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王都混乱編 裏切る者


 魔族の使節団との会談の後、人族はその会談の内容を国民に伏せることにしていた。

 

「筆頭! 魔族の襲撃です!」


そうして国民に魔族と決裂したことが知れ渡るのは、魔族が王国に攻めてきた時であった。


〜〜〜〜〜〜


 フーリゲットの襲撃から1週間。王国は混乱を極めていた。勇者率いる魔族討伐派と聖騎士率いる和平交渉派が衝突。聖騎士は勇者及び魔族討伐派の人間を殺害する訳にも行かず、日々負傷者が増えていった。僕たちは学園が臨時休校となり、寮から出るのも必要最低限にするよう連絡があった。ナスメアとマルキスは時々連絡を取りあっているけれども、アルスはあの日から連絡がつかないままだし……心配ではあるけれども連絡手段が無いんだよなぁ。


「シエル、居る?」


 おっと? マルキスか? 何の用だ


「今開けるから少し待ってくれ」


 扉を開けるとそこにはマルキスと、大怪我を負ったアルスがいた。まるで何か大きな生き物に引っ掻かれたような傷を負ったアルスが


「何があったんだ?」

「分からない。でも学園の近くで倒れていたのを見つけて」

「そうか。とりあえず回復魔法はかけておこう。ナスメアにこの部屋に来るように伝えてくれるか? 治癒系魔法なら彼女が得意なはずだから」

「分かった!」


 かなり不自然な傷だな……引っ掻かたような傷に見えるけど……なんというか模様にも見えなくは無いというか。とりあえず簡易的な回復魔法は掛けたけど傷が治る気配は無いし、普通の怪我では無いな……これ


「シエル、邪魔するぞ」

「兄様? どうしました?」


 扉を開けて部屋に入ってきたのはトリグス兄様だった。兄様が僕の部屋に来るなんて入学当初に数回以来だ


「いや、ちょっと気になることがあってな」

「と言いますと?」

「ちょうどそこにいる友人くんなんだが……」


 アルスがどうかしたのか? 兄様があんな顔するなんて中々ないぞ?


「そこの友人くん……恐らくだが……」

「アルスがどうしたのですか?」

「その……」

「お兄様、鋭いですね」

「アルス!? 大丈夫なのか!」

「シエルくん……あぁ。大丈夫だよ」

「良かったよ。何があったんだ? 祭りの日も来なかったし」

「それなんだけど……お兄様は気が付いているみたいだけどね……僕は人族では無いんだよ」


 は? いやいや! だってアルス……魔族なら角やら翼やら生えてて人とは明らかに見た目の違う部分があるはずだろ? アルスが人族じゃない?


「は……ははっ! 冗談のつもりか? アルスのキャラじゃないだろ? あんまり面白くねぇからその冗談はもうやめておけよ?」

「冗談じゃないよシエルくん。今まで騙すようなことしちゃっててごめんね?」

「やめろよ……」

「僕は」

「やめてくれよ……」

「半人魔連合の組員だよ」

「やめろよッ!」


 嘘だろ……嘘だと言ってくれよ……アルスが、アルスが王都を襲ったやつの仲間? そんな訳ないだろ……


「お前が……お前も今回の王都襲撃に関わってるのか?」

「うん」

「……」

「シエルくん」

「うるさい……」


 そんな訳ないじゃん……だってあのアルスだぞ? いつも穏やかなちょっと頼りなさそうなイメージのあるアルスだぞ? そんなわけ


「アルス……お前は今後も人間と対立するのか? 僕達と一緒にいた間もそうやって考えてたのか? 僕たちとの友情は嘘だったって言うのか?」

「シエルくん」

「僕の質問に答えろよ!」

「シエル、落ち着け。そんなに捲し立てたって」

「兄様は少し黙っててくださいよ! 僕はこの裏切り者がどう思っていたのかを聞きたいんだ! なぁ! アルス! どうなんだよ!」


「僕は……最初から君達と……いや、そうだね。僕は最初から君たちを裏切るつもりだったよ」


「そうかよ……だったら今ここで消滅させてやるッ!」

「シエルッ! いい加減にしろ!」


 そう言って兄様が拘束魔法を放ってきた。その程度で僕を拘束出来ると思うなよ!


「なっ!? シエルッ!?」

「兄様ッ! その魔族を庇うおつもりですかッ!? それなら僕は兄様だろうが許しませんよ……そこをどいてください。ソイツは人に害なす魔族ですよ! 早くどいてください!」

「良いから一旦落ち着け!」

「落ち着けるわけないじゃないですか! それとも何ですか! 兄様も魔族に与するんですか!? ふざけないで下さいよ!」


 許さない……許さないよアルス! 僕はッ! 僕は友達だと思ってたんだぞ!


「どいてください兄様!」


 僕の足元に魔法陣が現れる。兄様はまだ僕を拘束しようとするのか? 何でだ? 僕は人類に害なす魔族を討伐しようとしているだけなんだぞ?


「シエル……すまん。でも一旦落ち着くためにもッ! リープ!」

「その魔法陣を破棄する! グッエル・ブランクス!」


 兄様の魔法陣は霧散する。兄様は確かに魔法の腕前は凄いよ……でも僕の魔力量でねじ伏せれる!


「シエルッ! 辞めるんだ!」

「煩い! 魔族は消滅させてやるんだ!」


 その瞬間扉が開かれる


「シエル! ナスメア連れて……きた……よ」

「何してるの! シエル! その魔法誰に放つつもりなのよ!」

「ちょうどいいところに来たね……そこの裏切り者を殺すんだよ。僕たちを裏切った魔族をな!」

「何言ってるのか分からないよ! アルスが魔族!?」

「君たち! 弟を抑えてくれ! アルス君でいいんだよな? 早く逃げるんだ! 今の弟は多分本気で君を殺そうとしている! 君にもなにか事情があるんだろ! 今はとりあえず逃げてくれ!」

「お前らも……そいつの味方をするのか? それなら纏めて……」


 パァン!


「は? 何するん……」

「アンタいい加減にしなさいよ!」

「ナスメアッ! そいつは魔族なんだよ! 今回の事件の首謀者の1人なんだよ!」

「皆……ごめんね」

「待てやッ! ふざけんな! そいつを止めろ!」

「パムジ」

「逃げるんじゃねぇぇぇ!!!」


〜〜〜〜〜〜


 アルスには逃げられた……どいつもこいつも僕の邪魔をする。どうしてだよ……アイツは人間を襲ったんだぞ? 罪のない王都の人間を……何でだよ


「シエル……詳しく話を教えてくれるかい?」

「そうよ……アルスが魔族だなんておかしい話じゃない」

「うるさいよ……お前達はあいつの味方なんだろ? 勝手にすればいいじゃないか」

「あのなぁ? シエル。僕はシエル達の普段を知らないけど、魔体祭の時のシエル達はすごく楽しそうだったし、彼もすごくイキイキしてたじゃないか。少なからず悪い感じはしなかったはずだよ」

「でもアイツは魔族だったんだよ。僕たちを襲ったんだ。それは裏切りじゃないか」

「彼にも彼の事情があるんだろう。それを聞かないで頭ごなしに否定するもんじゃないよ」


 そんなこと言ったって……アルスは魔族だったんだから……それも王都襲撃の際の反人魔連合のメンバーだったんだぞ。許せるはずがないだろ……どうしたらいいんだよ僕は……

読者の皆さん!こんにちは!ご覧いただきありがとうございます! 皆様そろそろ40話となります! 皆様のブクマ、高評価が励みになっております! 皆様是非!よろしくお願いします!

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