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美奈子
次の日。
いつものように幼稚園に来た私は、ふと違和感を覚えた。
美奈子の姿がない。
いつもなら、もう教室の準備をしている時間だった。
(まだ来てないのかな)
そう思っていると、後ろから声がした。
「優花さん!」
振り向くと、園長先生が少し慌てた様子で立っていた。
「優花さん、美奈子さんのこと知らない?」
私は首を振った。
「いえ……知りません」
園長先生は少し焦った顔をしていた。
「連絡がつかないのよ」
その言葉を聞いて、胸がざわついた。
昨日の夜のことが頭に浮かぶ。
「もう、疲れた」
美奈子の言葉。
教室の外から、子どもたちの声が聞こえる。
今日も、いつも通り一日が始まる。
でも——
先生が一人いないだけで、園の空気はどこか慌ただしかった。
先生たちは忙しそうに動き回っている。
私はその様子を見ながら、ふと思った。
(私も……やめようかな)
その考えは、ほんの一瞬だった。
でも確かに、心の中に浮かんだ。




