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BLACK KNIGHT  作者: しーどら
17/22

ヘルヘイム

境界線を越えヘルヘイムにたどり着いたロキとチーム・アヴァロン。

そこは〈死の島〉の名前とは裏腹に豊かな自然が広がっていた。

ヘルヘイムについてしばらく経った。


「それにしても静かな場所ですね」


トリスタンが呟いた。

周りからは風の音しか聞こえない。

鳥の声すら聞こえて来ないのだ。

周りに生き物の気配はなく、まさに静寂に包まれていた。


「何か来ます!」


トリスタンが叫んだ。

大声を出すな!……という前に警戒体制に移る。

すぐに何かの足音が聞こえて来た。

それも一つ二つではない。

足音がすぐに近くに来て止んだ。

気配を探るとどうやら囲まれたようだ。


「ヘルハウンドか」

「え?」

「大型の犬みたいな魔物だ。群れで行動する奴でとにかく動きが速い。あとガウェイン、素手で相手をしようとするなよ」

「なんでだい?」

「ヘルハウンドの毛には毒があるからだ」

「……了解」


早口に相手の説明を終える。

と、相手が動いた。

草陰に潜んでいた一頭が飛びかかって来たのだ。

予想通り、相手はヘルハウンドだった。

黒々とした身体に赤く光る目をした巨大な獣だ。

そのその巨体は人一人よりも大きい。

狙いはトリスタンのようだ。

アッキヌフォードを構えたトリスタンの真横から飛びかかってきた。


「うらぁ!」

「え?」


強化魔法を施して出て来たヘルハウンドの頭をフェンリルで殴り飛ばす。

巨体は大きく吹き飛ぶが上手く着地した。

あまりダメージにはなってないらしい。


「あ、ありがとうございます!」

「あいつ等の数と場所は?」

「えっと、数は十六頭で位置は速くて……」

「数だけ分かれば上出来だ。探索はもう良いから周りに気を配れ」

「はい!」


言ってる内にも三頭が襲いかかって来たがアーサーとランスロットによって阻まれていた。


「とりあえず一体ずつ確実に仕留めるか。お前はガウェインのサポートをしろ!」

「はい!」


トリスタンがガウェインの近くに寄る。


「仕方ないね。これはあんまり使いたく無いんだけどね」


ガウェインはボヤきながら片刃の長剣を手に取った。

あれがガラディーンのようだ。

俺は先程殴り飛ばしたヘルハウンドに近づく。

ヘルハウンドは起き上がると同時に俺の右側に跳んだ。


「まずは一頭目っ」


ヘルハウンドが着地する前に腹の下に滑り込む。

そのまま無防備なヘルハウンドの腹に向かってバスターを放つ。

まともに喰らったヘルハウンドは上空に大きく吹き飛び地面に落ちた。


「っ!」


休む間もなく三頭のヘルハウンドが襲いかかって来た。







「素早いですね」

「アーサー、どうしますか?」


周囲を走り回る三頭のヘルハウンドを目で追いながら呟くと、隣に居るランスロットが質問してきた。


「そうですね」


と、その時。

黒い魔力砲が空を登った。

それと共に一匹のヘルハウンドが打ち上げられる。


「……なるほど」

「なにか考えが?」

「はい。浮かせましょう」

「分かりました」


私の一言で何をしたいのか理解してくれるランスロットを嬉しく思いながら気を引き締める。


「水球陣」


ランスロットが呟くと九つの水球が私たちの周りを回り出した。

そのスピードはだんだんと速くなり水球が輪に見えるようになった。


「円水刃」


ランスロットがまたもや呟くと輪が薄く広がった。

一瞬で高速の水の刃になったのだ。

私たちの周りを走っていたヘルハウンドの内の一頭にあたりその体を切り裂く。

残りの二頭は空中に跳んで避けるが。


「狙い通りです。水円陣・二重」


ランスロットが呟くとヘルハウンドの上に水の膜が現れた。

準備が整ったことを確認してカリバーンに溜めていた魔力を放つ。


「はっ!」


放たれた光は水膜に当たって跳ね返ると下で回転している水円に当たる。

水円に当たった光は拡散して跳ね返り空中にいたヘルハウンドに直撃した。


「次が来ます!」


ランスロットの声に目を向けると二頭のヘルハウンドが走って来た。







ヘルハウンドの足元に次々と矢が刺さる。


「動きが速くてなかなか当たりません」

「いやいや、上出来だと思うよ?当たらない代わりに向こうも攻めて来れないみたいだしね」


言いながら矢を避けたヘルハウンドに向かって走り出す。


「援護は頼むよ」

「はい!」


ガラディーンに魔力を込める。

動こうとしたヘルハウンドの足に矢が命中する。

そこで一瞬ヘルハウンドの動きが止まった。


「ふっ!」


ガラディーンでヘルハウンドを斬りつけると斬りつけた箇所が爆発する。

痛みによって苦しんで居るヘルハウンドの頭を蹴り上げて頭から縦に斬りつける。

斬りつけた箇所が爆発してヘルハウンドの頭が吹き飛んだ。

横合いから飛びたして来たヘルハウンドを斬ろうとして構える。


「おっと」


が、その横から矢が飛んできてヘルハウンドに命中した。

風の魔力を帯びて回転する矢はヘルハウンドの身体を貫通した。


「ありがとう」

「援護は頼まれましたから!」







フェンリルに魔力を溜めながら三頭のヘルハウンドの攻撃をかわす。

が、一頭のヘルハウンドがボーッと立っているペリノアに気づき走って行ってしまった。


「くそっ!」


急いで追いかけようとするが残りの二頭が邪魔で進めない。

が、ペリノアの方に向かうヘルハウンドの動きが急に止まった。

見ると地面から足が凍っていた。

どうやらペリノアの氷魔法らしい。

そして氷は徐々にヘルハウンド全体を覆っていき。

完全に全体を凍らしたあと、粉々に砕け散った。


「……強ぇな、あいつ」


フェンリルに十分な魔力が溜まったのでカノンを放つ。


「喰らえ!」


一頭のヘルハウンドに直撃したカノンはそこで爆発してもう一頭のヘルハウンドも呑み込んだ。


…………


………


……


「皆さん、大丈夫ですか?」


半分以上倒した時、ヘルハウンド達は逃げていった。

アーサーが全員に声を掛ける。


「僕たちも平気だよ」

「……無事よ」

「なら、全員無事か」


どうやら全員無事らしい。

改めてチーム・アヴァロンの強さを認識する。

普通の魔導師ならヘルハウンドが十頭居たら相当苦戦する筈だ。


「お前も強いんだな」

「えへへ」


褒められて嬉しそうに笑うトリスタン。

俺たちは休憩もそこそこにして、早足でエーリューズニルに向かうのだった。


…………


………


……


ヘルハウンドを倒してからしばらく経ったが館は見つからない。

話では三百人以上の人が集結している館だ。

かなりの大きさの屋敷のはずだが、それらしき物は見当たらなかった。


「さっきの人達が嘘をついた可能性はないのかい?」

「ないと思いますが……」


ガウェインの言葉にランスロットが困った様な返事をした時だった。


「あれ?」

「どうした?」


いきなり妙な声を上げたトリスタン。


「ええと、今、変な感じがしたんです」

「変な感じ?」


何も感じられなかった俺は一つの可能性に気づく。


「……お前って確か風の属性魔導師だったよな?」

「はい。そうですよ」

「なら、感知魔法でここら辺を調べてくれ」

「分かりました」


トリスタンが目を瞑ると足下に魔法陣が展開される。


「……あれ?」


目を瞑っていたトリスタンが目を開けた。


「ええと、全然分かりませんでした」

「分からない?」

「はい。なんだか靄がかかってるみたいで……」


アーサーが不思議そうな顔をした。


「やっぱりか」

「なにか分かったんですか?」


俺の呟きにランスロットが反応した。


「あぁ。なぁトリスタン、もう一回感知魔法を使ってくれるか?」

「え?あ、はい」


再度トリスタンが目を瞑って感知魔法を使う。


「この近くに強い違和感はないか?」

「ええと…………あ、ありました!」

「どこか分かるか?」

「ここから左の方だと思うんですけど……」

「上出来だ。もういいぞ」

「はい。ふぅ……」


感知魔法を辞めて肩を落とすトリスタン。

俺はフェンリルを取り出しトリスタンが言っていた左の方に向かって魔力弾を連射する。


「いったい何を……!?」


アーサーが何かを言いかけた時、突如として周りの景色が歪んだ。

そして。


「これは……!」


俺たちの左側に先程まで生えていた樹々が無くなり、代わりに巨大な門が現れていた。

その奥、五百メートルくらい先に大きな黒色の洋館が建っていた。

どうやらあれがエーリューズニルらしい。


「お手柄だぞ、トリスタン」

「え?えぇと……?」


トリスタンは訳がわからないという顔をしていた。

こいつを連れて来る事にしたアーサーの判断は正しかったようだ。


「なんだ、分からないのか?幻覚魔法だぞ?風の属性魔法の一種だろ?」

「えぇ!?で、でもこんな辺り一面を全てだなんて……」


トリスタンが驚きの声を上げた。

もちろん俺も驚いている。

何故ならもともと幻覚魔法は魔力の消費が激しいため風の属性魔導師たちも多くは習得しないのだ。

それを土地をまるごと幻覚で隠すなんて芸当はあり得ないくらいの魔力がいる筈だ。

そんな事を思っていると門がゆっくりと開いた。


「……思った以上にやっかいな奴がいるらしいな」

「皆さん、ここからが本番です。気を引き締めましょう」


アーサーが声をチームに声を掛ける。


「じゃあ行くぞ」


門をくぐり進むが周りから人の気配は感じられない。


「本当に三百人以上の人間が居るのかい?」

「それは分かりません。あの人達は直接見た訳ではありませんから」


そして何事もなく洋館の入口に辿り着いてしまった。

俺たちが扉の前まで進むと門と同じく扉が勝手に開いた。

どうやら誘っているらしい。


「……行くぞ」

「はい」


そして全員で洋館の中に入ると扉が閉まった。

……どうやら待ち伏せは無かったようだ。

そう思い振り返ると。


「なっ!?」


周りには誰もおらず、俺は一人でその場に立って居たのだった。

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