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【第一章完結】最弱不撓の冒涜者~不死身になってしまったコミュ障転移少年、拾ってくれた腹黒没落エルフ令嬢に尽くしていたら、いつの間にか過保護に包囲される~  作者: D.S.L
第二章:悪鬼達の罪と罰

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63.恐怖と覚悟の戦い part2

「いいいいいいいいづぅッ、イ゛イ゛イイイイイィィィィ!!」

〈お前もお前でうるさいんだよボリューム下げてろユイト・クロキィッ!〉


 そうしてささくれ立つ逆鱗に、赤ん坊の号泣よりも聞くに堪えない、弱者の喚声かんせいがギャーギャーと爪を立てる。


 ヘルブラが繰り出す一振ひとふりごとに、空気を切り裂く音の中、そのノイズがビリビリとかんさわる。


 キレたデーモンは戦い方を修正。ブレードで即死を狙うだけでなく、何度も蹴りつけて衝撃を伝え、“武器”の方の音を上げさせようとし始めた。


「うぐううううっ、ふぐうううううっ!!」


 それには確かな効き目があり、彼は醜くしかめられた顔を、涙でグシャグシャに濡らしていく。「やらなきゃよかった」みたいな言葉が、今にもその口からまろび出そうにすら見える。


 この戦いに、この巣に、もしかしたらもっと前の段階から、関わったことを後悔している、そんな表情にしか見えない。


〈オラッ!痛いなら「離してー」とか、お願いでもしてみたら?お優しいカワイコノームちゃんが、聞いてくれるかもしれねえだろ!〉

「いや、だ……!」


 そうやって、簡単に折れるかに思われたその精神は、しかし極めて不愉快な頑迷さを見せていた。


「それだけはぜっ、絶対!絶対に、厭だ……ッ!」

〈クキィィィッ!ああああああっ!な、ん、で、だ、よォォォォっ!〉


 幾つかの手が、首回りをガリガリ掻き削る。獣の頭が並んでいるせいで、なんとも掻きづらそうだったが。


 とにかくそいつには、こういう頭のおかしさに、心当たりがあったのだ。


 「意志が強い」ことと「独善的である」ことの区別がつかない、長期的に見て組織に最もダメージを与える性格。恐怖でコントロールしようとしたら、わけの分からない爆発をしやがるタイプ。


 敵でも味方でも、ただただ物事を遅滞させるだけの、世界の余分成分。


 言葉が通じるのに話の通じない無能と、「非を認める認めない」の押し問答をさせられているようで、軽いノイローゼになりかける悪魔。


 そのメンタル面への負荷のせいか、

 時間をかければ、ヘルブラのマナ処理能力の焼き切れが、必ず先に来る、という自信故か、


 全体的に、仕事が雑になった。

 幾つかの脚を合わせてより高出力なブレードを作り、力任せに叩きつけて、とにかく相手のリソースを大量に削ることだけを考えて、


 とうとうある程度の負傷を許容するに至った。

 「肉を切らせて骨を断つ」。スマートとは言えないやり方でも、「これを早く切り上げられるなら」と、舌打ち混じりに手を出した。


 実績こそが一番。それ以外は二の次。

 そいつとしては、美学に従ったまでのこと。


 滞空中のヘルブラ、それが移動する先、偏差を読み切って、斜め方向へ跳躍。

 直線高速上昇し、自らの巨体を対空砲弾にする。


 バットでボールを打つように、ヘルブラがユイトで迎撃。ウィリ=デが身をひねり、その勢いを加速させ、彼の右手がデーモンに刺さる。


「「!!」」

〈ってえなあ、ったくさあ……〉

 

 間髪入れず無数の脚が、3人を握り込むように迫る。

 ユイトの腕が獣の頭に咥え込まれ、引き抜けない。


 ユイトを手放して間合いの外に逃げるか、しがみついてサイコロの山になるか、二つに一つ。どちらを選んでも、デーモンの勝ちである。


手古摺てこずらせたなあ……?ムダにさあぁぁ~……〉

 

「ユイト……!」


 ヘルブラは、


「ごめん……!」


 手を放した。


〈ハッ!見ろよ!なんかカワイソーぶってるだろ?お前を見捨てた加害者サマが!〉


 体中にブレードを刺し込まれ、彼を守るポプラーが、徐々に剥がされていってしまう。


〈お前の()()()()やり方の限界が、これだよ!仲間に力を掛けるのを面倒がって、ちゃんと縛っておかないから!肝心なとこで離れてく!強さを求めることから逃げて、エセ聖人に憧れるバカの末路は——〉


 黒いマナが遂にシールドを抜き、


〈——搾取されてオシマイになるだけなんだよおおおお!!〉




 その先端がユイトの肉を「そうかも、しれないけど」




 ぽんっ、ぽんっ、ぽんっ!


「少なくとも、今じゃない」


 ポプラーが念入りに巻かれた左手を、ユイトが獣の頭の一つにじ入れた。


「みんな、僕を助けようとしてくれるくらいには、強くて優しい子達だから」


 口を開かせて、噛まれている右手を抜こうとしているのか?だがその腕力は非力などというレベルではなく、


 


 そしてデーモンの背中にはしった痛みが、その不意打ち(バックスタブ)こそが本命であると如実に語っていた。




〈な〉

「うおおおおおおおおお!!」

「いっちゃえええええええっ!!」

「ほってやるううううううううっ!!」


 巨磐おおいわどもが使用していた大型“削巌匙エア・ディガー”。

 それらを抱えたノーム達が、そいつの背後を突いていた!

 

〈いや速過ぎるだろ!〉


 気配を察知してから到着まで、想定の数倍のスピードだった。

 ウィリ=デとヘルブラを脅しつつ、ユイトを解体する為に、手足の全てを前に回していたこともあって、防御が間に合わなかったのだ!


〈一体……!〉


 デーモンは解を求め、彼のユニークがそれにこたえる。

 ユイトのマナから魂の情報を閲覧し、直近の記憶、仕掛けられていた策謀の概要を引き出す。


〈お、お前……!左手が、指が……っ!?〉


「うん、実は切れてた、ずっと」


 彼の左手の指5本、それらは最初から、あの休戦の提案の時から、既に失われていた!


 彼があの時右手の指を立てて見せたのは、左手から注目を逸らしつつ、「指は正常に付いている」と印象付ける為。左手の先だけ念入りにポプラーを巻いていたのは、光によって欠損を見えにくくする為。


 戦闘中、ノーム達はその指を持ったまま、小心者の得意技である存在感の隠匿によって、端っこに積まれた戦闘不能者達の後ろに潜伏。その間ずっと、復元能力と綱引きをしていた。それらがユイトに戻らないよう、数人掛かりで押さえていたのだ。


 そしてデーモンに刺さるなり、相手の方から捕らえてくれるなりして、ユイトがそいつの体に固定されたその時、


 指は解放され、どころかノーム達の脚力と、ポプラーシールドの反発力を得て加速。


 幾つもの魔導能力で実現した最高速で大気を裂き、ヘルブラのユニークでポプラーを纏わされたエアディガーを刺し立てた!


〈最初から、この為に……いやっ違うっ!?〉


 そして彼は、この作戦の更に先を見た。


 だがその時点で、硬い岩盤を掘り返すエアディガーを叩き込まれ、更に一部のノームが担いできたエアスキャッターライフルを何発もぶち込まれ、彼の背中はバリバリに破砕。


 ノーム達は貫通し、デーモンの前側に出て、ユイトとすれ違う形で飛び出した。


 指が彼の左手に戻り、けれどまだ治っていない指がある。

 そしてユイトも、黒いマナに体内を荒らされ、意識の半分以上を凄絶せいぜつな幻覚におかされ、それでもポプラーが残った手で、デーモンに引っ付き続けていた。


 ノーム達が離れてから1秒もせず、玉突きのように彼らの後から飛び込んだものがあった。大型カプセルを二つ抱えたブリュネだ。


「サイゴにもうイッパツ!とっておきがあるよっ!」


 彼女は二つの魔導具を起動させ、デーモンに開いた穴に投げ込んだ。

 それらはポプラーを巻かれ、ユイトの小指と一纏ひとまとめにされており、彼の誘導通りに、ちょうど敵の体内で止まった。


 デーモンは、何故自分が負けたか、分からなかった。

 ただ、目の前の少年の何かがいけなかったのだと、そこまでには想像が及んだ。


 そいつは、そのけがらわしい敵を、たおせなかった。

 殺しても殺しても、消せなかった。

 その状況はまるで、そいつが最も得意とする——




〈これは、()()か〉


 知らず、デーモンはそう口にしていた。


「いいや、()()だ」


 朦朧もうろうとしながら、少年は答えていた。

 



 二つの“掘鑿包ホロー・ブラスター”が、発生エネルギーの全てを爆発力に変換。


 床の下から天井の向こうまで、

 

 極太ごくぶとの火柱が貫いた。

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