パーティ登録で書類落ち
一行は冒険者ギルドへ向かった。
石造りの大きな建物。
朝から人でごった返し、剣と魔法と汗の匂いが入り混じっている。
「俺とハルトのパーティの結成届を出すんだな……!」
ライオネルが無駄に感動している横で、ゼノはぴったり俺の隣をキープしていた。
「人が多いな。ハルト、はぐれないように手を繋いでもいい?」
「よくない!」
キュルリと黒目がちな上目遣いから逃れる。
一歩ずれると、半歩詰めてくる。完全に追従型だ。
「ふふ、若い子って一生懸命でかわいいわねぇ♡」
最後尾から、マリアスが余裕の笑みを浮かべる。
「ダーリン、登録が終わったらお仕事よ? ワタシ、回復役として――」
「その呼び方やめてください! 今すぐ!」
視線が痛い。
ライオネルはなぜか目に炎を宿している。
「恋敵は多いほど燃える!」
「燃えるな!」
その少し後ろ、けだるげにプカプカ浮いているのがミカエルだ。
「……はあ。最初は面白いって思ってたけど、だんだん飽きてきたな。人間ってほんと無駄に元気だな」
「お前のおかげで、俺はずっとツッコミどころ満載で忙しいよ……」
***
受付カウンターに並び、順番が来る。
受付嬢はにこやかに一行を見やり、用紙を差し出した。
「パーティ登録ですね。お一人ずつ、お名前と職業をこちらにご記入ください」
誰の名前を何番目に書くかでワチャワチャしながらも、なんとか記入を済ませ、用紙を受付嬢へ手渡す。
彼女はちらりと俺たちを見た。
「……仲、よろしいんですね」
「え、まあ……はい……?」
受付嬢は淡々と用紙を読み進めていたが、ふと動きを止めた。
「……天使の方はどなたですか?」
「俺だけど」
ミカエルをじっと見つめたあと――
「……ああ」
すべてを理解したように、彼女は頷いた。
「やっぱり、そういう感じのご一行様でしたか」
「どういう意味ですかそれ!?」
生暖かい微笑みを浮かべながら、事務的に告げる。
「申し訳ありませんが、天使の方はギルド登録できません」
「え? 俺、パーティメンバーに入れないの?」
「はい。世界の秩序の決定権を持つ存在は、ギルド登録できない規約となっております」
「なんだよー。ま、仕方ねえかー」
ミカエルは即座に興味を失った。
ライオネルが慌てる。
「な、なんだと!? ミカエルは一緒に冒険できないのか!?」
「できるけど、ギルド登録できない以上、ただついていくことしかできない。幽霊枠な」
ゼノが低く唸る。
「……非公式メンバー、ということか」
「そうそう。責任も書類もなし。最高だろ」
ミカエルは興味なさげに答える。
その様子を見ていたマリアスがくすっと笑った。
「あらぁ、気楽でいいじゃない♡」
「だろ? まあ俺様も気が向いたら援護してやんよ」
「お前ら、ほんと肝が据わってるな……」
受付嬢は、そんな俺たちを生暖かい目で見ていた。
「ええと……では、正式登録は四名ですね」
「はい……お願いします……」
***
受付嬢は最後に一言だけ添えた。
「……皆さん、どうかご無事で」
その声が、やけに心に染みた。
こうして――
一名書類落ちしたものの、正式なパーティが誕生した。




