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BLACK KNIGHT  作者: しーどら
18/22

エーリューズニル

ヘルヘイムで死の風のアジトであるエーリューズニルを見つけたロキ達。

だが、館に入った途端にロキはチーム・アヴァロンとはぐれてしまうのだった。

「ロキさーん!」

「……どうやらはぐれてしまったようですね」


どうやら館に入った時に幻覚魔法にかかってしまったようだ。

トリスタンが必死に叫んでいるが返事は帰って来なかった。


「仕方ないですね。とりあえず私達だけでこの屋敷の中を調べましょう」

「そんな、ロキさんは!?」

「心配いらないよ。彼は強いから」

「でも……」

「それに僕らが敵を倒せば彼も助かりますよ」

「!……分かりました」


ランスロットの言葉にトリスタンの目にやる気が漲ってきた。


「では行きましょうか」

「はい!」







「ふぅ……まさか幻覚魔法に掛かるなんてな」


現状を見て、自分が幻覚魔法に掛かった事を確認する。

昔なら絶対掛からなかったはずだ。


「どうすっかなぁ……」


考える事数秒。

俺はフェンリルを抜いて館の壁に向けてバスターを放った。

壁に大きな丸い穴が空いたのを確認してその穴を進む事にする。


「ま、いつか出られるだろ」







そんなロキとチーム・アヴァロン様子が薄暗い小部屋に映し出されていた。

それを興味深げに見ている女。

大きなツバ付き帽子に紺色のコートを纏っている。

その後ろには鎖で繋がれた少女が居た。


「くくく、どうやらお友達が助けに来たみたいね」


女は鎖で繋がれた少女に語りかける。


「それに……面白いのも来たみたい」


女の目には壁を撃ち抜いて進むロキの姿が映っていた。


「ここらで挨拶でもしようか。ねぇ、ガルム?」

「……」


女が後ろの少女に語りかけるが返事は帰って来なかった。







「ど、ど、どうしましょう!?アーサーとランスロットまで居なくなってしまいました!?」

「落ち着いて、恐らく僕たちは幻覚魔法に掛かってはないよ」


アーサーとランスロットが居なくなってパニックになっているトリスタンを宥める。

敵が何処にいるか分からない以上大きな音を出すのは得策ではない。

……いつもはランスロットがやってくれるんだけどね。


「ふぇ?なんで分かるんですか?」

「君が居るからね」

「?」


先ほど幻覚魔法に違和感を感じだトリスタンは、幻覚魔法に掛らないだろう。

……自覚はないみたいだけどね。


「……まぁいいさ。とりあえず進もう。きっとアーサーたちともそのうち会えるさ」

「そうですね。行きましょう!」


とりあえず元気になって歩いて行くトリスタンを追うことにした。


「それに……」


後ろを振り返る。


「……なに?」


ペリノアが不機嫌そうに聞いてきたので笑って前を向く。

……彼女が幻覚魔法に掛かるなんて考えられないからね。


「……何か来ます!」


前を歩いていたトリスタンが叫んだので通路の奥の方を見てみると確かに何かが近づいて来ていた。


「……人、かな?」


通路の奥から歩いて来たのは二人の人間だった。

片方の人は剣を持っていた。

あちらも此方に気付いたのだろう。

歩くのを止めてこちらに走って来た。

二人は走りながらも魔力弾を飛ばして来た。


「やっぱり敵みたいだね」

「そんな事言ってる場合じゃないですよ!」


ツッコミを無視して構え魔力を高める。

トリスタンもアッキヌフォードを構えた。


「ふっ!」


拳を前に突き出して火球を飛ばし、その後ろを姿勢を低くして追走する。

二人は左右に別れて避けたので左側に避けた剣を持っている人の前に飛び出す。

火球の後ろから飛び出した僕を見てもそいつは驚いた様子は無かった。

相手は剣を振り上げるが、


「……遅いよ」


ガラディーンで剣を弾いて、もう一方の空いている手で相手の鳩尾を殴りつける。


「……?」


殴った瞬間に違和感を感じた。

もう一方の相手の左肩に魔力矢が刺さったが、相手は構わずにトリスタンに向かって魔力弾を連射した。


「きゃあ!?」


悲鳴をあげながら魔力弾を避けるトリスタン。

隙をついて魔力矢を放つ。

今度は相手の右足に命中した。

が、相手はまたもや気にせずにトリスタンとの距離を詰める。


「頭を狙うと良いよ」

「えっ!?でも……」


トリスタンの顔が青くなる。

僕は足に炎を纏わせて目の前の相手の頭部を本気で蹴り上げた。


「ガウェインさん!?……えっ」


がしゃんっという音と共に蹴り上げた相手の頭部が砕けた・・・


「大丈夫だよ……こいつらは人間じゃないからね」

「人……形?」


そう。

二人は人間ではなく人形だったのだ。


「さぁ……遠慮はいらないよ。魔物だと思ってやってごらん。なんなら僕がやろうか?」

「だ、大丈夫です!」


短く息を整えた後にトリスタンが魔力矢を放つ。

風魔法を付加した魔力矢は人形の中心を貫いた。


「やりました!……きゃっ!?」


喜ぶトリスタンの手を引き寄せる。

さっきまでトリスタンが立っていた場所を魔力弾が通り過ぎていった。


「す、すみま……」

「どうやら次が来たみたいだね」

「……後ろからも来たわよ」


ペリノアの声に振り返ると言葉どおり挟み撃ちにされたらしい。


「とりあえず、遠慮せずにやろうか」

「はい!」

「君も手伝ってくれるかい?」


立ったままのペリノアに尋ねる。


「お願いします。ペリノアさん」

「……分かったわ」


トリスタンの頼みが効いたのかペリノアが頷いてくれた。


「早く片付けてアーサーたちと合流しようか」

「はい!」







薄暗い通路でランスロットと辺りを見回していた。


「……今度はトリスタンとガウェイン、ペリノアとまではぐれてしまいましたね」

「まずいですね……」


相手の人数は不明でこちらは徐々に分断されている。

通路は真っ直ぐではぐれる訳ないはずだ。

恐らくロキが言っていた幻覚魔法だろう。

そして幻覚魔法に掛かっているのは私たちだ。

確か、先ほどロキは魔力弾で何か核のような物を破壊して幻覚を破ったはずだ。


「ランスロット、幻覚魔法の核を探しましょう」

「分かりました」


私の指示に返事をしながらランスロットがアロンダイトを構える。


「ですがその前にやらなくてはいけない事があるそうですね」

「そのようです」


カリバーンを構える。

通路の前後から魔力弾が飛んできた。

私とランスロットはお互いの後ろから飛んできた魔力弾を切り払う。


「後ろは任せましたよ?ランス」

「はい」


お互いに背中合わせに会話する。

その顔にはずらずらと近づいて来る人影に怯えている様子は微塵も無い。







「……ったく、なんなんだよ。こいつ等は!?」


何発目か分からないバスターを放ち追いかけてくる人形達を吹き飛ばしながら悪態をつく。

壊した数は三十を超えたところで数えるのを止めたので分からない。


「これじゃあキリがねえな。……あいつらは無事なのか?」


思っているうちにも複数の魔力弾が飛んでくる。

フェンリルで弾いたり避けたりしながら壁を撃ち抜いて進んでいく。


「っ!邪魔だ!」


魔力弾を放ってくる人形にバスターを放つ。

黒い砲撃は人形を幾つも呑み込む。


「……ったく、本当に何体いるんだよこいつら!?」


が、またぞろぞろと湧いてくる人形を見て構ってられないと壁を壊しながら進んでいく。


………


……



しばらく逃げていると魔力弾が飛んでこなくなった。

振り返ってみるが人形の姿は無かった。


「なんだ?……っ!」


疑問に思っていると横にあった壁が吹き飛び強烈な突風が襲ってきた。

風の属性魔法か!

風が止むと周りの壁が無くなっており広間の様になっていた。


「!」


そして、前方には一人の少女が立っていた。

両手にトンファーを握った少女だ。

顔に仮面をはめていて表情は読み取れない。

先程の突風はあいつの仕業だろう。


「……人形じゃあないみたいだな」


少女に一歩近づく。


「なぁ、お前は……っ!」


声を掛けようとした瞬間、少女がトンファーを振るった。

すると魔法陣が展開されてその魔法陣から横向きの竜巻が俺に向かってきた。


「問答無用かよっ!」


俺は右に回避して少女に向かって走る。

少女も俺に向かって飛んできた。

おそらく魔法で自身を浮かせているのだろう。


「とりあえず聞くのは後だ!さっきからイラついてっから手加減しねえぞ!」


そう言って少女にバスターを放つ。

先程まで撃っていたバスターより一回り大きい。


「……」


少女はバスターの横ギリギリを飛んで避けて接近する。


「ちぃっ!」

「……」


俺のフェンリルと少女のトンファーはぶつかる。


「なっ!?」


ぶつかった瞬間に魔法陣が展開され、魔法陣から放たれた竜巻によって俺は反対側の壁まで吹き飛ばされた。

空中で態勢を整えて壁に着地して地面に降りる。

前を向くと少女は追撃をせずに浮いたままだった。

こちらの様子を伺っている様だ。


「くそっ……今度はこっちの番だ」


フェンリルを少女に向けて魔力弾を連射する。

少女は前方には円型の風を発生させて魔力弾を防いだ。

俺は少女の下を通り抜けて後ろに回っていた。

先の連射は目くらましだ。

フェンリルで少女を後ろから殴りつける。

接近に気づいた少女が左のトンファーで攻撃を防ぐが、


「遅えよ」


フェンリルの銃口は少女に向いている。

それに気づいたらしく距離を取ろうとするがこちらが撃つ方が確実に速い。

フェンリルの引き金を引き、放たれた魔力弾は少女の仮面に直撃した。

そこで初めて少女の顔が目に映る。


「っ?」


だが、その表情は読み取れなかった。

少女の目には何も映っていなかったのだ。

その瞳はまるで意識の無い人形のようだったのだ。

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