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【第一章完結】最弱不撓の冒涜者~不死身になってしまったコミュ障転移少年、拾ってくれた腹黒没落エルフ令嬢に尽くしていたら、いつの間にか過保護に包囲される~  作者: D.S.L
第二章:悪鬼達の罪と罰

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49.橋を架ける part1

「この子たち、しめってるのが、好きだから……、だから私たちは、森に住むの……。穴がくずれないよう、補強する木材も、手に入りやすいし……」

「ふ、ふーん?なるほど、ね……?」


 ええっと、他には、他には……、なんでもいいから会話を続けて、とにかく素知らぬフリを……なんで何も出てこないんだよっ!


 あれだけ色々、気になってたこと、訊きたいことが沢山あった筈なのに、乱れた思考のせいで全然思い出せない!


 事前に用意してきた言葉が、人を前にすると出なくなったりする、コミュ障の「あるある」は異世界でも健在だ。僕ってやつは、いっつも肝心な時に——


「いや、え?ちょっと?」


 などとフリーズしていた隙に、「やっと喉が動いた」という様子の声が、とうとう正面から届けられてしまった。


 そっと目だけを上げて、その顔を見てみたところ、思ったよりは怒ってない……いや、これ僕とおんなじように、まだ事態を整理しきれてないな。感情の爆発まで辿り着けてないだけ。後が怖いやつ。


「ユイト、聞いてる……?」

「き、聞いてるよ、うん」


 ブリュネさんのその様に戦々恐々(せんせんきょうきょう)としていたら、頭のすぐ下から呼び掛けられ、また視線を下ろさざるを得なくなる。そうして視界を占めるのは、さっきまでと同じように、上下逆さまなヘルブラさんの顔。


「じゃあ、ちゃんとこっち、見て……?」

「えっと、あぇー……食事も、進めないと、じゃない?あの、ほら、明日も早いし、今日も、すぐ、寝た方が……」

「私と話すの、いや……?」

「そそういうわけじゃっ、ないん、ですけどぉ……」


 正直に言えば、ちょっと困る。どう反応、対応すればいいか、一つも分からない。

 

 と言うのも僕は今、彼女を膝の上に乗せて、ノーム達と食卓を囲んでいるのだ。

 ……うん、本当になんだろうね、この状況。


「へ、ヘルブラ……?アンタ、マジで、なにやってんの……?」

 

 ブリュネさんがやっとのことで、この場に相応ふさわしい問いを発する。

 まあ、ちょっと抽象的過ぎる()()()があるけど、こんな光景見せられたら、「なにやってるの?」しか言えなくなるのも、しょうがない。


 こうなったのはヘルブラさんの提案……と言う名の要望(ほぼ強制)が発端なので、彼女に訳を聞くのも、理にかなっていると言えた。


「何って……、晩ごはん食べながら、お話……」

「そうじゃなくって、そ、ソイツは、なに?」

「『ソイツ』じゃない……、『ユイト』……」

「へぁぁ……?」


 ブリュネさんから、らしからぬフニャフニャした声が漏れる。たぶん僕も彼女みたいに、ポカンとした顔をしているのだろう。


「それは……それは、どういう遊び?それ、なにがたのしいワケ……?」


「ユイトと話すと、私は楽しい……」


「な、なんで?」


「とにかく、これがいい……。これからは、ユイトは私と、おしゃべりするから……、あの『遊び』は、もうおしまい……」


 自分を抱かせるように、僕の両腕を引っ張り寄せるヘルブラさん。ブリュネさんは頭が痛そうに眉の間を縮め、両手で額を強く押さえた。


 すごい。あれだけ怖かった彼女と、今なら分かり合えそうな気さえしてくる。僕らの内心には、共通する言葉が浮かんでいる、それがヒシヒシと感じられたから。


 すなわち、


「どういうこと?」


 である。


 確かに今日一日を通して、僕とノーム達との関係性に、変化が訪れていることは感じていた。一部からの当たりが、優しめになっていたのである。


 それはたぶん彼らなりに、グラウさんの命を助けたことについて、「恩」を感じているのだと思う。昨日のことで、仲間意識的なものを、持ってくれたのかもしれない。


 が、ヘルブラさんの変わりようは、他のみんなのそれとは次元が違った。

 僕への態度を軟化させつつあった面々ですら、あからさまに愕然としていたから、ノーム的な価値観から見ても、彼女の距離感がおかしいのだと分かる。

 

「あ、アンタ、ヘルブラに、なにしたの……!?」

「ぁえっ、いやっ、えっ、そんっ、なにもっ、いやあのっ」


 すいません違うんです聞いてください。


 確かにそっちからすると、僕と彼女が急接近したように見える、それは分かります。でも僕からはそこまで踏み込んでないんです。こっちも知らないうちに、何故かこうなってたんです。よそ見してたら間合いが詰められて喉笛を捉えられてた気分なんです。


 いや本当なんです信じてください……!

 って言うかむしろ教えてくださいよ!家族なんだからヘルブラさんのことよく知ってるのはそっちでしょう!?そちらの教育どうなってんですか!?

 

 いけないいけない、逆ギレしてしまった。落ち着こう。ふー………ヨシ。

 

「あの、ヘルブラさん?皆さんもその、困惑してるみたいだし……」

「………」

「あの?」

「………」

「………ヘルブラ、ちゃん……?」

「んん……、まあ、よしとする……」


 お許しを頂けたところで、バターン!とブリュネさんが横へブッ倒れた。


「ブリュネ!?おい!?ダイジョーブか!?」

「わがままとか、じぶんのおねがいとか、ぜんぜんしない、ヘルブラが……!あまえんぼヘルブラにぃ……!」

「なに言ってんだオマエ!ちゃんと返事しろ!」


 グラウさんを始めとした数人が駆け寄るも、暗転しかけた虚ろな目で、うわ言のような呟きを繰り返すだけ。


「ブリュネ!しっかりしろ!ブリュネ!」

「ヘルブラが、とられたぁ……!ナゾ生物に、とられたぁ……!」

「いや取ってないよ!?」

「うっさい妹ドロボー!アンタいったい、どーゆー手をつかったのよ!」


 あ、復活した。思ったより元気そうだ。よかった。


「ぜぇったいおかしい!ヘルブラがアンタみたいな、家族じゃないどころか、ノームですらないヤツに……!」


「ユイト、ツノとか、気にならない……?ノームの、特徴……」


「あっ、うん、あれだよね?こう、暗い中でも、空間を認識できる、っていう……」

 

 ヘルブラさ……ちゃんがガンスルーしてるし、ブリュネさんはアレで大丈夫なのだと思うことにして、提供された話題へと、追及から逃げるように食いつく。


 ノームの角は骨と繋がっており、何らかの音を照射してから、その反響を受け取るように出来ている、らしい。ライセルさんの資料でも見た。超音波を発するコウモリみたいなもので、これがあるからポプラーなしでも、彼らは暗い洞窟で暮らせるのだ。

 

 ただ「感じ過ぎる」せいで、この前の滑落騒動みたいな、周囲がやかましい中でのトラブル時には、むしろ精神が削られる要因となる、諸刃の剣でもあるようだ。


「知ってる、の……?」

「うん?う、うん……」


 話題に乗ったのだけれど、不服そうな顔をされてしまっ……あっ、違う、語りたかったのか。知らないフリして、話させてあげた方が良かったかな?僕の気が利かない部分が、バリバリに出てしまったケース。


 少し焦りながら何かフォローをしようとして、言うまでもなく良いアイディアなんか浮かんでこない僕に対して、


「あ、じゃあ、さわったこと、ある……?ないなら、さわる……?」


 などとヘルブラちゃんが言い出し、ブリュネさんは再度の側方そくほう転倒。


「そ、そんなはしたない妹にっ、そだてたおぼえは……っ!ブクブクブクブク……!」

「ブリュネー!!」

「うわああああんっ!死なないでぇーっ!」


 泡を吹く彼女を見ながら、「横転」って実際に見るとああいう動きなんだなあ、などと変な感心を抱いていたら、頬を両手でつままれて、顔の向きを下へと補正される。


「どうなの……?」

「それは、だって、ぼ、僕が、ノームっていう種族を、自分の目で見たのって、こ、ここへ連れてこられた……、みんなと顔合わせした、あの日が、初めてだし……」

「じゃあ、さわるよね……?」


 「触ったことどころか見たこともない」って言っただけなんだけど、なんか触らなきゃいけない感じになった。


 いや、いいのか?なんか明らかに、みんなの慌てぶりがおかしいけど?「そんなことするなんてとんでもない!」みたいな目を向けられてますけど?


「あ、え、そ、それって、ノーム的に、えっと……、アブないこと?マズいこと?だったり、しないのかな……?」

「気にしなくて、いい……」

「本当、に、だ、大丈夫な、やつ?」

「うん……、でも、私以外には、やらないで……?」

「本当に大丈夫なやつ!?」


 最後の一言でかなりの厄ネタになった気もするけれど、彼女の言う事に逆らい続けるのも、あまりうまいやり方じゃない。


 エレノア様の利益の為に、みんなを仲間に引き入れておきたいなら、ヘルブラちゃんは橋渡し役として、仲良くしておきたい相手なのだ。機嫌を損ねないようにしないと。


「じ、じゃあ、失礼、します……?」

「うん、どうぞ……」


 注目を集めながら、ソロソロと指を近づける。

 って言うかみんな見過ぎでしょ!?なんなの!?ヤメテ!寄らないで!席を立って身を乗り出さないで!見せ物じゃありません!

 

「ん……っ」

「本当に大丈夫なやつ!?」

「いたい……、キーンってなるから、ツノの近くで、大きな声、やめて……」

「う、ご、ごめんなさい……」


 甘い唾を呑むような吐息に、懐疑が収まらずツッコンだところ、お叱りを食らってしまった。これはえっと……、と、取り敢えず、僕が悪いってことにしとこう!うん!その方が丸い!


 にしても、ツノに触られた時、ただの振動じゃなくって、触感として伝わるんだ……?ああ、でも、骨とか歯にだって「痛い」って感じる機能があるわけだし、それは特段不思議なことでも………


 いや君達その「キャー!」みたいなき方やめて!?手を繋いだ男女カップルを見る女子小学生めいた挙動しないで!?なんかイケナイことしてるんじゃないかって不安になるからさあ!


「んん……っ」


「やりやがったぞ……!」

「だ、だいたんな……!」

「オトナだ……!」

「ギャーーッ!ヘルブラーーーッ!もうみたくないィィーーーッ!!」


 これノーム的にどういう意味がある行為なの!?誰か教えてくんないかなあ!?どうして誰も彼も肝心なところを濁してるわけ!?


 それとも、そういうこと?「口にするのもはばかられる」、みたいな感じ?ダメだ、不安が加速していく……!

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