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11話:クールなヒサオミさん

昼休みが終わる間際。

ケンがどうにか2-Aの教室近くまで戻ったところで、ふと目に入った人物がいた。

茶髪のサイドテールが特徴的の…幼馴染、華蓮だ。たまたま居合わせた様子ではなく、そわそわとケンを待ちわびていた様子。


「ケン!遅かったね!はやく!」


華蓮が呼びかけると、ケンはうなずいて、すぐさま教室の入口へ。

すると、入口にもたれかかるようにヒサオミがぐったりしていた。クラスメイトの佐々木ユイが下敷きで扇ぎ、介抱している。


「ヒサオミ、待たせてごめんな…」


ケンは声をかけ、ヒサオミの右手を取る。ヒサオミは意識を朦朧とさせつつも、足を1歩動かした。


「はあ…ケン様……ご無事…でしたか…?はあ……はあ…」


息づかいも荒く、ヒサオミが声を発する。ユイが「あの、ふたりとも!死角になるとこで…」と声をかけると、ケンはうなずく。


ケンはヒサオミの腰に腕を回し、支えるように廊下を歩く。

華蓮とユイはそれを見届け、そのまま教室に入っていった。1分ほど経つと、廊下でピンク色の光が輝いた。





ヒサオミの魔力が回復し、午後の授業も乗り越えたところで。

さて帰宅しよう、と思ったケンだったが、華蓮に呼び止められる。


「どうしたんだよ。テニス部の応援行かなくていいのか?」


「行くよ?行くに決まってるでしょっ!?それより、それよりね?」


華蓮は自分のスマホ(ロック画面はもちろん彼氏の写真だ)をケンに見せる。


「次の土曜日、部長と遊園地行く予定だったんだけど、部長が急遽練習試合入って無理になっちゃって……チケットもらってくれないかな?返金できないんだよー!」


その遊園地のチケットはデジタルチケットらしく、公式で譲渡機能があった。枚数は2枚分だ。


「久しぶりにガッツリゲームしようと思ったんだけどなあ…」


ケンは頭をかきながらそう言う。


「ヒサオミちゃんと行けばいいんだよ!」


そう言われると、ハッとするケン。


「そうか!そうだな!って…デートになるわけか!?うおーっ!楽しみだ!しかもタダでいいんだよな?」


「うん。こっちから無理矢理渡す感じだし、お代はいらないよ!」


「よっしゃ!ヒサオミ!次の土曜日は遊園地に………ヒサオミ?」


着々と遊園地デートが決まりつつある中、ヒサオミは自分の席に座ったままだ。なんとなく、ボーッとしている。


華蓮がヒサオミの顔の前で手をヒラヒラさせた。


「ヒサオミちゃーん!大丈夫?」


「………っ!華蓮様…はい。どうかしましたか?」


ヒサオミがいつも通りの元気な表情を見せた。ケンは少し不安に思ったが、平常心を保つことにした。


「ヒサオミ、次の土曜日さ、俺とふたりで遊園地行こうぜ。遊園地、はじめてだろ?楽しいぞ!」


ケンがニカッと歯を見せて笑う。しかし、反してヒサオミは。


「…アトリ様と行かれてはどうですか?」


「え」


ヒサオミは学生鞄を肩にかけ、席を立つ。


「ケン様、アトリ様の……彼氏…なんですよね。でしたら、彼女の傍に…」


「そんなわけないだろ!!!俺の彼女、そして嫁はヒサオミだけだ!」


「いえ…私に……恋しなくて……良いですから…」


「なんだよそれ!キスはせがむくせに!なんだよなんだよ!俺の事嫌いなのかよ!」


「違います!ケン様のことは…今までと変わりません…でも…私に恋は、しないでほし」


ふたりのいざこざを聞いていた華蓮が「わ~~~!」と声を発した。



「だめだめ!ふたりとも!そーいうのよくないから!とにかく遊園地、行ってきてね!はい、チケット譲渡ボタン押すよー」


華蓮はスマホを操作し、ケンのスマホにチケットを譲渡した。

これでケンは2人分の遊園地チケットを手に入れたことになる。


「サンキュな、華蓮」


「んーん。こちらこそありがとう!じゃ、テニス部行ってくるから!」


華蓮はくるりと身を翻し、ぱたぱたと走って去っていった。

その様子を見ていたユイが声をかけてくる。


「遊園地デート、楽しんでね!ヒサちゃん!」


ユイも、続けて教室を去る。

大山小山は用事があったのかさっさと帰宅していた。


「ヒサオミ、帰るぞ」

「……はい」


ケンとヒサオミも教室を出て、ゆっくり下校していく。

…二人の距離はわずかに開いたまま。




帰宅後。

制服から私服に着替えたり、宿題をしたり。

ケンはソシャゲのデイリーを消化し、素材集めを行ったり。


いつものように時間が過ぎて行った、が…


「明日、普通ゴミの日ですよね。明日の朝、出しておきます」


「そうだった。ありがとう」


ヒサオミは端的なことしか言わなかった。日々のなんでもない雑談をしなかった。

完全無視ではない、事務的対応…。


「お夕飯、野菜炒めでよろしいですか?」


「俺が作るよ」


「そうですか。では、お願いします」



ヒサオミは顔色変えず、そう言うとリビングを去る。

…どうやらふたりきりにはなりたくないらしい。


ケンは冷蔵庫に入れてある適当な野菜と肉を取り出して、適当なサイズに切る作業をしながらも上の空だ。


(ヒサオミ……どうしてそんな素っ気ないんだ……!)


ケンのモヤモヤが沢山乗った野菜炒めは、焦げが多くて美味しいとは言えない出来になった。

しかし、ヒサオミは全て食べきり「ごちそうさまでした」と手を合わせていた。


「お風呂は……ケン様が晩御飯を担当されたのでお先にどうぞ」


ずっとこの手の反応が続き、且つ、定期的な魔力補給のためのキスも1秒に満たないものだった。



最低限の会話をして、日々が過ぎていく。

(ちなみにケンは、毎日アトリルームで強制的に昼食を摂った)


そして、デート当日の土曜日がやってきた…!



11話:クールなヒサオミさん



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