7/29
花冠ぶり
その日も、幼稚園はいつも通りだった。
先生が一人いないだけで、園の中はどこか慌ただしい。
それでも子どもたちは、いつもと同じように元気だった。
「優花先生!」
一人の男の子が、私を呼んだ。
「どうしたの?」
「優花先生、しゃがんで」
私は言われた通り、しゃがんだ。
すると男の子は、嬉しそうに私の頭に何かを乗せた。
それは、小さな花で作った花冠だった。
「ありがとう」
私がそう言うと、男の子は満面の笑顔で言った。
「これで優花先生は、僕のお嫁さん!」
思わず笑ってしまう。
「ふふふ、そうだね」
周りの子どもたちも笑っている。
その笑顔を見ながら、私はふと思った。
(この笑顔を守りたい)
子どもたちは何も知らない。
先生たちがどれだけ忙しいのか。
人が足りないことも。
休みが取れないことも。
それでも、毎日笑っている。
でも——
私は心の中で思った。
このままじゃ、この笑顔を守れない。
子どもたちの未来も、
先生たちの働き方も。
何かを変えなければいけない。
私は花冠にそっと触れながら、静かに思った。
「だったら、私が変えるしかない」




