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投票前日
夕方の駅前。
空は少しずつ暗くなり、街の灯りがつき始めていた。
私はマイクを握り、目の前に集まった人たちを見つめた。
深く息を吸う。
そして、声を出した。
「みなさん!」
「いよいよ、明日が投票日となりました」
人々の視線が、こちらに向く。
「私は本気で、今の幼稚園や保育園の環境を変えたいと思っています」
頭の中に浮かぶ。
休憩の取れない毎日。
足りない保育士。
辞めていった美奈子。
そして——
花冠をくれた、あの子どもの笑顔。
私は声を強くした。
「子どもたちの未来を守るために」
「現場で働く人たちが、安心して働ける環境を作るために」
「私はここに立っています」
マイクを強く握る。
「みなさん——」
「どうか、齋藤優花に一票を入れてください!」
広場に、拍手が広がった。
私はそのあとも、声が枯れるまで演説を続けた。
何度も。
何度も。
同じ言葉を繰り返した。
子どもたちの未来のために。
保育の現場を変えるために。
齋藤優花は、最後まで訴え続けた。




