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【第二章完結】最弱不撓の冒涜者~不死身になってしまったコミュ障転移少年、拾ってくれた腹黒没落エルフ令嬢に尽くしていたら、いつの間にか過保護に包囲される~  作者: D.S.L
第二章:悪鬼達の罪と罰

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45.救助

「おそいよブリュネ!なんかグラウが、もっとせまくなってるってっ!」

「まっててグラウ!今なんとかするから!」


 僕がブリュネさんに追い着いた時、彼女は罅割ひびわれらしき横長の穴を、数人で囲んで呼び掛けていた。


「あんまり、うごかないでね!どこがくずれるか、分かんないからっ!」

「もうカンケーねーよぉっ!今にもうまっちまうよこんなのっ!」


 泣きそうになりながらグラウさんが叫んだことは、過度に悲観的な予測、というわけでもない。何故なら少し離れたところで、ドリルやピッケルが硬い壁を削る音が、休みなく響いているのだから。


 仲間が絶体絶命の只中ただなかにあっても、作業は続けられる。“ノルマ”を満たせなければ、粗末な食事すら取り上げられるから、「危ないから一旦止める」ってことが出来ないのだ。


 そして振動がここまで伝わり、亀裂の端からパラパラと粉塵ふんじんを振るい落としている。いつ崩れてもおかしくない、そう考えるのも頷ける状況だ。


「ダメだよぉ!まわりがうるさすぎて、ばしょがわかんない!」

「ライトもうちょっとつよくできないの!?」

「ムリ……!これ、限界……!」


 魔導石と鏡を使って、特定の方向に光を集約した投光器。木材と金属のフレームを持ったそれが、暗がりを最大限照らしているが、グラウさんの姿は……あっ、いやっ、見えた!


「あれ、って……!」

「ねえブリュネ、この穴、まがってない?」

「ヤッカイだ!ヤッカイだよコレ!」


 僕達の目が捉えたのは、彼が振った手だけ。それは開口部直下の、僅かに横から突き出されている。縦穴が途中でカーブしてるんだ。


「グラウ!そこの、クネってるトコまで、のぼってこれない!?」

「ムリだ!オレが落ちたショックで、だいぶうまっちまった!手しか通らない!」

「うまった……!?」

「それに、そのとき、足をはさまれた!ぬけないんだよ!」

 

 ドリルが鳴らす連続した破砕音。僕にはその振動が、現実が頭骨を叩く衝撃のように思えた。彼はほとんど生き埋めに近い状態で、しかもその足を、地盤に拘束されているのだ。

 

「ブリュネ……!空気が……!」

「分かってるよヘルブラ……!分かってる……!そんなせまい空間で、息しつづけてたら、空気の中の、生きる用のマナを使いきっちゃう……!今こうしてる時も、ドクがどんどんこくなってる……!」


 彼女が言ってるのは、地球の言い方に直せば「酸欠」だろう。人の命は、空気がない状態でも、意外としぶとく耐えたりする。だけど有害な組成を持つ空気を吸えば、一瞬で死んでしまう。


 洞窟とかの低い場所には、そういう有毒なガスだまりが、自然と出来てたりするのだ。落ちた瞬間にグラウさんが死ななかっただけでも、奇跡に近い。


 そして今の所、僕達に与えられた良いニュースは、それで打ち止めだった。


「ブリュネ!なあ!」

「ちょっとまって……!ちょっとまってて……!」

「ブリュネ!聞けって!」

「いま考えてる!」

「いいから!」


 グラウさんから強く言い返され、むぐりと口を詰まらせたブリュネさん。その隙にもう一つ、言葉が挟み込まれる。


「見すてろ!」


 彼女はまるで頬を張られたような、驚きと悲しみが混じり合った顔をする。


「見すて……ダメ!それはダメ!アタシがそこまでおりて、穴のまわりをけずって……!」

「やめろ!オマエまでミチヅレになっちゃうだろ!」


 悪い夢なら良かったと、そう思わずにはいられない情景だった。小さな子ども達が、骨まで削るような重労働を強いられたすえに、家族とも言える仲間を見殺しにするかしないか、その決断を迫られている。


「メーワクかけたくない……!オレがトチったせいで、オマエらのだれかがハラすかせるとか、死ぬとか、いやなんだよ……!ハズかしいんだよ……!」


「でも……!でもさあ……!」


「なんか、道具、落としてくれ……!1発で、アレだ、()()()()()()、ヤツをさ……!」


「そんなの……!アンタは、アンタはアタシ達の……!」


 「家族なんだよ……?」、会話しながらその顔を、穴の底へと寄せていった彼女は、誰かに救いをうかのように、両手を地に付く姿勢を取っていた。青っぽい照明の中、彼女からポタポタと、大粒のきらめきが落ちていく。


「自分から、すてちゃったらさあ……!家族じゃ、なくなるって、ことなんだよ……!家族でいるの、あきらめるって、ことなんだよ……!」


 ヘルブラさんがそのそばかがんで、小さな背中をそっとさする。


「いろんなもの、うばわれて、手ばなすしかなくって、家族まで、なくしちゃったら、何も……!アタシたちは、もう、なにも……!」


 周囲では少年達が、どうしたら良いか分からずに、困ったようにキョロキョロしていた。僕も彼らと似たようなものだ。坑道での救命方法なんて、持っている知識にかすりもしておらず、頭を抱えるくらいしかできない。


 ノームは地下で暮らす種族だって、僕に良くしてくれたダークエルフ、ライセルさんからそう教わった。


 生まれた時からこの環境に居て、それなりに長く強制労働を課されている。そんな彼らが、「八方塞がり」と判断しているのだ。素人の僕が、それを覆す天才的アイディアを思いつくなんて、そんな都合の良いことが——


——ポプラーとの共生………


 ライセルさんがくれた資料と、その後にエレノア様にたずねた内容が、何故か脳裏を通過していった。慌てて掴んで、手繰り寄せようとする。


 なんだ?何が気になった?

 僕の「好奇心」が、今、何かを知ろうとした。疑問に思って答えを探そうとした。じゃあそれは何だ?


 「ポプラー」。それはノーム達の体表に繁茂しているコケ。

 それは彼らのマナを吸っていて……、そうだ、エレノア様に訊いたんだ。ノーム以外の種族には、ポプラーは取り付くことができないのかって。


 その答えは、「マナを吸われる側に耐性がないから、拒絶反応とかが起こって危険」、とかだった筈………


「!!」


 僕はそこに並べられていた道具類をガチャガチャ掻き分けて、杭らしきものを見つける。


「なによ!いまチャンスだから、うしろからグサッってしよーっての!?サイッテー!」


 それを逆手さかてに持って、大きく振り上げ、


 逆のてのひらを突き刺した。


「ぐギぃいいいいい……!」

「えっ、はっ?」

「な、なに……?」

「うわあっ!?なにやってんのコイツゥッ!?」


 あっ、やばっ、いたいいたいいたい!

 この体、全然痛みに慣れてくれない!

 本当にイヤだ!こんなことやりたくなかった!


「ウウ~……っ!だ、だれか……」


 待って待ってまってマジで待って!

 気持ちは分かるけど遠ざからないで!

 検証する前に傷が治っちゃったら、ただ痛い思いしただけになるから!


「ちょ……っ、誰か……っ、手を……!」

「て……?」

「腕を、こっちに……!」

「?????」

 

 冷蔵庫を開けたらゴキブリが居た、みたいな表情でこっちを見る一同。


「はやく!グラウさん、たっ、助けるんっでしょっ!?」


 だけど僕がそう言うと、ブリュネさんが目と口を引き締め直し、他のみんなを守るように前に出て、腕を差し出してくれる。


 僕はそれを握った。

 数度ほど震えがあったけど、僕に彼女をどうこうする力が無いことを思い出したのか、防衛反応はすぐに落ち着いた。

 

 それを確認したから、光の加減で不健康に見える血を、肌に塗り込むように広げていく。


「ひゃぅっ?!な、なにすん……あ、あれっ!?」


 変化を最初に察知したのは、彼女の方だった。

 そのリアクションで、僕も気付く。




 ポプラーの光が、強くなっている。




「やっぱり……!やっぱりだ!」

「な、なんで……?」

「僕の……せ、生体マナ?って言ったっけ?それ、吸ったんだよ!」

「う、ウソはやめてよ……!ポプラーはアタシたち、ノームのマナしか……!」

「動物全般……までいくかは、ちょっと分からないけど……、たぶん知性体とかなら、誰からでも吸えるんだ……!」


 魔導翻訳が「カビ」じゃなくて「コケ」って言ってるから、こいつは植物と見て間違いない。植物なのに、ノームっていう動物のマナを、栄養を吸えてるってことだ。


 「植物」と「動物」の垣根は、突破できたのだ。「ノーム」と「他の動物」の境界を超えるのは、もっと楽な筈!


「前に、返り血が君に、掛かった時……、なんか、そこだけ光ってるような、気がしたんだ……!」

「み、見てたの?あのジョーキョーで、そんなこと……?」


「マナを吸われる側に耐性がないから、拒絶反応とかが起こって危険」、っていう話は、「ポプラーがマナを吸えてしまうから」起こる問題!


「お、おい……そうなのかー……?」

「しらないよう……!ここにはノームと虫いがい、ドーブツなんていないもん……!」

「そっか、そうだったよなー……」


 きっと彼らは、小さい頃からここに閉じ込められてきたんだろう。そういことを親から教わったり、実際に試したり、っていう機会自体を得られなかったんだ。


「ポプラーは、フィルター……えっと、君達が吸う空気を、その、浄化…?してくれるん、だよね?」

「!……ブリュネ……!グラウの子たち……ポプラー!復活させれば……!」

「そ、そっか、息をつづけられる……!でも、コイツ下にもってくの?それこそ、くずれたりとか……」

「ぜんっ、全部を下ろす、必要は、無いよ……!」


 元通りになった左手を、彼女達の前の地面に置く。


「きっ、き、切り取って、持ってけば……うぅ……いいんだ……!」

「!?」

「な、なんかヤバいぜコイツ……!ゼッテー、ヘンだって!」


 気が進まないが、安全を考えるとそれが最適解だ。

 マウスピース代わりに布の切れ端を噛んで、一撃に備える。

 ……出来れば「一撃」でお願いします……。


「ぶ、ブリュネ……」

「やっ、やって!ヘルブラ!切っちゃえ!」

「で、でも……」

「はやくしないとグラウが死んじゃう!ヘルブラ!」

 

 ヘルブラさんは僕とブリュネさんを見比べるように、目蓋まぶたに隠れがちな視線を左右させていたが、何度か言われて心を決めたのか、長大なシャベルを振り上げた。

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