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【第一章完結】最弱不撓の冒涜者~不死身になってしまったコミュ障転移少年、拾ってくれた腹黒没落エルフ令嬢に尽くしていたら、いつの間にか過保護に包囲される~  作者: D.S.L
第二章:悪鬼達の罪と罰

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63.恐怖と覚悟の戦い part1

 当たり前ではあるが、ポプラーが行う“浄化”には、エネルギーの消費が伴う。

 



 彼らは大気中のマナを吸収し、僅かな光で光合成を行い、更に身を寄せ合い自分達が光ることで、互いのエネルギー補給を助け合っている。


 ある意味で社会的な植物である彼らは、人が植物も動物も栄養とするように、自分達とは全く異なる存在である動物の生体マナをも、高効率で吸収できるよう進化した。


 その先にあったのが、ノームという知性動物との共生だ。

 彼らは植物でありながら、積極的に栄養を摂取しに行き、繫殖範囲を拡大できる、動物の利点を手に入れたのだ。

 

 さて、ノームとは互恵関係を結ぶ彼らは、それ以外の動物と出会うと、情け容赦なく侵攻し、略奪の限りを尽くすようになってしまう。


 その時の彼らのエネルギー獲得量は、短期的にはノーム表面に付着している者達を、遥かに上回ることになる。後のことを考えずに暴飲暴食酒池肉林、太く短くという生き方は、持続性は無いが爆発力は持っている。


 ただ、人に満腹があるように、彼らにだって「マナを吸収し切れない」という閾値がある。一方、それで「じゃあ今日はこの辺で」と食器を置けるほど、マナーが良いわけでもない。


 では過剰となった分はどうするか?

 食っては吐き出す……、別の言い方をするなら、即消費する。


 例えば、ノームに棲んでいるポプラーより、ドギつく輝いてみたりだとか、

 自身の胞子を大量生産し、勢力圏を広げまくったりだとか、

 周囲の大気や環境を、自分にとっての最適に近づけようと、“浄化”をガンガンに効かせたりだとか、


 あらゆる面で活発に、高火力になるわけだ。


 仮に、と、考えてみよう。

 そんなものあるわけがないのだが、一つの思考実験として、もし「尽きることのない血肉」なんてものが、この世にあったらどうなるだろうか。


 それを彼らが得てしまったら、どれだけ恐ろしいことになるのだろうか。


 まあ、そんな夢のようなご馳走があれば、の話だが——




〈死ねよっ、死ぃねぇよぉぉぉぉ!!〉


 


 デーモンがマナブレードを針山の如く並べ、一斉に刺し込む!

 はりつけの刑に処された聖人めいたポーズを取らされたユイトがヘルブラの矮躯を完全に隠し、攻撃を受け切る。


「い゛い゛い゛い゛い゛い゛いいいいいいいい!!」

「倒す……!絶対に……!」


 ヘルブラの燃ゆる魂に怒りの油が注ぎ込まれ、ユニークによるポプラー強化がもう1段階ギアを上げる!


「つぶしてやる……!」


 ぽぉんっ!


 そのまま前後軸を中心としてユイトを回した彼女は、大の字型に変形させながらの回転斬撃を放った!その表面のポプラー、それらが持つ余剰エネルギーのほぼ全てを、反発と浄化能力に()ぎ込ませる!


 マナブレード、シールド、強靭な毛皮や肉といった、デーモンご自慢の多重防御が、勢いだけでぶち抜かれる!


「アアアアアアアアアッ!!」

〈うおおおおおおおッ!?こ、こいつッ!?不死身かッ!?無尽蔵かッ!?〉

 

 ようやくそいつも理解してきた。

 ポプラーがその少年の血と肉を食らう端から、それが復元され再生されている!


 食べても食べても空かない皿。

 わんこそばが如き高回転食い放題システム!


 ポプラー達がどれだけマナエネルギーを浪費しようと、使い切るには足りていない!


〈だがお前、ノーム自体のシールドなら!〉

 

 彼女の体表に居るのは、財政規律を持ったポプラーのみ。そのユニークで幾らか強化されていようと、彼ほどの使い手が貫けぬ道理無し。


 ブレードを生成した脚の1本がユイトを右から回り込むようにヘルブラを突こうとして、ぽんっ!燦然と輝く彼の左手がそこにズイと伸ばされてブロック!


 即座に反対側の上下2方向から攻めるも、ぽぽんっ!いっぱいに開かれた両脚によってそれぞれ止められた!


〈そこォッ!〉

 

 だが股の間という隙間が出来た。

 ブレードの一本にそこを抜けさせるのは、針の穴に糸を通すよりは容易なことで「おっと」


 その黒い光条こうじょうに割り込んでくるのは、非対称な形をしたオレンジ色のナイフ。


「忘れてもらっては、困るな……!」


 ドーベルマンは刃を削り溶かされながらも、その刺突撃の軌道をギリギリで逸らさせることに成功。


〈イヌッコロがッ!ところ構わずクソして、俺の通り道を邪魔してんじゃあねえよッ!!〉


 デーモンは振り払うついでに幾閃もの斬撃をお見舞いし、その手と足を1本ずつ飛ばしながら、悪夢の中に幽閉してやる。


 ぽんッ!


「とった……っ!」


 が、その隙にユイトの両脚がそいつの左側にある手足の根元を挟み込み、合わせて10本以上を断ち切った。本数で言えば完全に冒険者達にとっての有利トレード。


〈取ったからどうしたッ!〉


 デーモンの黒いマナが欠損部を埋め、そこから新たな腕と脚を生やしていく。それをする間にも、ブレードによる乱れ突き、乱れ斬りを連発。同時に眷属達や鋏を高速で動かし、敵の背後を強襲させる。


 そいつを少しでも恐れた瞬間、どれかが見えなくなるというオマケつき。


()()は俺が上ェッ!依然、圧倒的にッ!〉

「ディマッ!それはどうかしらね!」


 高く跳び上がり、片手でストームネイルガン、もう片方の手から羽軸を発射し、それらを掻き消していくウィリ=デ!


 質量任せの体当たりを仕掛けようとしたデーモンの前にヒラリと降り立ち、足先でヘルブラを掴みながら突進全体を回避!


 その際、敵の前面に伸ばされたブレードの数本に、展開した翼の羽毛の重なりを刺させ、掛けられる力にえて逆らわず、利用することで横にかわした。


 まるで正面から喰らっているかのように見せかけ、しかし手ごたえは一切与えないことで、相手の勢いを殺さずに位置を入れ替える、闘牛めいた技法。


 それにより、デーモン自身の推進力の強さを使って、壁へと激突させたのだ。


「イッつー……!」

 

 羽毛の一枚一枚、その繊維の一本に至るまで、補強とマナシールド装纏そうてんを施すことで、彼女の翼は柔軟()つ多層的な鎧と化していた。


 ボロボロにされることは避けられなかったが、あの強力なマナブレードを掴むことは出来たようだ。


 しかしデーモンに傷をつけられたわけで、そのままだと魂に侵入される、のだが、その前に彼女はヘルブラに頼んで、患部をポプラーで覆わせた。


 侵蝕効果と拮抗するそれらに、マナを吸い尽くされることで()()()羽毛が、枯れ葉めいて自然に抜け落ちていくことで、猛毒とも言えるデーモンの力が、肉体の一部ごと切り離される。


「最低な男ね?女性のオシャレを台無しにして」

〈そこらの諸侯しょこうに股でも開いてろ!オシャレでキラキラな労働がお望みならぁッ!〉


 壁を蹴って反転してくるそいつの攻撃を、ヘルブラとユイトの体重を運びながらも軽やかに躱すウィリ=デ。


「ヘルブラちゃん、だっけ?好きに動いていいよ!合わせるから!」

「ありがとう……っ!」


 ぽっん!


 踏み込み、ユイトで叩き斬るヘルブラ。

 優勢な時はひたすら押して、相手からのカウンターを()()()()()()()で処理し、攻めに攻めに攻め立てて、劣勢になりかけると間合いの外へ飛び去る。


 ただでさえ形が定まらない上に、ポプラーシールドの反発力によって、振られる際のベクトルまで、予測困難な変数と化している。つまり、攻撃の軌道が全く読めないのだ。


 そこに加えてウィリ=デの補助が入り、フットワークまでプラスされてしまった。元々防御の上からダメージを与えられていたのに、もはやガードすること自体が難しいという始末。

 

〈落とせッ!〉

 

 マナエネルギーを使って数十の鋏をトンボの群れのように飛ばし、空間を制圧。少しでも相手の身動きを制限しようという意図。


 ぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽん……!

 

 しかし、あちこちから釘が連射され、それらを撃墜していってしまう。


地虫じむしどもッ!まだ残りが……!〉


 ドワーフの足掻(あが)きかと思って見回せば、ネイルガンが勝手に射撃しているだけ……違う!その表面に付着したポプラーが、その角度を調節し、マナを流して発射させている!


 飛び回りながら胞子を撒いて、数秒しか持たないながらも、遠隔発射が可能な魔導装置を作り上げたのだ!


〈害悪め……!害悪害悪害悪害悪害悪害悪害悪!ただただ害悪!蕁麻疹じんましんが出る!〉


 何度やっても潰せないクセに、耳元で存在をアピールしてくる蚊を相手にするように、デーモンのストレスは頂点に達しつつあった。


〈俺を殺し切れる火力があるわけでも、かと言って気にならない程度に無害なわけでもない……!本気で最も唾棄だきすべき、最悪最下(さいか)最底辺!〉


 魔導筒を鋏で一つずつ破壊しつつ、もはや転がっているかのような勢いでドタバタと駆け回り、再生を超えるスピードで羽毛を(むし)っていく。


 ヘルブラかウィリ=デが1発でもまともに喰らえば即死だが、しかし全攻撃が虚空かユイトに吸われるせいで、いつまで経っても当たらないのだ。


 効率と拙速、費用対効果を尊ぶそのデーモンにとって、この世に存在する中で最も関わりたくない奴ら。それとの3次元ダンスを強制されているのだから、堪忍袋の一つや二つ、はち切れるというものである。

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