表情のままだ。
だが、もはや少女の身体がボロボロなのは一目で分かる。
これ以上攻撃すれば確実に少女の命に関わる。
だが、これ以上ここで足止めされている訳にもいかない。
「……ん?」
打開策を立てれないまま攻撃を避けていると、急に少女の動きが止まった。
続けて周りの景色が歪む。
広間だった筈の場所が長い通路に変わった。
ふらっと少女が倒れ込んだ。
少女を抱き起こすが気を失ったようだ。
「さすが、マリアが太鼓判を押すだけはあるな」
どうやらアーサー達が幻術魔法を解いたらしい。
応急手当を終えて調べてみると、この少女がギルドの魔導師だということが分かった。
この少女がマリアの言っていた俺に合わせたい魔導師だったようだ。
「よっと」
少女を背負い強い魔力を感じる方に歩き出す。
…………
………
……
「……ん」
しばらく歩いていると背中から声が聞こえた。
「よお。起きたか?」
「……ここは?」
声を掛けるが、どうやら状況が掴めてないようだ。
「……なっ!?お、降ろしなさい!?」
そして自分が背負われているのに気づいたのか暴れ出した。
「おい!あんま暴れんな!」
「っ!?」
と、傷に障ったのか動きが止まる。
無理もないだろう。応急手当はしたが身体はまだボロボロなのだ。
俺は少女をゆっくりと降ろす。
「俺はロキ、ギルドの魔導師だ。お前は?」
「ガルムよ。……それで、どうして一人で此処にいるのかしら?」
「マリアからお前の救助とこの組織の壊滅を依頼されてな」
「なっ!?」
信じられないという顔だな。
「もちろん俺だけじゃないぞ。チーム・アヴァロンと一緒だ」
「そう。なら、他のメンバーは?」
「館に入った瞬間に幻術魔法に掛かっちまってはぐれた」
「はぁ!?」
いきなり耳元で声を出すなよ。
「心配すんな。さっきお前の洗脳と一緒に幻覚魔法も解けたから。今向かってる所だよ」
「そう。……っ」
「悪いな、応急手当しか出来なくて。チーム・アヴァロンには治癒魔法の使える奴がいるから我慢してくれ」
そんな会話を続けながら巨大な魔力を感じる場所を目指して歩くのだった。
…………
………
……
「あ、ロキさん!」
しばらく長い通路を歩いていると氷の壁に囲まれたトリスタンを見つけた。
「そんな所でなにやってんだ?」
「ロキさんを待ってたんですよ!これはペリノアさんが作ってくれた防壁なんですよ。……あれ?その人は?」
トリスタンの目が俺に背負われているガルムに向く。
「あぁ、こいつがガルムだ。途中で拾った」
「ちょっと!人を犬みたいに言わないでくれる!」
「分かったから耳元で騒ぐな」
「あ、えっと。はじめましてチーム・アヴァロンのトリスタンっていいます」
トリスタンが少し困った顔でガルムに挨拶した。
「私はガルムよ。ごめんなさいね、貴女みたいな小さい子にまでこんな所に来る羽目になって」
「い、いえ。ガルムさんが無事で良かったです!」
「それよりも早くそこから出てガルムの手当てをしてくれ」
「え……あ、はい。分かりました!」
ずっと氷に囲まれたいたことに今更気づいた様子のトリスタン。
アッキヌフォートを構えてどうやら内側から壊すようだ。
が、
「え?」
「!?」
トリスタンが攻撃するより早く、氷壁にヒビが入り粉々に砕け散った。
「おい、トリスタン!この防壁は自動で壊れる様に作ってたのか?」
「いえ。ペリノアさんは内側からなら簡単に壊せるとしか……」
構築された魔法は打ち破られるか発動者の意思でしか解除されない。
俺が着いたか分からないペリノアが今のタイミングで氷壁を解除するのはありえない。
だとしたら……。
「トリスタン。ガルムの治療は後回しだ!ちょっと揺れるけど我慢しろよ。急ぐぞ!」
「はい!」
俺はガルムを背負ったまま全速力で廊下を駆ける。
トリスタンも遅れまいと全力で追走していた。
目の前の迫って来た巨大な扉を強化魔法で強化した足で蹴り破る。
扉の向こう側は広間だった。
奥の方には祭壇が存在している。
そこで俺たちが見たのはボロボロになって倒れているチーム・アヴァロンの姿と祭壇の上に立っている魔女の姿だった。




