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敵と味方 2

 ◆


「これは学園の責任問題だ。この学園の教育方針はどうなっているのだ」


 オド学園長は、幼く見える顔の目の下にクマを作り、豪華な衣装に身を包んだ男と向き合っていた。広く豪華な会議室には、他にも難しい顔をした高い立場にある人物らが集まっている。ここは魔術都市ミルデヴァの中枢である城、統律城オルドラムの一室である。


「生徒同士が人のいる場所で魔術を使い、大勢に怪我をさせ、街を破壊した。しかも、我が子、ロバルトは行方不明。どう責任を取るつもりだ!」


 感情的に怒鳴りつける豪華な衣装に身を包んだ男は、ロバルトの父ラルバ・ソリアーダンである。早朝から顔を赤くして怒鳴り声を上げて、血管が切れないか心配なほどである。

 オドも徹夜でロバルト捜索を手伝って、ようやく帰ってきたところにこれであるから、言葉を選んでいる余裕はなかった。


「学外で起きた問題など、あたしが知るわけない。それと言っておくが、怪我をさせたのも街を破壊したのも、あんたの子のロバルトだ。そして行方不明ではなく、逃亡中。学園では正しい倫理観を持つよう教育しているが、親から教わったことまでは取り消せないからね!」


 青筋を額に浮かべたオドが、ラルバを睨みつける。二人の怒鳴り合いを聞いていた男が、静かに言った。


「今、責任の所在を口論している場合なのかな、ラルバよ。貴殿をこの場に参加させたのは、無駄な口論をさせるためではない」


「しかし、ベルキオン市長……」


「黙れと言っているのだ」


「……」


 口髭を蓄えた男がそう言うと、さすがのラルバも押し黙るしかない。

 ベルキオン市長と呼ばれた男は、この街ミルデヴァの行政の長、ドラウス・ベルキオン伯爵である。彼はその肩書とは裏腹に、ラルバよりも地味な服に身を包み、皆と同じ形の椅子に腰かけている。ただ、その表情からは隠せない威厳が溢れている。


「先日のイーブンソード邸襲撃事件に続き、この事件だ。この街の安全が脅かされている。そして、この事件の中心にいるのが、オルシア・イーブンソードであることは間違いない。魔王軍(・・・)が彼女を狙うのであれば、我々は全力で彼女を守らなければなるまい。その理由がどう言ったものであるかわからずともな」


「ドラウス、それは……」


 オドがドラウスの言葉を止めようする。この場には魔王軍の存在を知らない者もいる。

 大富豪とはいえ、一般人であるラルバとその秘書はもちろん、今回の事件を担当する衛兵隊長のロートベットとその副官。そして、ヴァヴェル学園と双璧をなすインフェルナ魔技学校の校長ディンセルも聞かされていなかった。

 知っていたのは、オド、ドラウスと、その片腕であるヒットリア副伯だけだ。


「魔王軍……。存在が確認されたのですか」


 ロートベットが訊ねると、ディンセルも自分に禿げ頭を撫でながらそれに同調する。


「初耳ですな。どうやら、オド学園長は知っておられたようですが」


「色々と訳ありでね」


「グリオン・パーシバルの竜騎兵が全滅したのは、その関係ですか。そのとき、グリオンは捕虜となり、魔王軍に操られており、イーブンソードの令嬢を襲撃した……。今回もその襲撃の続きだということですね」


 ラルバはその言葉を聞き、机を拳で叩いた。


「ふざけるな! そうだとしたらロバルトは巻き込まれただけではないか!」


「これ以上怒鳴るなら、その口を縫い合わせるよ、ラルバ。まだ、今回の襲撃が魔王軍と関わりのあるものか、オルシアを狙ったものかもわかってはいない」


「貴様こそ誰に向かって口を利いている! ワタシは貴様の学園に多額の寄付をしている理事だぞ!」


「誰が理事だ。ヴァヴェル学園は公営だよ! それともあの寄付は、息子を入学させるための賄賂だったとでも言いたいのかい」


「よさんか、大馬鹿者ども!」


 黙って座っていたヒットリア副伯が、その大きな体格に見合うだけの大声で、二人を黙らせる。


「ラルバ殿、息子を思う気持ちはわかる。だが、俺たちは街の治安を守る者として、ロバルトに対処しなければならない。それは彼の死を含めての意味だ」


「……っ」


 ラルバの顔が歪んだ。顔が赤くなったり、青くなったりと忙しい。やがて、力を抜くと、椅子にへたり込むように座り直した。ヒットリアが話を続ける。


「魔王軍に操られていようと、いまいと、ロバルトがやったことに変わりはない。そして、彼は危険な状況にあることは、タガえようのない事実だ。彼を迅速に見つけ、保護しなければならん。ラルバ、お前がそのように動揺していてはいかんぞ」


 ラルバは机に突っ伏して、顔を上げずに言う。


「はい……。申し訳ありません」


 ロートベットが話を進める。


「ソリアーダン殿。事件前、ご子息のロバルト君に何か変わった様子はございませんでしたか。ご子息は学園の寮には入っていないとのことでしたが……」


 ラルバは顔を上げ、ロートベットを見る。


「いや、特に変わったところは……。いや、事件の前日、ワタシに小遣いが欲しいといってきました。次の試験に向けて、新しい魔道具が欲しいと……」


「魔道具……」


 そのとき会議室の扉が叩かれ、コルブレル・イーブンソードが入室した。


「失礼します」


 コルブレルはドラウスに報告に来たのだが、一般人であるラルバを見て口を開くのを躊躇タメラった。


「朗報なら構わん。話せ」


 ドラウスが言うと、コルブレルは頷く。


「朗報と言えるかどうかはわかりませんが……、この街に魔物が侵入した形跡はありませんでした。我が邸宅に現れた、結界を通り抜ける特殊なシェイプシフターも全て駆除できたようです。ロバルト少年が魔物と化したわけではなさそうです。私の捜索魔術を逃れる術を持っていれば別ですが……」


「お主の魔術を逃れられる魔物など、例外中の例外だ。構うな」


「はい。ロバルト少年が魔物化していないのであれば、捜索は困難を極めます。ただ、やり方が前回の吸血鬼事件と違い、どこか場当たり的な行動に見えます。魔王軍とは関係ないかもしれません」


 その話を聞いたラルバは、全身から力が抜けた。もし、ロバルトが魔物になっていたのであれば、それは既に命がないものとして扱われることとなる。そして、敵対する軍に関わっていたのであれば、死よりも恐ろしい壮絶な拷問が待ち受けている。

 ロートベットが言う。


「目撃者の証言によれば、ロバルト君は正気を失ったような目をしていたとのことです。なんらかの魔術により、操られていると見るのが妥当でしょう。拘束したいところではありますが、街で見せたあの力では、衛兵たちだけでは対処できるかどうかわかりません。やはり、魔術士による全面協力をお願いしたい」


 ヒットリア副伯が話を繋ぐ。


「かなりの大規模になりますな。オド学園長にも、ディンセル校長、インフェルナ校にも協力をお願いすることになりますが、構いませんか」


 二人が頷くのを見て、ドラウスが決める。


「よろしい。では、今日中に人を集め、捜索を開始する。もし、今回の事件がイーブンソードではなく、ラルバあるいはロバルト自身を狙った事件である可能性もある。充分に注意せよ。決して独りになるな」


「はい」


 後の話は細かい調整や、報告がオモになる。その話の中にルナとオルシアの処分についても議題に上がった。


 ◆


 二週間の謹慎処分。

 たった一日の街でのお出掛け(・・・・)で、貴重な時間が失われていく。ルナとオルシアは寮から出ることを禁じられ、魔術を使うことも禁じられた。授業は受けることはできないし、食事も部屋で摂ることになり、図書室へ行くこともできない。


「公開試験までのこの時期に、こんな長い期間、無駄に過ごすことになるなんて……」


「ご、ごめんね。私が何も考えずに魔術を使ったせいで……」


「何言ってんの? オリィが悪いことなんて何もない。全部、ロバルトが悪いんだよ!」


 ルナは部屋の中を行ったり来たりしながら、今できることを必死に考えていた。

 基礎知識を付けるために本を読みたいが、図書室は使えない。誰かに借りてきてもらうことはできるが、自分で選べないのは痛い。それに魔術の使用を制限され、試すことができないのは、もっと痛い。


「謹慎明けで残り一か月……。どう考えても公開試験まで短すぎる……」


「ルナちゃん、こう考えるしかないよ。無資格で魔術を使ったのに、たった二週間の謹慎で済んだんだから……。牢屋に入れられなかっただけでも感謝しなきゃ」


「前向きだねぇ……」


 ルナは諦めて床に座り込むと、天井をしばらく眺めてから、ベッドの脚に足の指を引っ掛けて、腹筋を始めた。その様子をオルシアはベッドの上から不思議そうに眺める。


「な、何してるの?」


「腹筋」


「それは見ればわかるけど……」


「どうせ……、やることがないなら……、肉体改造に……、当てる!」


「……」


 放課後の鐘がなり、生徒たちが戻ってくる時間になる。

 街で事件があり、生徒が犠牲になっても、授業は何事も続けられる。ルナたちはイルヴァが帰ってくるのを首を長くして待っていたが、彼女は夕食時になるまで帰ってくることはなかった。その理由はわかっている。

 ルナたちはイルヴァが帰ってくるまで、筋トレと柔軟をしながら待った。イルヴァが部屋に入ってくると、不思議なポーズを取って、じんわりと汗をかいた二人を見て、顔を顰める。


「何してんの?」


「イルヴァさん! ダウリさんの様子は⁉」


 イルヴァの質問には答えずルナが訊ねると、イルヴァは暗い顔で自分の机についた。


「な、なんなんですか。悪い知らせですか」


 イルヴァは溜息をつくと、ルナとオルシアを見た。


「ダウリには会えなかったよ。けど、担当の治癒師から話は聞けた」


「はい」


「ダウリは、今は封印魔術で魔力の漏出を防いでいるけど、長くは持たないってことだよ」


「そんな……」


 オルシアが泣きそうな顔で口元を押さえる。ルナは落ち着いた声でイルヴァに訊く。


「死の呪文が解けないのですか。時代遅れの魔術で、対処法もあると聞いていますが」


「うん。でも、問題があるだよ。ロバルトが生きている(・・・・・)から、死の呪文が完成せず、魔術を解除しても、また毒みたいに死の呪文にかかってしまうんだって」


「……どういうことですか」


 ルナが言うとオルシアが答えた。


「半死半生……。死をモタラす魔術は、代償に使った人物の命をも奪う。でも、ロバルトは死ななかった。だから、魔術は完成せず、ロバルトが生きている限り、死ぬことはないけど、魔術の漏出は止まらない。でも、そんな状況が長く続けば、肉体が持たない……」


「そう。同じことを治癒師の人も言っていたよ。ロバルトがそれを狙ってやったとは思えないけど、結果的に治らない傷口みたいに、ダウリを傷付けたんだ。ロバルトを捕まえて、魔術的繋がりを絶たないと、ダウリはあと一週間持てば良い方だって……」


「一週間……」


 ルナたちの謹慎が解ける前にダウリは死ぬ。ルナはその言葉を聞いて、部屋を出ようとした。だが、オルシアに手を掴まれる。


「ルナちゃん、どこに行くの」


「……こんなところで油を売ってる暇はない。ダウリさんを助けに行く」


 イルヴァも部屋の出口を塞いで、ルナに向き合った。


「助けるって具体的には?」


「それは、私の治癒魔術でなんとかできるかもしれないし、ロバルトを捕まえれば……」


「あなたの治癒魔術をオトシめるつもりはないけど、経験も実力もある治癒師がサジを投げたんだよ。魔術士でもないあんたが行っても、何かできるとは思えない。今夜、兵士と魔術士、傭兵たちも召集されて、大規模な狩り(・・)が行われるらしいよ。私たちの出番はない」


 イルヴァに厳しく言われ、ルナは押し黙った。


「ルナちゃん、私たちは謹慎中だよ。今、寮を抜け出して、魔術をまた使ったら、今度は本当に捕まっちゃうよ」


「……」


 二人に止められて、ルナは何も言えなくなる。

 自分の実力は良くわかっている。何度、目の前で命が手のひらから零れ落ちようとしてきたかわからない。アルフォンスはルナの治癒魔術を自分以上だと評価してくれたが、ルナの術はいわば反則技のようなもので、前の世界の医療の技術の発想で底上げしているだけだ。現にアルフォンスは、ルナの技術を既に会得し、自らの治癒魔術に応用し始めている。


(私が『生命の魔女』などと呼ばれていたなんて、おこがましいにもほどがある)


 ルナは目を瞑り、体から力を抜くと、自分のベッドに戻った。


「ルナちゃん……」


 オルシアがその背中に呼びかける。


「……疲れたから、寝る」


「でも、ご飯は……」


「いらない」


 ルナはベッドに上がり寝転がる。オルシアはさらに声をかけようとするが、イルヴァに止められた。


「放って置こう。アタシもここでご飯食べるから、一緒に食べよう」


「はい……」


 不貞寝してしまったルナをよそに、イルヴァは寮母に食事をここで摂っても良いか許可を取りに行く。

 再び、二人きりになった部屋で、オルシアはルナのベッドに向けて言う。


「ソリアーダン君は、こんなことをする人じゃないよ。確かに、授業のときとか色々と言ってきて嫌な思いするときはあるけど……、いつも、自分の実力を認めさせるために努力してただけ……。何か酷いことに巻き込まれているんだと思う」


「……」


「ルナちゃん。この街には私たちよりもっと優秀な魔術士の人たちがいるよ。だから、信じよう。絶対にダウリさんを助けてくれるし、ソリアーダン君も助けてくれるよ……」


 オルシアがそう言うのを、ルナはベッドの中で身動ぎもせずに聞いていた。だが、何も応えず、諦めたオルシアは部屋を出て行った。


 ◆


 ラルバが自宅に戻ると、送迎の衛兵たちはそのまま護衛として待機するとのことであった。ありがたい話ではあるが、落ち着かないのも事実である。


「ラルバさま、お食事は」


「セリーナ、お前がそこまで心配することはない。とっくに退勤時刻は過ぎているだろう。もう帰って良いぞ」


 ラルバの秘書であるセリーナは、今回の事件について何かをする必要はない。彼女はあくまでも従業員であり、私生活まで世話を焼く必要はないのだ。個人秘書としないのは、ラルバ自身が自分のことは自分で済ましたいという信条であるからである。


「しかし、独りにはなるなと……」


「衛兵がいるし、腹が減ったら自分で準備する。心配するな」


「はい……」


 セリーナは少し気落ちしたように肩を落として、部屋を出ようとする。扉を閉める前に、彼女は振り返ってラルバに言う。


「ラルバさま。若さまは必ず無事でおられます。その……、我々、商会の者も微力ながら捜索に当たるつもりです。ですから、ラルバさま、お気を確かに」


「……ああ、ああ。わかっている。……少し休ませてくれ」


 セリーナが出て行く。ラルバはデキャンタからグラスに酒を注ぎ、一口に飲み干す。冷たいが熱く感じる液体が、空の胃袋に注がれて、ラルバは溜息をついた。

 妻亡き後、ロバルトを男手ひとつで育ててきた。仕事が忙しくても、必ず夕食は一緒に摂るようにし、なるべく会話もするようにしていた。

 故に、ロバルトの様子が、近頃は変わってきたことは知っていた。

 学園でのことはあまり話さなくなり、帰ってきても自室に籠って勉強に打ち込んでいるようである。どこか焦り過ぎな気もするが、やる気を出したことは良いことだと、見守ることにしていたのだ。独り立ちのときが来たのだと、寂しく思いながらも。

 小遣いをせびられたとき、思わず嬉しくなってしまって、気前良く金を渡した。それがこの結果である。後悔が募る。


「ロバルト、どこにいる……。帰ってこい……」


 ひとりになると焦るばかりで、何も考えられなかった。酒を飲んで寝てしまいたかったが、逆に目は醒め、ただただ時間が過ぎていく。


「随分と焦燥されてますな、ラルバどの」


 最初は酔って幻覚でも見ているのかと思った。だが、意識がハッキリしてくると、部屋にひとりの老人が立っているのだと認識できた。

 ラルバは立ち上がり、机に隠してある短剣を取り出して、老人に向ける。


「侵入者だ! 誰か、助けてくれ!」


 ラルバの体格であれば、小さな老人など圧し潰してしまえそうだが、体格に見合わずラルバは身の程をワキマえている。助けを呼ぶことは恥ではない。だが、その声は空しく響き、扉の外から誰も駆けつけてはこない。


「誰も来んよ。しかし、旧知の友が訪ねてきたというのに、いきなり助けを呼ぶとはなぁ」


 ラルバはその言葉に、この老人が魔術士であると悟る。白髪頭にしわがれた声、痩せこけた老人。このような知り合いはいないはずである。だが、どこか見覚えがある気がした。


「まさか……、メディコニアンか……?」


 ラルバは慎重に問うと、老人はにやりと笑う。その嫌らしい笑い方で、確信した。


「お前、死んだと思っていたぞ。今までどこにいた。その姿、何があった」


 ラルバとメディコニアンは同年代だった。それなのにこの老けようにラルバは驚愕する。


「密輸業の男が、今では立派な大店オオダナの主か……。出世したじゃないか」


「今更、その話か。それでオレを強請ユスリに来たのか。昔、オレがしていたことなど、周知の事実だぞ」


 メディコニアンが喉を鳴らして笑う。


「そうか。それは残念だ。だが、今回は別の件で来た。お前の息子のことだ」


 メディコニアンがそう言うと、ラルバは短剣をその喉元に突きつける。あっさりと懐に入られた老人は、ラルバを見た。


「せっかちだの」


「息子はどこだ。言え!」


 メディコニアンは嫌らしい笑みを崩さない。


「そんな態度で良いのか? お前の息子の生殺セイサツを握っているのはわしだ」


「ぐっ……」


 ラルバは一瞬躊躇したが、短剣を降ろした。


「何が……、望みだ。金なら幾らでも……」


「金? そんなものに用はない。必要なのはお前の密輸ルートだよ」


「何? 馬鹿なことを……。もう十五年以上前の話だぞ。そんなものとっくに……」


「いいや。あるだろう。お前は昔から、必ず最後の一個を残していた。今でもそれを使っているだのではないか?」


「……」


 メディコニアンは昔、この街に蔓延ハビコっていた密輸団の元締めであった。大規模な掃討作戦によって、組織は瓦解。ラルバはその掃討作戦に協力したことで、無罪放免となっていた。


「それを知ってどうするというのだ。今更、密輸を再開しようとでも言うのか」


「お前が知る必要はない。今回の件が終われば、ロバルトは無事に返してやる」


 選択肢はない。


「……なぜだ、メディコニアン。息子は関係ないはずだ。復讐ならば、オレを直接、サラえば良い話だろう。息子は返してくれ」


「無駄な問答だな。……お前とはこれからも良い関係を築いていきたいという、わしの真心だよ。さぁ、どうする。息子の命ともども死にさらばえるか。選べ」


 ラルバはこれ以上の時間稼ぎはできないと悟り、選択を余儀なくされた。


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