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第2話:爆乳幼なじみ(恋愛感情ゼロ)

ケンがヒサオミと結婚する発言をして、押し倒して、胸を揉んだその2時間後。


「えっと…あなたが…お嫁、さん?」



土曜日の朝。

五十嵐(いがらし)家に、またひとり少女が訪れていた。

少女の名は、三上(みかみ) 華蓮(かれん)

長い茶髪を右に結んだサイドテールが特徴で、ぱっちり開いた大きな瞳が印象的。

華蓮はケンの古くからの幼なじみで、家も徒歩5分ほどの近さである。

ケンが唯一話せる「女友達」だった。


華蓮は白や青を基調としたナチュラルなファッションに身を包んで、五十嵐家のリビングの椅子に座って問いただす。


華蓮の向かい先には、ケンとヒサオミが座っている状態だ。


「私が、異世界から来た勇者、ヒサオミと申します」


ヒサオミは「信じて貰えないかもしれませんが…」と言いたげに、華蓮に説明する。

そう、ケンはあの後、親しい幼なじみの華蓮にメッセージを送ったのだ。


『華蓮。俺、結婚することになった』


その一文が送られた華蓮はスマホを二度見、三度見。返信する間も焦れったく、すぐさま自宅を飛び出して五十嵐家へ飛び込んで…今に至る。



「ヒサオミちゃん!やめたほうがいい!ケンはね、毎日テレビゲームして現実逃避してるだけのオタクなの!世の中もっといい男性いるから!」


「華蓮。お前が何を言おうと、俺らは結婚するって決まったから。」


華蓮が前のめりになりつつ興奮するが、ケンは涼しげに返した。しかし華蓮はまだまだケンに突っ込んで意見していく。


「ケンがヒサオミちゃんを助けたのは、わかったよ!異世界から来た…ってのはまだわかんないけど。でもでも、なんでいきなり結婚になるの!?」


それを見ていたヒサオミは、ケンと華蓮の関係について察してしまう。


「華蓮様。もしかして、ケン様とお付き合いされて…」


「「ない、100パー、ない」」


ケンと華蓮が見事にハモって反論した。

幼なじみならではの、照れながら否定…なのではなく、二人共真顔で否定。全否定。

ケンと華蓮は幼稚園からの仲だが、いや、幼稚園からお互いを知っているからこそ、恋愛対象にならずに17年間生きてきたのだった。


「というかあのね、ヒサオミちゃん。私ね、テニス部の部長とお付き合い…しててね?」


華蓮が両手の人差し指をちょんちょんと合わせる仕草をしつつ、頬を赤らめてそう言うと、ケンは察してしまう。


「あー、ヒサオミ。これ、話長くなる」


「?そうなんですか?」


呆れ顔のケンと、何が何だかわからずきょとんとするヒサオミを前に……華蓮は自分の事を語り始めた。



「お付き合いしてるテニス部の部長はね…背がすんごく高くて、テニスがめちゃくちゃ上手でね、髪型もオシャレでね、口数は少ないんだけど優しくてね、そもそも顔がめちゃくちゃかっこよくてね、いつもクールで素敵でね…同性からも支持されててね…!無表情に見えて意外と表情豊かだしあでもこれは私の前だから見せる顔なのかもとか思ったりしてでも私以外にもちゃんと優しくてアドバイスとかしてくれるタイプで、それで勉強もめちゃくちゃ出来てとにかく私を最優先に考えてくれて黙って抱きしめてくれて最高に最高にかっこいいんだよ!!!!!!!!!!」


「うん!1000回聞いた!はい、終わりッ!!」


ケンは勢いよく華蓮の話を終了させる。

大興奮&早口でまくし立てる華蓮に、呆気にとられるヒサオミだったが……悪い印象は無く、むしろ…


「素敵な殿方と出会えたんですね…!華蓮様、お幸せに…!」


華蓮の両手を握りしめて感動していた。



「ありがとう!今も幸せだけど、もっと幸せになるね!ヒサオミちゃんは……えと……ケンと結婚する、の?」


見事な惚気っぷりを披露した華蓮は、ヒサオミに再び問いかける。

ヒサオミは顔を赤くし、隣のケンの顔をチラりと見ては華蓮に向き直る。



「結婚のことはよくわからないのですが……ケン様と共に生きていかなくては、とは思っています。魔力契約をしましたので…」


華蓮への魔力契約うんぬんの説明は、一応済ませているが100%理解しているかは謎だ。



「一刻も早く、魔力を全快させることが現時点での目標です」


ヒサオミは真剣な眼差しで、ケンと華蓮に伝える。



「そっか…じゃあしばらくヒサオミちゃんはケンと一緒に暮らすんたね?」


「はい。魔力回復までケン様にお世話になりたいのですが……よろしい、ですか?というか…お願いします、ケン様!魔力が全快するまで、私と毎日キスしてください!」


ヒサオミはそう言うと、ケンを見つめた。ケンは驚くが、華蓮がそれ以上に驚きの顔をした。



「ヒサオミちゃん…!女の子のキスは大事にしなきゃだよ…!ヒサオミちゃんみたいな可愛い子がケンに安売りしちゃダメだよ!」



「安売りって言うなっ!俺はな…ヒサオミのキスに責任を取るって決めたんだ!俺は、ヒサオミと、結婚するぞ!」


女性免疫の低いドドド童貞のケンは、キスに至る関係=結婚という価値観らしく、全く譲る気がなかった。










「女の子をお風呂にも入れないで寝かせるとか、ほんとなんなの?ケンって!」


華蓮は少し怒りながらケンに言った。

今、五十嵐家の風呂にはヒサオミが入浴している。そう、ヒサオミは異世界から転移してから身体がボロボロで、風呂にも入っていなかったのだ。


ヒサオミは日本の一般的な風呂場を見ては感動し、シャワーや蛇口を不思議そうに見ていた。どうやら、異世界では水の魔法を使って身体を洗うらしい。少しずつ、ヒサオミが異世界人であることが判明しつつあった。


ケンではなく、なぜか華蓮がシャワーの使い方を教えて、ヒサオミはそれに習って入浴している。


ケンはソファに座って「助けるのに必死で風呂のことなんて頭になかったぜ」などと言い訳をかます。


華蓮は、ヒサオミを入浴させたのは良いものの、服が無いことに気付いた。


「この家にあるのは…小さいし…そだ!私のおさがりでよかったら服持ってくるね!」


華蓮はそう言うと、五十嵐家から徒歩5分の自宅に一旦戻った。


風呂場、脱衣場、それを隔てた扉の前でぼんやり座るケン。ちゃぽん…ちゃぽん…と、湯船につかる音が聞こえてくる。時折、シャワーで身体を流す音も聞こえてきた。


「……」


扉2枚を隔てて、かわいい女の子(しかも、未来の嫁)が、裸で風呂に入っている。

こう、男子高校生特有の多感な時期には刺激が強いシチュエーションで…。

妄想が掻き立てられた。

ケンは結婚まで責任を取る程古風な考えの持ち主ではあったが、人並みにエッチなことに興味があったのだ。


(昨日、おっぱい触っちゃったな…)


ケンは自分の右手のひらを眺めては、手をグーパーさせて思い出す。

今まで女性の胸に触れた事がなかった。グラビアやAVで見るぐらいだった。もちろん、女友達の華蓮の胸に触れたこともない。


(女の子ってあんなに柔らかいのか…)


たった一瞬のハプニングではあったが、ラッキースケベには変わりない。17年間生きてきて初めて感じた優しい柔らかな感触を思い出しては余韻に浸る。


(今じゃこの扉の向こうで全裸で風呂入ってるんだよなあ……くう……)



ケンはますます妄想力を高めていく。

華奢なヒサオミの裸体は、きっと綺麗な曲線で美しいに違いない。

そこで、ケンはよくない方向に思考を働かせてしまう。


(ちょっとぐらい覗いても、いいよな?いや、でも、婚前に肌を晒すのは駄目か?いやでも、未来の嫁の肌を旦那が見る分には問題ないだろうし…)


好きになった女の子の裸体を拝むか拝まないかを悶々と考えていると、家の扉がバン!と開いた。


先程自宅に戻った華蓮が衣類を入れた袋を持って帰ってきたのだ。華蓮は靴を脱いで家に上がり、風呂場の近くまで行くと、ムッと顔をしかめた。


「ケン?そのニヤニヤ顔は一体何?」


「へ?華蓮、戻ったのか。別に?何も無いけど?」


ケンはあからさまに顔を背けケロッとしていたが華蓮にはお見通しだ。

だが敢えて怒ることもなく、華蓮は脱衣場のドアをゆっくり開けて入っていき、ケンを少し睨むとドアを閉めた。









無事、初めての現代日本での入浴を終えたヒサオミは風呂場から出る。すると、そこには袋を抱えた華蓮が待ち構えていた。


「きゃ!華蓮様!」


ヒサオミは生まれたままの姿をしていたため、とっさに胸や下腹部を隠そうとする。



「女の子同士だから大丈夫だよ。変なことはしないし。着替え、もってきたの。勇者の服だと、日本に馴染めないでしょ?」


華蓮はニコッと笑いかけ、衣類が入った袋を差し出した。

ヒサオミはバスタオルを胸から巻き、袋を受け取る。中を開けると、異世界では見たことも無い衣服が詰まれていた。華蓮の未使用の下着までもが入っている。


「おさがりで申し訳ないんだけど、こんなのでよかったらあげるよ。新しく服を買うまでの辛抱で、お願い!」


華蓮が両手を合わせて懇願する。そんな対応に、ヒサオミは顔を左右にブンブン振っては…


「そんな!そこまでしていただくわけには…」


謙虚なヒサオミは、受け取りを拒もうとするが華蓮は譲らない。



「遠慮しなくて大丈夫だよ!むしろ、着てくれないと私もケンも、他の人も困っちゃう」


勇者服で街中をウロウロするとなると、やはり注目を浴びてしまうだろう。

華蓮にここまで言われたヒサオミは、袋からゆっくり衣類を取り出していく。

シンプルなTシャツやホットパンツ、未使用のブラやショーツ、靴下。

初めて見る現代の下着に困惑しつつも、ヒサオミはショーツから身につけていく。


まじまじ眺めるわけにはいかないと思った華蓮は念の為後ろを向いておいた。



…のだが、ヒサオミから声がかかる。


「あの…華蓮様…これ、絶対、サイズ合わないのですが…」


「?」


疑問に思った華蓮が振り向くと、今起きている現象が一目でわかった。



ヒサオミが肩からストラップをかけ、背中でホックを閉じたブラ。

ヒサオミの胸の先端と、ブラカップに、………あまりにも空間が生まれていたのだった。


(し、しまった…)


華蓮は失念していた。決して、嫌がらせ等の気持ちは一切ない。

「ふたつのふくらみ」という胸のサイズのヒサオミに対し、華蓮の胸は「大きな双丘」だったのだ。


つまり……控えめサイズのヒサオミに、数カップ大きいサイズのブラを無意識で渡してしまったのだ。



「ご、ごめんなさい!うっかりして…わざとじゃないの、本当にごめんなさい…!」


華蓮は腰を折るように頭を下げ、涙目になって謝る。女子にとって、バストサイズは繊細に扱う必要があるのだ。


「い、いえ……いただけただけでも、ありがたい…ので……」


ヒサオミは、頭を下げる華蓮の胸元に目が行く。服の上からでもわかる大きな大きな膨らみ。



(すごい……魔法で大きく見せる人はたくさんいましたけど、魔法を使わずにこんなに大きいだなんて…!)


天然モノの爆乳を目の当たりにし、感動を覚えてしまうヒサオミだった。

大きな胸への嫉妬や妬みのような感情は、そこには無かった。



「ちゃんと、ヒサオミちゃんのサイズに合うブラ、買いに行こうね!」


「はい!華蓮様に、選んで欲しいです!」



華蓮はヒサオミの右手を握ると、笑顔になった。つられて、ヒサオミも笑顔になる。早くも、友情が芽生えた瞬間であった。








下着を身につけ(※ノーブラ)、大きめサイズの無地のTシャツに、短いホットパンツ、靴下を着用したヒサオミ。

華蓮に髪を乾かしてもらい、ようやくリラックスできた。


その一連の流れを見ていたケンは。


(なんか…あの二人仲良くね?)


女同士の友情が芽生えていることに気付いてモヤモヤしていた。



その後は、気分が良くなった華蓮が台所に立ち、昼食を作る。

肉じゃがにサラダ、味噌汁などがテーブルに並んだ。


ヒサオミにとって箸は初めて見るものだったらしく、持つのに苦戦する。フォークとスプーンは異世界でも使っていたらしく、それらを使ってどんどん食べていく。ひとくち食べては幸せな顔をし、華蓮は喜んだ。


ケンも「うまいな」と素直に褒めつつ、もぐもぐ食べていった。


円満に昼が過ぎようとしたところで、ヒサオミの手が止まる。


椅子に座っていたのが、ゆらりとよろめく…のを、ケンが腰を支えた。


「ヒサオミ!」


「ヒサオミちゃん!?」


急にグッタリするヒサオミに、驚きの声を上げる華蓮。



「ケン様……ください……」


ヒサオミは手の力が抜け、フォークを落とす。女の子の扱いに不慣れなケンだが、ヒサオミが意味していることに気付いた。


「キス、だな」


ケンは顔を赤くして、ヒサオミの目を見つめた。華蓮は、「えっ!?ほ、ほんとにしちゃうの!?」とパニック状態。


ケンは唇を前に突き出したが、そのまま固まってしまう。間近で見るほど綺麗すぎる顔が、近付いてくるのに緊張してしまったのだ。


ヒサオミはゆっくりと前に身を乗り出し、ケンの首の後ろに両手を回して、触れ合うような口付けを交わした。


今までのキスより浅く、軽かったが…。ケンとヒサオミの間にはピンクの光が浮かび、輝いた。


「ああああ~…!」


ほんとにキスしちゃうんだ、と恥ずかしそうに二人を眺めていた華蓮が声を漏らした。

華蓮自身、付き合っている彼氏と何十回もキスを交わしているが、他人のキスをまじまじと見る機会はそうそうなかった。



唇が離れると、光もふわりと消えていく。青ざめていたヒサオミの顔色も、みるみる良くなっていった。


「助かりました…」


ヒサオミは、魔力を回復させるとすぐさまケンから離れ、座り直す。



「華蓮に見られながらキスするのは、さすがに恥ずかしかったな…」



「見てるこっちも恥ずかしかったよ!」



ケンが照れ、華蓮も顔を真っ赤にして意見する。

そうして、ランチタイムが終わり、夕方から用事がある華蓮は帰宅していく。





再び、二人きりになったケンとヒサオミ。

ヒサオミは、華蓮が帰ったあと、ケンの部屋の本を読んでいた。

元の世界ではみたこともない不思議な本。

漫画だ。

書かれている日本語も、違和感なくすらすら読めるのは、異世界転移のご都合主義だろう。


ケンが持っている漫画は、勇者が魔王を倒す長編の冒険物語であった。



「魔王…」



ヒサオミはケンのベッドの上で漫画をパラパラとめくり、つぶやく。



「ちょっとは落ち着いてきたか?」


ケンがリビングから、マグカップを持ってやってきた。あたたかな湯気が立っている。ヒサオミのためにココアを入れてきたのだ。


ケンはマグカップを差し出すと、ヒサオミは礼を言って両手で受け取る。

熱を冷まして、ゆっくり飲んでいく。



「ありがとうございます。ケン様も、華蓮様も、お優しくて、私は幸せ者です」


ココアをひとくち飲んだヒサオミは、にっこりと笑顔を向けた。

特徴的な太い眉毛が穏やかになる。



「普通の人はさ、異世界がどうのって言われても信じねえと思う」


ケンがヒサオミの隣に腰掛ける。



「でも、俺、ヒサオミの言うこと、信じるよ」


「どうして…」


ヒサオミがマグカップを机に置き、両手を自分の太ももの上に乗せて言った。



「どうしても何も……だって、ヒサオミが言ったじゃんか。異世界から来た勇者だって。キスしたときの光?も魔法みたいだったし。ヒサオミが嘘つくとは思わないな」



「ですが……」



ヒサオミは下を向き、少し考え込む。



「私は…魔王に立ち向かった勇者。なのに…魔王撃破どころか、別の世界に飛ばされてしまうだなんて…。今頃元の世界は……レミュザードは、どうなっているのでしょうか…」



ヒサオミの思考回路がぐるぐると、マイナスな方向に傾く。ケンは右手でヒサオミの背中をぽんぽんと叩き、瞳を覗き込む。



「こうなっちまったもんは仕方ねえさ。俺もできる限りのことは協力する!だからさ、そんなに不安がるなよ。なるようにしかならないさ」



な?と、ケンが明るく振る舞う。

ヒサオミは瞳をうるませていたが、徐々に元気を取り戻した。


「ありがとうございます。ケン様に助けていただいて……良かった。魔力契約も…主がケン様で……良かった。」



ヒサオミがケンに向き直り、ぺこりとお辞儀をしたその時だった。



「!!あっ!」


ケンが素っ頓狂な声を出す。

声を出した原因は…そう。ヒサオミが着ている大きめサイズのTシャツは、首元が大きく開いており、屈むような姿勢になると………胸の小さな女性ならば先端まで見えてしまうわけで……



「?どうかされました?」


頭を上げ、元の姿勢に戻るヒサオミ。

先程から狼狽えているケンが不思議のようだった。



(な、な、なんでブラジャーしてないんだよ!?華蓮の奴…!って、そうか!華蓮がデカすぎてサイズ違ったのかそうかああああああああああ)



ケンは頭をブンブンと左右に振り、ヒサオミの両肩を正面から掴んだ。



「絶対、結婚しような!責任取るからよ…!」



罪悪感を覚えて焦りまくりのケンの様子に、ヒサオミは頭の上にハテナマークを浮かべたままになった。









簡単に作った晩御飯を食べ、入浴を終える。


現在、五十嵐家で清潔な布団があるのはケンの部屋だけだ。なので、今日もケンはヒサオミをケンのベッドで寝かせることにする。



「おやすみ。よく寝ろよ」


ケンがそう言い、自室から出ていこうとすると…


「ケン様、あのっ!」


ヒサオミが呼び止めた。


「夜のキス…していただけません、か?」


ヒサオミが布団の上にちょこんと座りながら、恥ずかしそうに言った。


「いえ、あの、眠っている最中に魔力切れを起こすとまずいので、念の為…」



「お、おう…そだな」


ケンは部屋の中に入り、ヒサオミに近付く。座っているヒサオミの顔に合わせて腰を屈め、顔を近付けた。


そこで、ケンの動きが止まる。何度もキスをしているのに、キスをする寸前にケンは毎回緊張して固まるのだ。

その時、ヒサオミは真正面からケンの顔を両手で包むように支え、自分の顔を近付けていく。


軽く目を閉じ、自分とケンの唇を合わせた。軽い、表面だけのキスだった。

すると、いつものように2人のあいだにピンクの光が芽生えては、消えていく。



ヒサオミの顔色は良くなり、顔と顔が離れた。



「魔力補給…完了です。ありがとうございます」



ヒサオミはにこりと笑った。ケンはまだキスに慣れず、顔を赤くしていた。



「ゆ、ゆっくり寝ろよな…」



ケンは照れていることを誤魔化すようにそう言いながら、部屋から出て扉を閉めようとしたその時だった。


「ケン様……私のことは、好きにならなくて大丈夫ですから…」



ヒサオミが何かをつぶやいたが、よく聞こえなかった。


五十嵐家の土曜が、終わりを迎える…。



第2話:爆乳幼なじみ(恋愛感情ゼロ)






華蓮は彼氏持ちのサブキャラなので主人公とフラグが立つことはありません。

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