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【第二章完結】最弱不撓の冒涜者~不死身になってしまったコミュ障転移少年、拾ってくれた腹黒没落エルフ令嬢に尽くしていたら、いつの間にか過保護に包囲される~  作者: D.S.L
第一章:不死身以外に取り柄が無いヤツ

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18.手段 part2

「口?」


「どんなにツエーやつでもな、って言うか、そういうやつほど、か、マナの取り入れと循環ってのが必要になる。んで、そこらの空気の中に混ざってやがるマナを持っていくのが、一番効率が良い」


 ライセルさんの資料にあった関連情報を、頭の中でよみがえらせる。

 

 土とか石とかを構成するマナを取り込もうとしても、相性が合わなくて拒否反応が起こることが多い。確固たる形を作っているものは、それと似たものにしか取り込めない。だから例えば動物は、他の生命を食って、生きるのに必要なマナを得る。


 それで手に入るエネルギーは膨大だ。だけど、それらが含んだマナを、体に吸収させて、利用できる形に加工して、っていう行程にまたエネルギー必要、という堂々巡りが発生する。


 そこで、空気中のマナだ。


 それらはどちらかと言えば自由で、触れた者が自分色に染めやすい。通常の生命が、魂というものを日常的に維持する為には、空気を吸って吐く、「呼吸」がメジャーな手法となるのだ。


 エルドリッチは、死体を操る。

 それは、生物が使っていた効率的なマナ運用システムに、タダ乗りしているってこと。


 だからあの死体が動くエネルギーを得る時、主要な供給源とするのは、呼吸という仕組みになる。


「空気を全て拒むわけにはいかねえんだ。口周りの守りは、どうしても薄くなる」


「じゃあ、口を狙えば……!」


「まあ、頭の欠片かけらくらいなら、獲れるかもしれませんね」


「あ……」


 ここからあれの口の中をピンポイントで狙えるのは、ライフルくらい。それで起こせる破壊は、その程度。


 生前のトロール・ベアの時点で、ライフルで殺すのが難しかったのだ。それでも口内にクリティカルヒットすれば、有効打くらいにはなったろうけど、棘に操られた死体となった今では、ほとんど意味がない。


「キャノンに狙わせるか?上手くいけば頭骨を粉微塵にできる。針の穴にロープを押し込むようなものだが」


「首から上が消し飛んだ程度で大人しくなってくれるなんて、猟奇的な外見からは想像できないほどの紳士ですね」


「セクシーポーズでも頼んでみるか?顎をおっぴろげて、こっちから見て喉と内臓が直線上に並ぶように頭を低く突き出してくれー、とか?試すだけなら得だぜ?」


「分かりましたぁー?分かったら邪魔なんで黙っててくださーい」


「う……」


 「傷をつけられる」とか、「殺せる」とか、そんなのは甘い考えだった。

 壊せないと、体内の構造を元に戻せないくらいに、砕いてやらないといけないのだ。


「もういいでしょう。ペイル、支度を」

「で、でもー……」

「エレノア様っ、せめて、あのっ、いつかみたいに、僕を盾とかに、使えたりとかっ!」




「なりません」



 

 硬い石でガツンと殴られたのかと、それを本気で疑った。その時の彼女の声音に、これまでとは一線を画する、痛烈さが込められていたのだ。


「え……、いやっ、でもっ」

「ライセル、一つ頼みがあります」


 そして続けられたその言葉に、僕も他のみんなもギョッとしてしまった。あのエレノア様が、敢えて「頼み」という言葉を使ったからだ。

 呼ばれたライセルさんなんか、一瞬、敵から目を離してしまっていたほどだ。


「な、なんだ?」


「私は最善を尽くしますが、結果的にエルドリッチの拡散を止められない事も有り得ます。その場合私は、生きおおせていたとしても、確実にガス室行きでしょう」


「そう、なるな、恐らく……」


「ですので今のうちに、あなたにユイトを下げ渡します」


「え……?」


 な、何を……!


「エレノア……それは……」

「好きにお使いください」

「ま、待って……!」

「私には必要のないものでしたので」


 要らないと、言われてしまった。


 エレノア様に、見捨てられ………


 違う!問題はそこじゃない!

 僕が見限られるのはいつものことだろ。そうじゃない。


 彼女が死を前提に、身辺整理みたいなことを始めた方が、よっぽどマズい。彼女には、僕らに秘密にしている逆転の一手なんかなくて、本気で死期を予見してるってことだから。


ここで良案を思いつけないと、高確率で死ぬ戦場に、彼女を送り出すことになる……!

 それは「厭」だ……!


 今が最後のチャンスなんだと分かる。

 この時点までで何もできなきゃ、僕は彼女を殺すことになるんだ。

ここで、ここで何か……!


「はぁー……、じゃあ皆さーん、出来るだけ運ぶのでぇー、何か全員乗れる台とかありませんかぁー?馬とか生きてればいーんですけど」


「なんか分からんが、俺達も連れてってもらえんのかよ、それ?」


「助けられるのに見捨てたら、反政府的ケーコーがどーのって言われて、ガス室が近付いちゃうでしょーが」


「容易に想像がつく流れだな……」


「ふん、分かんねえもんだ。さっきまで割と本気で『こりゃ無理か』って思ってたんだぜ?だのに死に損なって、バナフスのクソマズいクズ肉バーグに、またありつけるかもしれねえときた」


「聞こえてんだよ!悪かったねえ安物で!」

 



「あ!」




 あっ、いやっ、え?ちょっと待って欲しい。

 それって、アリなのか?有り得るのか?


「エレノア様!あのっ!」

「ユイト、あなたの処遇は決定じこ」「エレノア様のユニークって!」


 なんか紡がれようとしている言葉を上から潰してしまうのは申し訳ないが、どうしても、何よりも、確認しておきたいことがある!


「ええっと、自己保存欲求を、ってことは、えーあー、食欲とか!睡眠欲とか!そういうのって、対象なんですかっ!?」


 なんか勝手に、繫殖系統だけに働きかけるって、そう思い込んでいた。だけど、「生きる、残ることへの希求」を煽るものなら、それに限定される根拠がない!


「ふー……、いいですか?」


 聞き分けのない子どもに教えるように、一度目を瞑ってから、一つ一つ説明してくれるエレノア様。


「可能かどうか言えば、可能です。可能ですが、トロール・ベアを殺せるほど、食欲を増進させて、どうなります?エルドリッチにとって喰らうとは、使える死体を求めることに繋がり、結局は爆裂して終わりです。


 睡眠欲は、即効性において信頼性に欠けます。戦闘時のような興奮状態の相手には、特に効きが悪い。


 その思いつきには、総じて何の意義も——」


「トロール・ベアの体は、どうなんですか?」


「………なんですって?」


 魔導砲が焚く強光が、彼女を横から照らし出す。

 緑の下弦かげん半円二つが、とりわけ強く反射を返す。


「あいつは、熊の体のシステムを、流用してます……!体が勝手に反応する、ってことだって、考えられる、はずです……!」


「お前の言う通りだとして、やることは変わりません。私がこの場に一人で残り、」


「いいえっ!いいえ違いますっ!ここです!僕ですっ!これっ、僕の、使いどころですっ!」


 今こそ僕を利用する時だ。

 死なない僕を。


「エレノア様、その力、匂いだけ、とか、できませんかっ?」


「………?」


「風に混ぜて、嗅がせる程度の……!僕達が近くに居ても、お腹が空くくらいで、命には障らない、くらいの……!」


「!……お前、まさか……」


 ふたつの星が、黄色から緑のグラデーションを持つ円に変わる。

 察しの良い彼女は、そこで僕のアイディアに辿り着いたらしい。


「ぼっ、僕が、開けます……!あいつの口を、開けさせます…っ!」

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