第一章登場人物、用語解説 ※読み返し用、飛ばしても問題ありません
〈登場人物〉
玄桐唯仁:4月1日23時生まれ。人畜無害でコミュ障な高校2年生。喋る時は「相手を待たせないように」と「滅多なことを言わないように」という二つの意識の引っ張り合いになり、高頻度でどもってしまう。
学校では酷い扱いを受けているが、当人の自認としては、周囲を不快にさせている自分が悪いので、いじめではないことになっている。
大災害に巻き込まれ、異世界に転移、その際に不死体質を手に入れるも、戦闘を始めとした実生活で役立つ能力は無いに等しい。
座右の銘は、「少しの勇気と大きな覚悟」。
エレノア:ハイエルフの令嬢。それなりに歳を重ねているが、同種族の中ではまだまだ若輩。元は「エレノア・エメラルダス・アシュルブラン」という名を持っていたが、国家反逆罪が確定したのを機に、姓を剥奪されている。
彼女特有の能力や性スキャンダルによって、「甘淫令嬢」や「淫涜の天幕」等の二つ名で蔑まれている。
「善悪を定義する側である絶対権力者」になるという野望を持ち、その為には如何なる手段も厭わない。
生まれつきの銀髪に運命を狂わされ、「呪われし女」として全てを憎みながら生きていたが、ユイトを拾ったことでその人生は一変することになる。
ペイル:エレノアに付き従うスライムメイドであり、ある種のブレーキ役。エルフの外見を模したハイドロゾル的な体を持つ。
水分を生成、操る能力があり、更に身体構造をある程度自由に作り替えられるので、腹の中に荷物を持ったり、様々な生活環境を整えたり、変身して空を飛んだりと極めて多機能。
表面的にはエレノアを敬愛しているようだが、彼女に付いて行く動機はエリーフォンからの指令によるものであり………
ザルド:リカントの囚人兵。かつてエリーフォン正規軍を10年ほど苦しめたという伝説を持ち、「牙辣のザルド」の異名で怖れられる。エレノアという例外を除けば、西部方面軍第5懲罰部隊の最強戦力。
パワー、スピード、技量、全てが規格外で、神格に出くわさなければ、あと10年は生き延びていただろう。
ライセル・ブラウン:西部方面軍第5懲罰部隊の若きダークエルフ監督官。いちいち生真面目で融通の利かない性格で、何かしらの不正を告発しようとして飛ばされたのだと、もっぱらの噂。ユイトについてはトラブルの種として見ていたが、そのひたむきさに徐々に絆され、更に彼の壮絶な経験を知ったことで、何かと面倒を見るように。
アスター・ブランド・ウィートリー:エリーフォンにおける女性初の元老議員の一人だったハイエルフ。エレノアの失脚を主導した勢力の一つ、婦人会の中心人物でもある。「エレノアが悲惨な死を遂げるところをみんなで楽しもう!」という見世物を企画し、莫大な反響を得るが、その人気がとある事件の被害を拡大させてしまう。
鳳蝶朱裡:ユイトの高校の後輩女子。彼の煮え切らない、無意味に誠実ぶる態度が癇に障るようで、何かと突っかかっていた。ユウスケと仲が良く、交際を噂されている。
大災害の時も一緒に居たが、現在の生死は不明。
青波雄介:ユイトのクラスの中心人物である男子生徒。バスケ部レギュラーで、ノリの良い性格から男女どちらにも人気。あまりにも空気が読めるが故に、クラスのユイトへの扱いも放置、どころか加速させている節があるが、ユイトからすると「みんなを宥めてくれる寛容でカッコイイ人」らしい。
茶野木加奈:ユイトのクラスの担任。まだ若く、親しみと少しの揶揄を籠めて「サヤセン」と呼ばれている。熱意はあるが空回り気味。
桃原亜里沙:ユイトのクラスで一番目立っているギャル。ヤンキー味もちょっと入っており、怒らせると怖い。食べることとユウスケが大好き。
上白春子:ユイトのクラスの委員長。かつてはユイトの境遇に同情し、状況を改善しようとしていたものの、彼にハンカチを盗まれたという疑惑が生じてからは一転、出来るだけ関わり合いになりたくないと思っている。
ダークエルフの奴隷商:エレノアに不良在庫であるユイトを押し付けようとして酷い目に遭った人。結果的に厄介払いはできたものの、後に新種の知性体隠蔽について国からメチャクチャ尋問される。
暗殺者達:リカントとダークエルフで構成された凄腕非合法集団。エレノアを殺しに来た……つもりだが、依頼主は割とダメ元で送り込んでいる。
ペイルが死んだり線路が破損したりを理由に、エレノアの素行に問題ありとして即ガス室送り、あたりが計画として妥当だろうか。つまり9割9分全滅するものだと割り切られている連中。
バナフス:リカントの女性。西部方面軍第5懲罰部隊において、囚人達のガス抜きを担当する外部協力者である酒場の店主。仕事と割り切ったなら大抵のことはやってくれる。ユイトを悪意ある者達に突き出したのも、勉強机を提供したのも、どちらも常連であるザルドへの義理立てだと言うが……?
監督官の先輩方:悪い大人。
ユイトの両親:妻が大好きな優しいお父さんと、幸せについて本気で考える熱心なお母さん。
ビョーク:ユイトを拾ったドワーフの一人。彼を崇拝していたが故に、敗北が確定した際には「裏切られた」と怒りを覚えてしまった。転移から1年ほど経つユイトがセラのことをほとんど知らなかったのは、彼に脱走される可能性を潰しておきたかったビョークが、意図的に何も教えないよう努めていた為。
ロズ:ユイトを拾ったドワーフの一人。彼に感謝しつつも、いいように利用していることに罪悪感を覚え、日頃から気に掛けていた。
おじいちゃん:ユイトの父方の祖父。ユイトにけん玉や五目並べのような昔の遊びや、命との向き合い方を教える。「少しの勇気と大きな覚悟」は彼からの受け売り。
〈用語〉
セラ:ユイトが迷い込んだ異世界。その全てがマナから生まれている。他の世界からの漂流、転移現象が確認されており、棲息している知性体は全て他世界出身、とする説も。
黄色い太陽、紫紺の空、そして蒼く狂暴な月。
マナ:セラにおける万物、万象の根源、最小単位。物質にしろ現象にしろ、全てはマナの“状態”であるとされる。
何の状態も効果も付与されていない最も基本的なマナは、不可視ではあるが大気中に満ちており、生物の呼吸のエネルギー源となっている。
魔導:マナに関する理論、マナを操る能力や技術。マナを単なるエネルギーとして消費、排出したり、その状態を変化させることで任意の現象を起こしたり、物体を生み出したり、といったもの。魔導能力を持つものとして代表的なものは、生物である。
魂:生物が持つ、マナの活性化パターンを記憶した情報体。生物の恒常性を保持するものであり、これが破壊されると生物は現在のマナパターンを保てなくなり、死に至る。
知性体:生物の中でも特に高度な知性を持っている、とされるもの。言葉を喋るかどうかが一つのボーダー。通常の生物よりも魔導能力の精度や多彩さ、出力等の平均に優れるとされる。
セラで「人」と言っている場合、知性体全般を指す。
魔導石:マナを吸い、特定の状態を付与、増幅して排出する鉱物。飽くまでも変換する物質であり、貯める機能はほぼない。マナの貯蓄は、個体それぞれで行うしかないのが基本であり、それ用の鉱物の用途は極めて限定されてしまう。
魔導術式:マナの出力さえ出来れば、誰でも同じ効果を発生させられるよう確立された技術。魔導石や刻印、構造といったものによって、注ぎ込まれたマナから決まった結果を生み出す。
地球で言うなら電子回路。電流さえ流せば誰にでも同じ恩恵を与えてくれる。
魔導具:魔導術式を組み込まれた便利グッズの数々。地球で言う電化製品みたいなもの。
固有魔導:特定個体のみが所有する魔導能力。身体強化や、純粋エネルギーとしてのマナの体外操作等を除いた、ほぼ全ての魔導能力が該当。知性体ほど発現しやすい。
詠唱儀式:生物の中には、魔導能力が強力過ぎるが故に、全開で行使した反動で自身や周囲を無作為に傷つけ得る者達が存在する。彼らは通常、能力にブレーキを掛けているが、それを意図的に解除できるパスワード、ルーティーンを設定している者も居る。それが詠唱である。
固有魔導の名前だけを唱える、何か一続きの文章を唱える、決まった掛け声を唱える、等々、詠唱にも様々な段階が存在する。
マイナスマナエネルギー:生命とは、マナが特定パターンで活性化し続ける状態のこと。それが安静、安定に戻らないよう、不自然な状態のまま持ち堪えることで、反動としてのエネルギーが発生する。これをマイナスマナエネルギーと言う。
負渦:マイナスマナエネルギーが集中し、エネルギーの渦となってしまった地点。
魔物:負渦から発声する、存在、生命の反動的存在。魔導能力を保有するもの、つまりマナを特定の法則で活性化させるものを破壊しようとする本能を持つ。その為、生物、特に知性体を優先的に襲撃する。
トロール:魔物の一種。陸上生物の姿を取るもの。おもちゃやカメレオンのようにギョロギョロと不規則に揺れる、丸い眼球が特徴。
矮虫族:セラに棲息する知性体の一種。金属を纏ったアリのような外見で、個人によって額のマークが異なる。優れた金属加工技術で知られ、女王を中心とし、性転換可能な兵隊達がそれを支える、というコミュニティを形成する。
純魔族:セラに棲息する知性体の一種。褐色肌は粗性純魔族、白肌は上層純魔族と呼ばれる。全体的に魔導能力が高い傾向にあるが、ダークエルフは身体強化(特に器用さ)に優れ、ハイエルフは全てが固有魔導を持つ、とされている。
ダークエルフは少々長生き程度だが、ハイエルフの寿命の中央値は1000年ほど。中には5000年以上生きている者まで居ると言う。
獣毛族:セラに棲息する知性体の一種。全身が体毛で覆われている者達の総称だが、その中でも骨格に差があり、分類が多岐に亘る。ザルドやバナフスは“猫毛族”。
筋力や骨の強靭さ等、パワー系統の身体強化に優れるとされる。
類猿族:セラにおける地球人類の呼び名。セラの住民達からすると、「猿ベースのリカントに近いが、体毛が極端に少ない奴ら」、といった認識になる。魔導能力が高い傾向にあるという推測も出ているが、ハッキリしたことは分かっていない。
新生十二頭国トゥー・スィー:類猿族がセラで立ち上げた国家らしきもの。「完全実力主義」を標榜していること以上の詳細は不明。
エリーフォン純白魔導優民国:エルフを中心とした寡頭体制国家。自己品種改良によって、最高の固有魔導を持つ“真のエルフ”を作ることを目標とする。
その為、魔導能力に優れるハイエルフ達は、彼らの「純正血統」を毀損されることを大いに恐れており、ハイエルフ以外の血に触れることを忌み嫌い、「上層」と呼ばれるドーム型浮遊都市に引き籠っている者が多い。
そこから外に出る物好きでも、大抵は上流階級としか関わらず、最低限の接触しか行わない。
エリーフォン元老議会:エリーフォンという国の最高権力。別々の家出身の者達30人によって構成される。ハイエルフが長寿なのもあって、入れ替わりが起こることは稀。
元老審問会:エリーフォンで行われる裁判でも、特に重大な容疑に対して開かれるもの。
エリーフォン純白魔導優民国婦人連合会:エリーフォンの上流階級に属する女性達によって組織された団体。女性の社会進出や性差撤廃を理念として掲げ、エレノアのような女性性を強く匂わせる存在を憎悪している。表向きは門戸を広く解放しているが、上級会員には裕福なエルフしかなれない。
廃棄部隊:エリーフォン軍が運用する懲罰部隊の蔑称。エレノアが送り込まれた部隊は、正式名称を「西部方面軍第5懲罰部隊」と言う。偶に恩赦が出るので起死回生のチャンスに思えるものの、実質的には死罪に近い。
政府側の人員である監督官まで含め、いつ焼き払っても惜しくない捨て駒だけで構成されている。
甲種未知種族遭遇:エリーフォンで使われている用語で、「新種の知性体を発見、接触した」という意味。
テレストラ:エリーフォンの中央統合魔導演算装置。要は魔導版マザーコンピューター。記録や計算、システム管理をやってくれる。
群棲兵:エリーフォンの高度な魔導技術によって運用される自動兵器。二足タイプと四足タイプが存在し、都市部の警備と治安維持を担当している。簡単に言うと反乱鎮圧用の魔導ロボット。
娼武服:エレノアの固有魔導を制御する為に作られた専用仕様魔導夜会服。内部が流体で満たされた透明な膜で構成されており、その流動による屈折、偏光、反射、透過率の変化によって、視覚的な素肌の露出を調整する。
ペイルはこの装備のメンテナンス係でもある。
ミネスの枷:エリーフォンが開発した拘束用魔導具。起動することで首を落とし魂を破壊する。テレストラによって位置情報も大まかに共有され、遠隔起動することも可能。
爆雷槍:グリップスイッチを備える槍型の魔導具。気体やエネルギーの噴射によって、突き刺し攻撃を加速させ、刺さったところから内側に傷を発破膨張させる。対生物に特に有効。
魔導筒:マナエネルギーを利用した飛び道具。要は銃火器。エネルギーの塊を撃つもの、触れたものに特殊な効果を与えるマナを飛ばすもの、圧力で石や金属等を撃ち出すボウガンの延長となるものの3種が存在する。
飛焔筒:魔導筒の一種で最もスタンダードなもの。高熱の火球を飛ばす。厚さ数十センチの鉄板や、魔導術式を施された鎧ですら、穴を開け得る威力を持つ。
巨矢筒:魔導筒の一種で巨大なボーガンに近い形のもの。生成した矢——と言うか最早銛——を射出する。
矢弾を生み出す機能のせいで大型化しており、地面に固定して使うのが一般的。
なんでそこまでして生成機能なんて付けるのかと言えば、デッカい矢を持ち運ぶことで荷物が嵩張る不便を解消できるのと、魔導石さえ持っていれば撃てるので他の魔導具との共同運用が容易になるから。
炎弾筒:“飛焔筒”が金属弾頭を生成して一緒に撃つようになったもの。作るものの形状が簡単かつサイズが小さめとは言え、矢張り生成機能を足した分だけ全体が長大化。更に筒の中に余計な残留物が残るので、一発撃つごとに中ほどを折り開いて排出しなければならず、扱いには熟達を要する。
魔導砲:魔導筒の高出力、大口径モデル。特に、歩兵が一人で携行できる範囲を超えたもの。
焙烙砲:最もスタンダードな魔導砲。方向を絞ったエネルギーの奔流を照射、それを受け取ったマナはランダムに暴れ出し、それらが構成する術や物質もバラバラになってしまう。まあ極太ビーム砲って思ってれば大体あってる。
バリケード・ポール:マナエネルギーの壁を張る魔導具。並べて立てる他にも、複雑に組み合わせることで多層的な障壁を構築することが可能。特定の方向からの通過のみを許したり、魔物のみを弾いたり、とそれなりに高機能。だけどクソ重い。
無線機:大気中のマナを媒介にした通信機。マナが何らかの天災や術で励起していると、通信状況は悪くなる。
七大神格:セラにおける魔導の頂点。神話から出てきたような、災害に等しい生物の総称。
“カラミティ・ワーム”、
“ラヴァ・ヒドラ”、
“バハムート・ブリザード”、
“ガーゴイル・モノリス”、
“エルドリッチ・ヴァイラス”、
“ルナティック・ゴルゴン”、
“デーモン・ロード”、
以上7柱。
巨神の行進:ユイトがセラに転移するきっかけとなった、世界を跨いだ大災害。神格が関わっているとされる。ユイトとエレノアの出逢いよりおおよそ1年前の出来事。
逆立つ墓廟エルドリッチ・ヴァイラス:神格の1体。拒絶の力と死体の乗っ取りを得意とする。黄色い棘が特徴。
正青なる仰月ルナティック・ゴルゴン:神格の1体。本体は蒼き月そのもの。命と繋がり、情報や力を流し込むことで、「天使」と呼ばれる巨大魔導兵器に改造する。
相手にエネルギーを押し付ける攻撃によって、相手が張った防壁がそのまま爆弾化するという、最強の矛とも言える厄介な性質を持つ。
エルドリッチを目の敵にしているような挙動を見せる。
蒼月光害事件:呪われしエレノアと神格2体の共演によって起こった大変痛ましい事件。被害に遭われた方々には深い哀悼の意を表させて頂く。
スライム:流体の体を持ち、それを自在に操る生物種。とある場所から湧く彼らは、一説によると神格の創造物。知性体となることは稀。
甘声濫色:エレノアの固有魔導。相手の「この世に残ろうとする」欲求を呼び覚まし、暴走させる能力。
食欲、性欲、睡眠欲を煽り、それに伴って体内で活性化するマナに過剰なエネルギーを発揮させる。彼女のマナに触れた者は、体中が内側から焼け焦げ、爆発、融解、気化、最悪の場合消失する。
彼女から排出されるマナには全てこの性質が付与される為、ただ身体強化を使うだけであっても、致死的な効果をバラ撒きかねない。故に彼女が魔導能力を振るう際、彼女の味方は隣に存在できない。ただユイト一人を除いて。
完全詠唱時には、この効果を持つ純粋マナエネルギーの塊である、巨大美女象を出現させ、一帯に死滅を齎す。




