王都襲撃編 人魔衝突
それから王都は混乱の世に突入した。過激な国民が魔族を討伐すべきと暴動を始め、騎士たちはその制圧に駆り出された。魔族は魔大国へ送還されることになり、王国からは魔族が大幅に減ることとなった。それでも王国に残った魔族は、王国と魔大国の橋渡しとして、国交が断絶してしまわないようにと、自分たちで残ることを決めた魔族たちであった。王国は魔族狩りを禁止したが、魔族狩りの筆頭、今代の勇者、ミラゲル率いる魔族討伐隊はそんな王国の命令を無視して魔族狩りを続けていた。既に少なくない数の魔族が犠牲となり、魔大国でも王国に対する反感は強くなっていった。
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「此度の件の説明を詳しく願いたいものですな? 我が国民を危険に晒すなど言語道断。どのように責任を取るおつもりで?」
「大変申し訳なく思っております。我々もまさか」
「言い訳が聞きたい訳では無いのです。聞くところによれば未だ鎮圧も出来ておらず、今こうしている間にも危険にさらされている国民がいると聞きますが? 既に犠牲となった国民もいるではありませんか。魔王、ラーデンマーク様もお怒りになられております」
「我々の力不足故、此度のような出来事を起こしてしまい大変申し訳ございません。現在聖騎士を筆頭に暴徒鎮圧を行っております。現在王都に滞在している魔族の皆様はほぼ全員保護しており、現在不明者について捜査を行っております」
「そもそも貴国の勇者が今回の首謀者であるとお聞きしましたが? 勇者なぞ古い考え方は捨てておくべきであったのでは無いですか? 無駄な正義感だけで行動する冒険者崩れなど」
「確かに今回の首謀者は勇者ミラゲルでございます。しかし、我が国の伝統として冒険者の中でも、より武勲を上げたものに勇者の称号を与えるというものがあります。これは過去人族と魔族の対立を解消した立役者たる勇者を称えるためであり」
「その勇者がまた我々魔族との軋轢を生もうとしているのだ!」
「そもそも事の発端は魔族の襲撃が原因でしょう!」
「アレは既に自分たちの団体を作り上げていると調査結果が出ている! 我々の国民では無い!」
「それでも魔族では無いか! 魔族の襲撃によって我が王国民も少なくない人数が犠牲となっているのだ! それについては何も言われず! 我々にのみ責任を押し付けようとするのは間違えているとは思わないのか!」
「ですから先程からも言っている通りあの者は我が魔大国の国民では無い! 良いですか? 我々は魔族という大きな括りでいつも話が進められますが! 我々魔族もいくつもの国があるのです!」
「しかしそれらをまとめている盟主は魔大国では無いか! それであるなら魔族の問題は魔大国に請求するのが妥当では無いのか!?」
「……私は今この場に魔王様より直々に全権を頂いてここに来ております……それは王国の総意で宜しいのですな?」
「あぁ! お前たち魔族の襲撃が今回の事件の発端である! これは国王及び我が国の総意である!」
両国の使節団も段々と険悪な空気になっていく。そして遂に放たれてはならない一言が魔族側の使節団より放たれた
「それであれば……我が魔大国はノリタス王国との国交を断絶し、宣戦を布告する!」
そうして国民達は数百年ぶりの魔族、人族の戦争へ巻き込まれていくこととなった。それも国民に知らされるのは初めて魔大国の軍が攻めてきてからであった。
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