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第3話:勇者式ショッピング

翌日。

ケンとヒサオミ、華蓮は地元のショッピングモールへ出掛けることになった。

目的は、ヒサオミの下着や服を買い揃えること。

しばらく日本に滞在するのであれば必須なので、華蓮は彼氏とのデートもキャンセルしてヒサオミのことを優先した。


ケンはいつも着ている「game」と書かれた安物のTシャツにジーパンスタイル。

華蓮は昨日とは異なる、白シャツにピンクのカーディガン、茶色のスカートのコーデ(尚、毎度のことだが胸は強烈なほど持ち上がっており、服の上からでも大きな膨らみが確認できた)


ヒサオミはまだ華蓮からのおさがりの服しかないので、ノーブラの上にシャツ、胸元が見えないようにカーディガンを上までボタンを閉じてガード。下はすっかり気に入ったのか、短いホットパンツスタイルだった。



美少女ふたりを引き連れてショッピングモール内を歩くケンは、道行く単独の男性から嫉妬の視線を受けていたが全て無視をする。


ヒサオミは未来の嫁候補なのでまだしも、華蓮はただの幼なじみだし、そもそも彼氏持ちなのだ。


異世界人のヒサオミは、ショッピングモールというものを見るのももちろん初めて。ひとつの大きな建物の中に沢山の専門店が入っており、ひとりで来ている人から親子連れ、ご老人まで買い物を楽しんでいる様子にワクワクしていた。


「まるで大きな城下町のようですね!」


ヒサオミは異世界文化を例えに出してみた。華蓮は頭の上に「?」を浮かべていたが、ファンタジー大好きなケンは「わかる!武器屋と防具屋が隣同士になってるやつだろ!」と答えていた。


ヒサオミの中で常識の異世界文化は、ケンがプレイするファンタジーゲームに置き換えることができるらしく、会話が弾むようだった。



基本的にケンは支払い役で、服を選ぶのは華蓮の役目。まずは男子禁制なランジェリーコーナーへヒサオミと華蓮が入っていく。

ケンはランジェリーコーナーを眺めるわけにはいかず、近くのベンチに座ってふたりを待つことにした。

ケンはスマホでSNSを見たり、ゲームの新作情報を調べたり、ゲームのセールを確認したり、ソシャゲにログインしたりと、とにかくゲーム情報を見て時間を潰すことにした。





「わあ、下着がこんなに…!」


ランジェリーコーナーへ足を踏み入れたヒサオミは驚きの声を発する。

マネキンに着せているブラやショーツ、棚に並ぶ下着も、みんなレースやフリルがついた可愛らしい、華やかなもので溢れていた。

ブラジャーの売り場には「A」から順に各サイズの下着が並べられている。ワイヤー入りだの、ワンサイズアップブラだの、ナイトブラだの、ヒサオミにはよくわからない単語が多く見られた。



「まずはヒサオミちゃんの胸のサイズを測らないとね」



店に慣れている華蓮がヒサオミの手を引き、連れていこうとする。

しかし、ヒサオミはそれを拒んだ。



「サイズを測るだなんてそんな……大丈夫です!いちばん小さいですから…」


ヒサオミは片手で自分の胸元を抑えて言う。

華蓮は顔を左右に振り、「だめだよ」と声をかけた。



「ちゃんと自分のサイズに合ったブラを選ばなきゃ、だめだよ。適当に選んだら、ブラから溢れたり、揺れたりするし」


「いえいえ、溢れることも、揺れることもありませんってば…」



ヒサオミは慌てて自分の両胸を服越しに軽く揉む仕草をした。

効果音をつけるとすれば、「ぷにぷに」といったところ。


華蓮はまたしても、顔が青くなる。また自分を基準に話してしまったらしい。しかし、空気を悪くするわけにもいかず、華蓮はフォローを入れる。



「そ、それでも!どんな大きさでも女の子はブラをするものなんだよ!大丈夫!かわいいデザイン多いし、毎日選ぶのが楽しくなるよ!うん!店員さーん、すみませーん!」



華蓮は少し冷や汗をかきつつもそう言うと、女性店員を呼ぶ。店員に、「この子のバストサイズを測ってください」と声をかける。店員はメジャーを片手に、ヒサオミを試着室へ連れていく。


ヒサオミは「ふ、服を脱ぐのですか!?」「恥ずかしいです!」「い、いやーっ!」と拒んでいたが、客のサイズを測ることに手馴れた女性店員はてきぱきとヒサオミの胸のサイズを測ることに成功する。


ヒサオミは顔を赤らめ、服を着なおし、ゆっくりと試着室から出てきた。

華蓮が声をかけようとする前に、ヒサオミが慌てはじめる。



「華蓮様、華蓮様!大変です!!私!!!!」


「落ち着いて!ど、どうしたの!?」


華蓮はヒサオミの背中をぽんぽんとさすって落ち着くように促した。

ヒサオミは、華蓮の目を見て言う。



「B…みたいです…」



それはヒサオミがバストサイズを測った結果報告だった。

ヒサオミの胸は小ぶり。真っ平らとまでは行かないが、丸みを帯びている…とも言えないふくらみをしている。

ヒサオミは、今までは大剣を振るう激しい戦いをしていたこともあり、胸が小さいことは動きやすく有利だと考えていた。


しかしこの日本に来て、規格外に胸が大きい華蓮を目にして……自分の身体つきは貧相だと思ってしまっていた。


だからいちばん小さいサイズだと思っていたのだが……サイズはBカップだと判明した。



「Bカップはかわいいブラの種類多いと思うよ!」



華蓮は報告を聞き入れ、ヒサオミを手招く。そこでぼそりと、ヒサオミは声をかけた。



「あの…華蓮様のサイズをお聞きしても…?」


「え」


まさか自分の胸のサイズを聞かれるとは思わなかった華蓮。同学年の女子と比べても圧倒的に大きい華蓮は、どう答えるか少し悩む。そこで、小声でヒサオミに伝えた。


「私のサイズは……このお店には無い、かな」



華蓮はそれだけ言うと、Bカップのブラコーナーへ向かう。

それを聞いたヒサオミは、店内をキョロキョロしてしまった。

D、E、F……大きなサイズはここまでになっている。


(Fより…大きいんですか…!?すごいです…華蓮様…!)


ヒサオミは謎の感動に包まれながら、Bカップの下着を華蓮に見繕ってもらった。






「ケン様♪お待たせしました♪」



ランジェリーコーナーから出てきたヒサオミと華蓮。ヒサオミはウキウキとしており、華蓮は下着が入った袋をケンに差し出した。

ケンは体力には自信があるため、荷物持ちとして素直に受け取る。


喜んだ様子のヒサオミに、ケンは声をかける。


「なんか楽しそうだな、ヒサオミ」


「はい!華蓮様に下着を選んでいただいて…すごくかわいいものを購入出来たんです!着け心地も良いですし、身が引き締まる感じがします♪」



ノーブラだったヒサオミは、買ったブラを試着室で身につけたらしい。何もつけていない時より少し盛り上がった胸元を無意識的に見てしまうケン。


「こら、ケン。胸ばっか見ない!」


華蓮が睨む。ケンは「みみみ、見てねーもん!」と言い訳をしつつ、誤魔化した。

そんなふたりを見て、ヒサオミはふふっと笑う。ファンタジー世界から現代日本に飛ばされてどうなるか困っていたなんて嘘のよう。ヒサオミの前では、穏やかな光景が広がっていた。



談笑をしつつ、ヒサオミの服を見繕うために別の売り場へ向かう3人。

服屋に向かうまでに、宝石屋を見つけては目を輝かせる女子ふたり。雑貨屋を見つけてはかわいいぬいぐるみに興奮する女子ふたり。

メガネ屋では、ケンがブルーライトカットメガネの新作を探すなど、ショッピングを満喫。



「メガネって初めて見ました!視力をサポートする装備品なのですね!」


「そうそう。賢さが10上がる感じするだろ?」



ファンタジー文化と、ファンタジーゲーム知識で意思疎通をするヒサオミとケン。そんなふたりに苦笑する華蓮。

ほのぼのとした雰囲気であったが、ふとした瞬間、ヒサオミが何かに気付いたようにとっさに振り向く。



「どうした?」


「なにか…嫌な気が…」



ヒサオミは何かを探知したようで、ショッピングモール内を真剣な眼差しでキョロキョロし始める。


華蓮はヒサオミの肩に手を置いた。



「何も心配することないよ!次行こ行こ!洋服屋さんはこの先の角だよ!」



「そう…ですか?そう……ですよ…ね…」



ヒサオミは警戒心を解かずに、メガネ屋を離れることにした。





10代の若者向けの洋服屋では、華やかな衣類からシンプルな衣類まで揃っていた。男子禁制ではないものの、緊張しつつ店内に踏み入るケン。

華蓮が何着かヒサオミに似合いそうな服を持ってきて、試着させていく。


花柄がプリントされたふんわりとしたワンピース、オフィスカジュアルのような大人びたシャツ、スポーティなパーカー。

スタイルの良いヒサオミは、何を着ても様になっていた。


何着か購入することになり、いちばん気に入った服はそのまま着ていくことにした。

上半身はフワッとしたシャツに、ホットパンツのスタイル。ヒサオミは、動きやすいホットパンツが気に入ったようだった。ムダ毛ひとつない健康的な生脚が眩しい。


華蓮も自分用にデート服を購入し、満足に店を出る。


その時だった。


「姉ちゃんかわい~ね~?俺と遊ばな~い?」


「っ!」


服屋を出た先で、華蓮は見知らぬ大柄の男に手を握られてしまう。男はニヤニヤとした顔つきで華蓮を舐め回すように見つめていた。


「華蓮様!」


思わず声を出すヒサオミ。そう、先程感じた気配とは、この男のことだったようだ。



「おい!やめろよ!」


幼なじみが襲われる構図に、ケンが割って入る。男の手を振りほどこうとするが、男はあまりにも力が強かった。


「いたっ……やだ!やめてっ!」



左腕を強引に引っ張られる華蓮。男は顔を更に歪ませた。


「すっげーおっぱいしてんなぁ……ちょっと揉むぐらいいいよなあ?お前らもそう思うだろ?」


男がそう言うと、後ろからまた別の大柄な男たちがニヤニヤしながら華蓮を取り囲んでくる。ひとりが華蓮の左腕を、もうひとりが右腕を掴む。もうひとりは、華蓮の顔から胸、脚までをくまなく視姦していった。



「おい!何考えてんだ!華蓮を離せ!」


ケンは荷物を放り出し、男たちに殴りかかる。自慢の拳は「ぺちっ」と小さな音を立てて静まってしまった。



「やだ!離して!いや!」


必死に抵抗し、もがく華蓮。しかし男たちの力は強く、びくともしない。


己の無力さにショックを受けるケンの隣で、静かに、鋭い視線を向ける者がいた。


紅蓮の髪が逆立つように怒りに満ちた少女。


…ヒサオミだ。



「ケン様、いま、キスしてください」


ヒサオミは両手を握りしめ、震えていた。その顔は、憎悪に満ちている。



「何か考えがあるんだな…わかった、しよう!」



ケンはそういうと、ヒサオミと向き合う。

華蓮を囲んだ男たちが「おいおい、盛ってんのか?」と野次を飛ばすが関係ない。

ヒサオミがケンの顎をぐいっと引き寄せ、いつもより深めにキスをした。


ふたりのあいだに、ピンク色の輝きが起こる。体感、いつもよりまばゆい光だ、とケンは思った。

ヒサオミは唇を離すと、太い眉毛を釣り上げて男たちに立ち塞がる。



「あなたたち…私の大事な華蓮様を…!許しません…!」


ヒサオミはそう言うと、右手を前にかざし、叫んだ。


「来い!我が(つるぎ)よ!」


すると、ヒサオミの右手に光の粒子が集まっていく。その粒子は形を変え、大きな大剣へと変化させた。



「なんだ?手品師か?ふざけたことしやがって」



華蓮の腕を握る男がへらへら笑った。


ヒサオミは手馴れた様子で、大剣を両腕で握りしめ、大きく跳躍。男たちの身長よりも遥かに飛んだ。



「成敗!……は、ダメでしょうから……これで!」



ザンッ!

ジャンプからの、上から大剣を振り下ろして男たちへ斬りかかった。

男たちの手脚が飛び、血飛沫をあげる………ことは全く無く。

その代わりに、無数の布切れが宙を舞った。



「「「ぎゃーーーーっっ!!」」」



ヒサオミに斬られた男たちは、とてつもなく大きな絶叫をあげる。そう、ヒサオミは大剣で命を絶ったわけではなく、衣類だけを斬り裂いて男たちを丸裸にしたのだ。

突然全裸にさせられた男たちは両手で股間を隠しながらショッピングモール内をバタバタと走り逃げていく。不審者集団が現れたとアナウンスされ、警備員に捕まってしまっていた。



「…インフィニティ・シャイン。手加減バージョンです。えへ、決まりました!」



ヒサオミが異世界で得意としていた必殺技のひとつ、「インフィニティ・シャイン」が無事発動したことに、ホッと安心する。

自慢の剣は再び光の粒子となり、消えていく。

ヒサオミは額の汗を少し拭い、笑った。



「華蓮様、大丈夫でしたか?」


ヒサオミは王子様のように、華蓮に手を差し伸べた。



「ほ…本当に勇者様だ…!ありがとう!ヒサオミちゃん!」



華蓮はヒサオミの手を取り、真正面から喜びの笑みをぶつける。ヒサオミは少し照れながらも受け入れ、ケンをちらりと見た。



「ケン様からの魔力供給があれば、愛剣の召喚も可能のようです。人を殺めるのはまずいと思いましたので服だけ少し…斬っちゃいました」


ヒサオミは華蓮からそっと離れると、そう言った。

しかし、当の本人であるケンはヒサオミの勇者としての活躍を目の当たりにし、呆然と立ち尽くしていた。


「ヒサオミ……お前…」


ケンは先程から荷物を放り投げたまま、両手をわなわなと震えさせてヒサオミに近づいて行く。その間に、他の客の邪魔にならないように華蓮が落ちている荷物を拾い上げていった。


ケンの視線がヒサオミの両目をはっきり捉えると、ケンは真正面からヒサオミを思い切り抱きしめた。それはもう、勢いよく。



「ヒサオミ…すっっっっげぇーーかっこいいじゃねえか!!!!」


ケンの大音量の声がショッピングモールに響き渡る。それを耳元で聴いたヒサオミは驚きつつも、コクリと一度頷いた。


「勇者ですから」



ヒサオミは気恥しいのか、抱き返しはしなかったが、ケンからの抱擁を拒むことはなかった。



「やっぱり俺が信じた通りだ!本当の本当に異世界の勇者だったんだ!うおー!テンション上がるっ!自分の未来の嫁がチート級に強い勇者ッッ!!上がる~~!」


ケンがヒサオミの背中をバンバン叩きながらはしゃいだ。

ヒサオミも、現代日本へ来た不安が拭えずいたが、勇者らしい活躍が出来たお陰で思わず口角が上がる。


朗らかに、穏やかに、今日を終える………ような展開ではあるが実際はそうも行かなかった。


周囲を見渡し、華蓮が大慌てで駆け寄ってくる。



「ケン!ヒサオミちゃん!逃げよう!」


「え?」



ケンとヒサオミが華蓮に釣られるようにあたりを見回すと……ショッピングモール内はざわざわとしていた。買い物に来た一般客が、一連の事件を「何事か」と眺めており、ヒサオミが派手な剣技を披露して仕留めた瞬間もスマホで撮影されていたようだ。今もまだ、ネットでバズりたい人間がヒサオミを無許可で撮影し続ける。

事態はエスカレートし、ヒサオミや華蓮に次々と質問を投げかける人まで現れ始めたところで…



「て、撤収~~~!」


ケンがそう言うと、ふたりの少女の腕を引っ張って全速力で走り抜けた。






数時間後。

五十嵐家に帰ってきたケン、ヒサオミ、華蓮。

ケンと華蓮はゼェハァと息を乱してリビングの椅子にぐったり座っていた。

しかし、ヒサオミは平然とした顔でテーブルの前に立ったまま。

長距離を全速力で駆け抜けたにも関わらず、ヒサオミの体力は衰えなかった。この点も、勇者ならではの能力なのだろう。


いちばん元気なヒサオミが、冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出し、3人分のコップに注いでいく。尚、こういった日常的なことに関しては相変わらず華蓮が教えてくれたようだ。


コップの半分より少し上あたりまでドリンクを注ぎ、息を整えるふたりにコップを差し出すヒサオミ。

3人がドリンクを飲み干すと、先程の疲労が少し回復したのか、会話が再開する。



「ヒサオミが本当の勇者だってことは最高だし自慢できるけどさ…!目立ちすぎねえ!?」


ケンが惜しそうにそう言うと、続いて華蓮が。


「お陰で助かったけど…注目の的だったもんね…。あ!SNSで拡散されてる!」


スマホでSNSを開き、バズっている投稿をスクロールしていく。


「あの…私、何か悪いことしちゃいました?」


ヒサオミは右頬を指でかきながら、日本から異世界へ転生・転移する人物が言いそうなセリフを口にした。



「ううん!悪いこととかじゃないの!ほんとに助かったんだけど…でも……なんていうか……異次元すぎて悪目立ちしちゃったというか…」



「ええっ!?それでは私、今後も剣を振るう度に騒がれるんですか!?」


ヒサオミが驚きとショックを隠しきれないまま叫ぶように言うと、ケンが残念そうにツッコむ。



「すっげー勿体ないけど、日本だとでけー剣とか刀持ってると…違法なんだよ……さっきみたいなの繰り返したらヒサオミが犯罪者になっちまう!」


いや、俺はもっと勇者の剣さばきを見たいんだけどな!とフォローを入れるケン。


現代日本でも勇者として活躍出来ると感じていたヒサオミは、全身の力が抜けるようにあれよあれよと膝をついてうなだれた。


「勇者としての個性が!アイデンティティが…!私はいったいどうしたら…!」


ヒサオミは目をうるうるさせて訴えかけるも、ケンはどう言えばいいのかわからない。

そこで、華蓮が提案をする。



「ヒサオミちゃんの魔力が全快するまでは…勇者であることを隠して日本の生活に馴染むしかない…かな?」


「そうだな……すっげー勿体ないけど……隠す方がいいな……」


ケンが言いにくそうに華蓮の意見に賛成し、ヒサオミはまたしてもガックリする。

しかし、いつまでも凹んでいてはいけない。勇者とは、諦めない者のことなのだ。ヒサオミは顔を上げ、ゆっくり立ち上がってふたりを見る。



「私……頑張ります!いっぱいこの世界のこと勉強して、馴染めるように過ごします!ですから…ケン様、華蓮様、この世界のこと、たくさん教えてください!」


ヒサオミはそう言うと、ペコリと頭を下げた。



「私でよければ、もちろん教えるよ!」


可愛らしくウインクをする華蓮。


「ま、一般常識とゲームのことなら俺でも教えられるかな。その変わり、異世界の文化も教えてくれ!すっげー興味あるからさ!」


親指を立てて笑うケン。


「おふたりとも、ありがとうございます!ではその…この世界の仕組みや、ルールなどを教えていただきたいのですが…」


ヒサオミがそう言うと、ケンが考える仕草をして口元をにやにやさせた。華蓮はなんとなく嫌な予感がしてしまう。ケンはにやにやしたまま口を開いたが…


「えー、何万年も前に、旧石器時代というのがあって」


「はいはーい1から歴史言う感じのボケ今いらないからねっ!!!!」



華蓮がケンの頭にチョップをして止めた。



「え?今の、ボケ?だったのですか?ふふっ、なんだか、おふたりの息がピッタリで面白いです。まるで夫婦みたいで」


「「100パー、無い!」」


ケンと華蓮が同時に強く主張した。

その後、夜までふたりによる現代日本の仕組みやルールの説明が続いたのであった…。



第3話:勇者式ショッピング


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