チーム・ケルベロス
ギルドマスターのユミルから隣町で行われる裏取引の阻止という依頼を受けたロキ、ガルム、マーニらチーム〈ケルベロス〉の三人。
依頼人のクーフェから話を聞くと詳しい取引場所は分からないという。
仕方なく取引場所を手分けして探す事になったのだが見つからなかった。
その夜、帰りの遅いガルムを待っていたロキとマーニのもとにクーフェが訪ねて来た。
なんとガルムが裏取引の組織に捕まったらしい。
「実は皆さんが取引場所を探しに行った後に組織の男達が来て捕まってしまったんです。そしてガルムさんは私を助けようとして……」
クーフェが申し訳なさそうな表情で話してくれた。
どうやらガルムはクーフェを助けようとして捕まったらしい。
「ふーん、何処であいつは捕まったんだ?」
「え?東にある路地裏ですけど……」
クーフェに場所だけ聞いたあと、いつもの黒いロングコートを身につけてから窓を開け窓枠に足をかける。
「マーニはクーフェのことよろしくな」
「了解しました」
「ロキさんは?」
「ちょっくら散歩」
「え?」
話について来れなかったクーフェへの説明をマーニに任して窓の外に跳ぶ。
「なっ!?ここは四階ですよ!?」
クーフェの驚いた声が聞こえたが無視する。
身体か重力に包まれる。
足元に魔法陣を展開して魔法を発動して着地。
「ったく……世話のかかるチームメイトだな」
~
「…………ん」
ここは……。
あたりを見るとどうやら何処かの部屋ようだ。
……廃墟かしら?
あの後、薬を嗅がされて意識を失ったあとここに連れさられたらしい。
足は宙に浮いていており両腕は天井から吊るされた鎖によって頭の上で固定されていて動かせない。
魔法陣を展開して魔法を使おうするが……。
「……やっぱり駄目みたいね」
どうやらこの鎖は魔封石で作られているらしい。
魔封石とは言葉のとおり魔法を封じる石で、魔法を犯罪に悪用したりする魔導師の魔法を封じるためなどに使われる物だ。
「はぁ……」
自分の不甲斐なさにため息が出る。
打つ手が無いのであたりの様子を伺うと薄暗い部屋の前方に扉が一つと上の方に天窓が一つあり、天窓から月明かりが差し込んでいるので今が夜だということが分かった。
これからどうするか考えようとした時、前方にあった扉が開き数十人の男達が入って来た。
あのリーダーらしき男も居る。
「お目覚めですか、お嬢さん?」
「えぇ、お陰様でね」
嫌味ったらしい男の言葉に腹が立つ。
「あんた達、ギルドの魔導師にこんな事して唯で済むと思ってるの?」
「お嬢さんの方こそ、この後どうなるか分かってるのかい?」
男達の悪意に満ちた目が自分に向けられるのが分かった。
「……最低ね」
「褒め言葉として受け取りましょう」
リーダーらしき男が近づいて来る。
その目には欲情が溢れていた。
「…………っ」
男はチューブトップを一気に破いた。
両腕を吊るされているので隠すこともできない。
「おや、以外と着痩せするタイプなんですね」
「あんたなんかに言われても少しも嬉しく無いわよ」
「そうですか……」
男がつまらさそうな顔をする。
「では、こちらはどうでしょう?」
「っ!」
すると今度は男の手が今度はショートパンツに伸びる。
足を全力で閉じて降ろされないようにする。
「往生際が悪いですね。こういうのはどうですか?」
男の手が太ももの内側に伸びて、撫でるように触ってくる。
「ん……っく」
「なかなか良い肌触りですよ?」
男がいやらしく笑う。
言いようのない嫌悪感がこみ上げてくる。
「こっちはどうですか?」
男は左手は太ももを触ったまま、右手を上に移動させる。
「ぁぅ……くぅ……」
男の右手が無造作に胸を掴んだ。
乱暴な動作に痛みを感じるが魔法はおろか抵抗も出来ない今の状況では我慢するしかない。
「……そろそろヤりますか」
しばらくして男が周りにいる男達に合図する。
すると二人の男が近づいてきた。
「足を広げて下さい」
「!!」
男の指示に従って二人の男が一つずつ足を持って広げようとする。
「くぅ……ぅ……ぁぁ」
流石に大の男二人に力で敵う訳なく両足を大きく広げられる。
男はゆっくりとショートパンツを脱がした。
「おやおや白ですか、意外と純真なんですね」
「……っ」
男の言葉に顔が赤くなるのが分かった。
「さて、いよいよですね。助けを呼んでも良いんですよ?……まぁ、誰も来ないですけどね」
男の手が下着に触れる寸前。
「……ロキ!」
頭のに浮かんだ青年の名を叫んだ瞬間、前方にあった扉が突然吹き飛んだ。
部屋が煙が立ち込める。
「ゲホゲホ、なんだぁ!?」
煙が晴れる。
そこに居たのは……。
「……あ」
「悪りいな。遅くなった」
まるで待ち合わせに遅れたような様子のロキだった。
~
邪魔だった扉を蹴り破る。
威力が強すぎたのか、扉は木っ端微塵に吹っ飛んで部屋中に煙が立ち込めてしまった。
煙が晴れて中の様子が目に映る。
奥の方で鎖に繋がれているガルムが居た。
その他男が三十人くらいか。
「……あ」
「悪りいな。遅くなった」
ガルムはほとんど服を脱がされた後だった。
ギリギリセーフって所か?
「……どうやらギルドの方らしいですね。いったいなんのようでしょうか?」
「少し待ってろよ。直ぐにそっちに行くからな」
男の言葉を無視してガルムに話しかける。
「……今の状況が分かって無いようですね。この状況でどうやってこちらに来るんですか?」
ガルムの側にいる男が合図すると他の男達が懐から短刀を取り出した。
「……てめえ等こそ、人の仲間に手を出しておいてただで済むと思うよ?」
ロングコートの内側からあるものを取り出すと同時に撃つ。
「がっ!?」
その瞬間、六人の男達が一斉に吹っ飛んだ。
「なに!?」
さっきまで余裕の表情だった男が驚愕の表情に変わる。
「うわっ!?」
更に二人の男が吹っ飛ぶ。
「それは……魔法銃!?」
「アタリだぜ!」
俺の手に持っている物を見て男が驚きの声をあげる。
「っぐわ!?」
また一人吹っ飛ぶ。
俺が取り出したのは漆黒のリボルバー型の魔法銃〈フェンリル〉。
魔法銃は弾丸の代わりに魔力を込めて撃つ。
「何をしているのですか!?接近戦に持ち込みなさい!」
男の指示通り残っていた男達が一斉に走って来て、合わせたかのように短刀で切りつけてきた。
……甘ぇよ!
数回の重なった金属音の後に男達がその場で倒れる。
男達の短刀は全て刃が根元から折れていた。
「なっ……いったいどうして……」
男は訳が分からないという顔をしていた。
「コイツをぶつけただけだぜ?」
フェンリルを男に見せる。
銃身には傷一つ付いていなかった。
「くぅ……まぁいいでしょう」
男が指を鳴らす。
すると、部屋の奥から三人の男が出てきた。
その男達は人質らしき人を連れていた。
リーダー格の男を見るとまた余裕そうな表情をしていた。
「どうするのですか?」
「どうするってなにが?」
「なにがって、こっちには人質がいるんですよ!?」
「……で?」
「っ!こいつらを殺しても良いんですよ?大人しく降参したらどうですか!?」
男の口調が荒くなる。
どうやら相当頭に血がのぼっているようだ。
「殺せば?」
「……は?」
男が呆気にとられた顔をする。
人質も人質を連れている男達も似たような表情をしていた。
「いま、なんて言いました?」
「だから殺せば?……ま、殺せるならの話だけどな!」
フェンリルを最速で連射して人質を連れていた男達を気絶させる。
「なっ!?」
リーダー格の男がもはや言葉を失う。
「っ……なら、これでもっひぃ!?」
男が片腕を上げるより早く懐に潜り込み下顎にフェンリルを突きつける。
「寝てろ」
フェンリルの引き金を引く。
ゼロ距離で魔力弾を受けた男は一瞬浮かんで倒れた。
「威力を最低まで抑えたんだけどな。……ほら、あんた達は早く帰りな」
「は、はい。ありがとうございました」
報然として立ちっぱなしだった人質の人たちに声を掛ける。
人質の人たちはお礼を言った後、早足で部屋を出て行った。
「さて……」
改めてガルムの方に向かう。
「……エロいな」
窓から漏れる月明かりに照らされた姿を見て思わず本音が零れた。
「馬鹿言ってないで早くこれを外しなさいよ!」
「へいへい……」
ガルムを縛っていた鎖を撃ち抜く。
「きゃっ」
ずっと宙にぶら下がっていたせいか上手く立てずに尻餅をついた。
ガルムはあわてて胸元を両手で隠す。
「はぁ……ほら」
ロングコートを被せたあとに、しゃがんで背を向ける。
「……」
背中に多少の重みが掛かる。
そこでガルムが微かに震えているのが分かった。
「……来るのが遅いわよ」
「悪かったって。さっさと帰るからしっかり掴まっとけよ」
シャツを握る手の力が強まったのを確認してから帰路についた。