王都混乱編 対を成すもの
あいつは……あの勇者はきっとこの王都に混乱をもらたすものだ
「勇者様、流石に独断が過ぎますぞ。あの魔族の行動も魔族全体の意思では無いはずですし、王国もまだ例の魔族の対応をどうするか決まっておりませぬ」
「ハッ! だから王国の発表を待てと? 聖騎士様がそんなだから! 魔族にナメられてこんなことになっているのではないか? 今回の襲撃で罪のない人が犠牲になったのだぞ? 王国としては一刻も早く魔族の討伐を決定すべきだと思いますが?」
あの勇者は恐らく魔族に並々ならぬ憎しみを持っている。そこに運悪くフーリゲットが現れてしまった。勇者の過去に何があったのかは知らないが、今の王国で魔族討伐なんて許可したら……でも勇者とは1人で国ひとつに相当する権力を持っている。あの勇者が強硬手段に出ないとも限らない。 そうなったらいよいよ王都は分裂する。
「勇者様。その考えは短絡的と言わざるを得ませぬ。確かに犠牲は出てしまいました。しかしそれだけを理由にまた魔族と敵対するのは……過去を繰り返すだけでございます。それは現国王様及び、我ら聖騎士は望まぬ事です」
「つまり国民のことはどうでも良い、と? そんな考えなのですか? 聖騎士筆頭様?」
「そういう訳ではございませんが」
「いえ、僕の耳にはそう聞こえました。それに今ここに集まっている国民の皆様はきっと魔族討伐に賛成だと思いますが? ねぇ皆さん」
「「そうだ! 魔族は殺せッ! 勇者様の言う通り!」」
「ほら……ね?」
不味いな。民衆は勇者に着いてしまっている。このままだと王国の意志関係なく無意味な魔族狩りが始まってしまうかもしれない……
「ねぇシエル? アナタはどうするべきだと思っているの?」
「うん? 僕は……魔族狩りには反対だよ。今の王国は人類側の国で初めて魔族との共存を可能にした国だ。魔族との交流も多くあるし、平和の象徴だとしているのだから」
「そう……シエルがそう言うなら間違いないわね」
「えっ?」
「そうだねぇ。僕も? 元々魔族狩りなんて反対だったけどねぇ?」
「マルキス……」
「ハッハッハ! シエル! ちゃんと周りを見ることの出来る友達を持ってよかったな! それと君たち、確かに弟は優秀だが間違えることもある。その時は君達が止めてやってくれよ?」
「あっ! えっと……はい! トリグス様!」
「様なんてよそよそしい言い方しなくていいよ。君たちはシエルの友達なんだしね」
「はっはい! それじゃトリグスさん」
〜〜〜〜〜〜
「フーリゲット……王都の襲撃はどうだったのだ?」
「ハッ! 総統様。王都襲撃では多くの被害を出すことは出来ませんでした」
「何故だ? あの魔鬼は魔神鬼への素質も持っていただろう?」
「それが……」
「聖騎士か? それとも勇者が出てきたのか?」
「いえ、聖騎士は出て来ましたが戦力としては拮抗しておりました。しかし」
「なんだ?」
「戦闘中、聖騎士共の他に伏兵がいたようで、爆砕魔法によって魔鬼は消滅しました」
爆砕魔法で……?そんな馬鹿な。アレは魔法耐性も上がっているはずなのだぞ? それを魔法で?
「その報告は正確なのだろうな?」
「はい。私がこの目でハッキリと確認致しました。それと、魔鬼が消滅した後勇者が現れまして……我ら魔族を討伐すると息巻いておりました」
「何を勝手な……ふざけるな……フザケルナ……お前が……先にやったんだろうが……」
「アルフレッド! 落ち着きたまえ!」
「お前がァ!」
「リープ!」
「危なかった……今のがアルフレッドの怒りの力か……確かに強力な力だな」
しかし……魔鬼を消滅させられるだけの魔法を放てる戦力が王国には居るのか。それは調べないと今後の我らの目的遂行の邪魔になるだろうな。
「フーリゲット。魔鬼を消滅させたという人間の調査を頼めるか?」
「了解しました」
「よろしく頼むぞ」
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