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【第二章完結】最弱不撓の冒涜者~不死身になってしまったコミュ障転移少年、拾ってくれた腹黒没落エルフ令嬢に尽くしていたら、いつの間にか過保護に包囲される~  作者: D.S.L
第二章:悪鬼達の罪と罰

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44.なりふり構わない隠蔽工作 part3

 実のところ、オサにとって「残飯組」がどこまで重要なのかなんて、僕には分からない。集団維持の為の切り札なのかもしれないし、幾らでもえのく、数ある「外側」の一つかもしれない。


 そこはどうでもいい。

 大事なのは、わざと相手を「怒らせる」ことで、けむに巻けたことだ。


 そう、僕の本当の目的は、「僕が重要情報を持っている」、それ自体を隠すこと。


 エレノア様の秘密、彼女が唯一無二の「銀髪のハイエルフ」であること、それへと辿り着かせてはいけない。だけど僕は痛みに弱いから、「何かあるだろ」と責められ続けたら、意に反して話してしまうかもしれない。




 というわけで、前提をメタメタにぶっ壊した。

 僕から出る情報に価値がある、という前提を。




 知性って言うのは、なんでも都合よく捉えるものだ。


 彼は今、僕の言うことに信憑性が無いから、だから聞かなくていい、聞かない方がいいって、そう思ってる。「論理」でそういう判断をした、と、そう思い込んでくれているだろう。


 でも実際のスタート地点は、「聞きたくない」っていう「感情」の筈だ。


 「こいつの言葉をあと一文字たりとも聞いていたくない」から、「聞かなくていい理由が欲しい」ってなって、「こいつが言うことが信じられないからだ」っていう、良さげな「説明」を後付けした。


 「こいつはこっちを騙そうとしている」、「これを理解しようとするのは有害な行為だ」、っていうことになれば、頭を使うなんて大変なことをせずに、ムカつくヤツを気持ち良くブン殴れる。


 だから、「そういうことにする」よう、自分で自分を誘導してしまう。


 悲しいことに、相手の神経を逆撫ですることに関して、僕には天性の才がある。「怒らせないように」、っていうのが無理ならばと、逆に怒らせまくって、「関わりたくない、関わってはいけない不快物質」と思わせること、それを狙ったのだ。


 相手のプライドを屁理屈でつついて、どれだけ叩かれても壊れたレコーダーみたいに黙らないことを徹底。後は向こうが引いてくれるまで根競こんくらべ。


 企みは成功した。

 たとえこれからどんな証言をこぼそうと、「証拠能力ナシ」と判定されるだろう。その内容が、荒唐無稽であれば、特に。


 これで秘匿は守られる。

 狂人のフリをすることで、僕からエレノア様へ与えかねなかった損害を、帳消しに——


「!おいっ!止まれっ!」


 そこで見張りの人が鋭く叫んだ。

 小柄なノーム達が、いつも向かう先、そちらを見ながらだ。


「ねっ、ねぇっ!どいてよっ!道具!道具とりにきただけ!」


 この声、たぶん「ブリュネ」って呼ばれてたノームだ。

 しなやかでスポーティーな一挙手一投足。栄養不足で痩せ気味ながら、要所要所が赤ん坊のお肉みたいに、若干の丸みを帯びた体型をしている、茶髪サイドテールの少女。


「取り込み中だ。後にしろ」

「イヤっ!できないっ!いま、いまグラウがっ!グラウがキレツにおちてっ!」


——「亀裂に落ちた」?


 首枷と壁とを繋いでいる鎖が、ガチャリと鳴った。


「それがなんだ。どうでもいい」


「ふざけないでよっ!アタシたちの、家族がっ!」


「オマエたちはそういう、『かんたんに死ぬ家族』なんだよ。それが死にかけるのは、まったく正常ってこった」


「いっ、いいカゲンに……っ!」

 

「なんだ?やるのか?オマエたちから来るなら、それを理由に今ミナゴロシにしてもいいんだぞ?何も困らないからな」


「そっ、そうだっ!おう!そうだとも!オマエらがいるとかいないとか、どうでもいい!コワかねえんだ!」


「ぐぅうううう……!ううううううう……!」


 見張り役の人が、背負っていたシャベルに手を掛ける。


「本当にやる気かよ……。まあいいか。他のヤツらにも『ゼッタイに勝てない』って分からせるために、その首をかざっとくってのも良いアイディア——」


「あのおっ!」


 ああもうっ、プランが整う前に叫ぶなよ!

 またアドリブだ!

 しかもせっかく、黙ってたらやり過ごせる状況を作ったってのに、自分から首を突っ込んで!


「情報が欲しいのでしたら、さっきの話!つまり、この巣、えーと、『オオイワ』?っていう狩猟民族的な共同体における、『残飯組』の存在意義について、的なこと、もっとちゃんと心理学とか社会学とか、あー、歴史学とかっ!そういうの絡めて詳しく話しましょうかっ!?えーっとそうですね、物語の話なんですけど、貴種流離譚きしゅりゅうりたんって言う王道パターンがあるって知ってます?これの構造が、貨幣経済と似てる、みたいな話が——」


「ああああああ!やめろ!アタマおかしくなりそうだっ!」

 

 短気な方の巨漢が髪を掻きむしり、地団駄を踏む。


「おいっ!行くぞっ!」

「あっ、おいおいおい!」

「ドブクソネズミにイヤガラセするために、あんなの聞いてられるかっ!オサにウンコノウミソヤローがいるって言いつけてやるっ!くせえくせえ!アホくせえっ!」


 そのまま怒って走り去る彼を、見張りの人が困ったような顔で追いかけていった。

 

 そこにブリュネさんが首を伸ばして、中を確認。二人が本当に居なくなったのを確認してから、急いでこちらに、備品置き場に駆け寄ってくる。


「僕もっ、僕も行くよっ!」


 何言ってるんだよ、こいつ。

 情に流されてエレノア様を危険にさらしやがって。


「はあっ!?ジャマっ!オトトイきてなよっ!」

「ほ、ほらっ、選択肢は、多い方が、いいよっ!色んなことに、対応できるから…っ!それに、軽い道具とかならっ、僕も持てるし、一人で行くよりっ、助けられる、可能性が……!」

「あー、うー、ん~~~ッ!もうっ!」


 迷っている時間が惜しいと思ったのか、彼女は鎖と壁の金具を繋ぐ、ゴツい錠前の鍵を開けてくれる。


「それとそれとそれ!持って!」

「う、うんっ!ありがとうっ!」


 道具の名称を知らない僕の為に、分かりやすく指を差しながら指示した彼女は、片手でロープと巻き上げ機らしきものを持ち上げた。

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