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誰でも通園制度?
居酒屋のテレビでは、ニュースが流れていた。
私はぼんやりと画面を見ていた。
「誰でも通園制度……?」
思わず声に出す。
美奈子がグラスを置いた。
「知らないの?優花」
「うん」
美奈子はテレビの方を見ながら説明した。
「誰でも通園制度っていうのはね、親が働いているかどうかに関係なく、0歳6か月から満3歳未満の子どもを保育施設に預けられる制度」
「月10時間まで、時間単位で利用できるようになるらしいよ」
私はテレビを見つめた。
(そんな制度があるんだ……)
でも、すぐに別の考えが浮かんだ。
「それって……」
私はゆっくり言った。
「保育士が大変になるだけじゃない?」
美奈子は小さく笑った。
「そうなのよ」
そしてグラスを見ながらつぶやいた。
「だからさ……転職しようかなって」
私は顔を上げた。
「え?」
美奈子は、どこか疲れた顔で言った。
「もう、疲れた」
その言葉は、とても静かだった。
「人は足りないし、休憩もないし、新しい制度はどんどん増えるし」
「もう限界かも」
私は何も言えなかった。
「美奈子……」
テレビでは、政治家が笑顔で制度について話していた。
でも、私の頭の中には、美奈子の言葉だけが残っていた。
「もう、疲れた」
その言葉が、胸の奥に重く残った。




