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【第二章完結】最弱不撓の冒涜者~不死身になってしまったコミュ障転移少年、拾ってくれた腹黒没落エルフ令嬢に尽くしていたら、いつの間にか過保護に包囲される~  作者: D.S.L
第二章:悪鬼達の罪と罰

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40.思いもしない展開

 敵の右眼を潰したヤツが、次にすることと言えば?

 そう、「死角」という安全地帯が広がった方へ、回り込むこと。


 少年から攻勢の気配を感じ、彼女は即座に右を向く。

 だがその時、彼は左足を外側に踏み出して、それを蹴って逆側に、彼女から見て左に跳んでいた!


「やる!」


 死角を埋めようとする彼女の心理を読み切って、意識をそちらに振ってから逆側へと移るドリブル的ステップ!

 

「けど!」


 残念ながら、その駆け引きが刺さるのは、互いの力量差がそこまで開いていない場合。

 彼女の視界の中で、彼女にとってはトロい動きで、それをやったとしても、出し抜くことなど出来ないのだ。


「惜しいわね」


 直線的に詰めてきた彼に向き直り、カウンターの左拳を入れてやろうとして、


 次の刹那、瞬きもしていないのに彼の姿が消えた。


「!?」


 加速した?否、さっきまでが彼の最高スペック。あれ以上は無い。

 ただ、あまりにも予想外な挙動、想定の埒外らちがいな軌道だった為に、見失っただけ。


 そしてそれは、彼が達人だったから、ではない。

 真逆。正反対の理由。


 彼がお世辞にも、運動神経に優れているとは言えない少年だったから、

 だから2度の方向転換という複雑な動きに、体が付いて行けなかった。


 足首をくじいた、どころではない。変にひねったままリミッター無しで無理矢理地面を蹴ったものだから、じれ砕けて事実上の欠損状態に。


 そうして完全にバランスを喪失。

 つまずいて前のめりにスッ転びながら、それでも彼女へと向かった彼の動きは、


 ほとんど頭からのダイブに等しい!

 

 なんの流れも意図もないそれに虚を突かれたウィリ=デが、咄嗟の反応で身を引いたところに、金貨を握り込んだ彼の拳が通過。足から床に力が逃げていく通常のパンチとは違う、全体重を乗せた衝撃が、彼女の下顎とこすれ合った。


 回転や振り子運動は、中心から遠いほど速く激しいものになる。

 そして頭部の中で、最も脳から遠い部位とは、顎の先端。


 そこを揺さぶられると、頭蓋は大きく振られてしまい、脳は慣性力によって頭骨の内側を跳ね回って、外傷を負う。


 人間とハピノイドは違うと言っても、頭蓋骨を持ち、脳ミソの位置が同じであるなら、同様の現象が起こる。

 心臓や肺など重要臓器と並び、顎は戦闘における急所なのだ。


 ウィリ=デはけれど、弱者を相手にするメンタルのままであれば、それを受けなかっただろう。加減も正攻法も型も知らない素人が、動きを読めない分(かえ)って危険な時があることなど、経験則で理解していたから。


 彼女はいつの間にか、彼を「素人」の枠から外してしまっていた。

 何度か裏を掻かれて、少年の、ユイトの評価を、“戦士”にまで上げてしまった。

 そこに“リスペクト”が発生したがゆえの、不幸な事故だったのだ。


「ぶうっ!!」


 顔面から壁に激突し、尻餅をついた彼は、フラフラと立ち上がり、ウィリ=デに歩み寄っていく。

 脳の損傷によって脚の力が抜けて、膝をついてしまった彼女へと。


「それ……、傷の治りを早くするテクニック……」


 首の血管の圧迫。

 或いは目の穴から指を入れての体内攻撃。

 そういった手段で勝負を畳もうとした彼の姿を、オレンジ色の小さな鏡が映した。


 彼女は、()()()彼を見ていた。


「私も、出来なくはないのよ。プロだから」


 彼が立っている場所は、既に「死角」ではない。

 それを悟り、焦って飛び掛かろうとした彼へ、右の貫手ぬきての先が向けられ、


「ディマ」

 

 触れてもいないのに、彼の右肩が刺突で砕かれた。

 

「あう……っ?」


 そこに突き立っていたのは、一本の羽根だ。

 軸を持った羽毛が、肉と骨を貫いている。


「完っ全に予定外……!奥の手まで、見せることになるなんてね……!」

 

 続けて数発、首や胸、足腰を撃たれ、壁に叩きつけられるユイト。

 傷を治す為に羽軸うじくを取り除こうと、肉が蠕動ぜんどうしてそれらを抜いていくが、先端が開いて()()()の如く機能し、それに抗う。


 痛みと筋肉断裂、骨折によって、ユイトはほぼ動けない。

 勝負あった。


 と、泣き叫ぶ彼が壁についた右手、その更に先から、突然無数の火花が吹き湧いた。


 ウィリ=デはその場で最大限の警戒態勢に入り、職員も何が起こっているのか観察しようと身を乗り出して、


「え゛!?ええあっ!?」


 ユイトは楕円形に広がっていくそれに気付き、驚き痛がりながら離れようとする。


「え?それ君のじゃないの?」


 ドン!

 壁が爆発!

 展開した翼を盾のように使いながらバックステップで衝撃を受け流そうとするも、勢いを殺し切れずに背中から反対側へぶつけられるウィリ=デ!


「出たぜ!建物ン中だ!」

「ふっとばしゃあいいんだから、マセキほるよりラクだわな!」

「おい!アタリだ!ツイてるぞ!まさか組合の中にいるなんてな!」


 黒煙の中から現れたのは、鬼だ。

 大樹の下に口を開ける暗い沼の水面みなもめいた、黒緑くろみどりの筋肉。その表面に何十もの青いラインがはしる、一対いっついの小ぶりな角を持った巨漢達。


 彼らの背後の穴を見ると、壁の向こう、地中から闖入ちんにゅうしたのだと分かる。


——外から?


 この部屋に張られた強固な防壁を、突破した?


「よう姉ちゃん。やかましくてワリいな」


 目を白黒される彼女に、彼らが片手で構えている、太いパイプめいたものが狙いをつける。

 その先端には積まれた丸太みたいに、丸い口がびっしりと並んでいる。


「おわびに教えてやるよ。ソーオンの中でもグッスリ眠れる方法ってヤツを」

 

 合意を得る間も惜しみ、筒は破壊を吐き出した。

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