学園生活夏休み編 魔鬼撃退
勝った……勝てたんだ……
「勝てたぁぁぁ!!!」
「よくやったシエル! 天才だよ我が弟は!」
「兄様! 勝てましたぁぁぁ!!!」
「あぁ! 良くやった! 良くやってくれたよシエル!」
でもやっぱりかなり魔力を消費したっぽい……僕は生まれて初めて魔力酔いを起こしていた。それでも魔鬼相手に兄様と一緒に戦って勝てたというのはとても嬉しいことだった。魔法陣の構築速度や精度では兄様にはやはり叶わないものの魔力量による火力のゴリ押しなら勝てる。正直魔法使いとしてそんな勝ち方は美しくないのかもしれないけれども、それでも兄様に勝てた実績は作れたんだ!
「ちょっと! シエルたち大丈夫なの!? なんかすごい魔法が飛んで行ったみたいだけども……」
「あぁ、大丈夫だよナスメア。魔力酔いしちゃったけど……魔鬼は討伐できたから」
「えっ!? シエルが魔鬼を? 討伐した?」
「なんだよマルキス。そんなに信じられないか? まぁ僕だけじゃなくて兄様のおかげでもあるけどね」
「いやいや。シエルがあんなぶっ飛んだ魔法を使えなかったら厳しかったよ。最悪僕一人でもどうにかするつもりだったけどもシエルを連れてきて正解だったね!」
そんなこんなで討伐成功を喜びあっていた時
「この学校の屋上から爆砕魔法を発動した形跡がある! 発動したものは出てきたまえ!」
聖騎士さんからのお呼び出しがあった
〜〜〜〜〜〜
「確かに君たちが発動した証拠はあるな……間違いないのか。しかし学生だぞ? そんなわけ……いやでも」
とりあえず全て正直に話した。嘘ついてもしょうがないし悪いことした訳でもないしね? でもなんかすごぉく困った顔をしてるんだよね聖騎士さんたち。リーダーっぽい人はさっき僕たちがやったって報告を上の人にしてたんだろうけど信じて貰えなかったみたいで向こうでいじけてるんだけど……聖騎士それでいいのか?
「まぁとりあえず君たちが悪意なく、善意で助けてくれたことは事実だろう。感謝する。だが、街の中で爆砕魔法を放つなんて何を考えているのだ! 民間人に被害が出たらどうするつもりだったのだ!?」
「その件に関しましては大変申し訳ないと思っております。ただ、あの魔鬼は魔神鬼への進化の土台は完成していたと思われます。王国騎士でも歯が立たず、聖騎士の皆様ですら苦戦していたほどですから。戦闘が長引けば魔神鬼への進化を許していた可能性すらあります。その場合被害は更に拡大する可能性があると考え、最大火力で一気にカタをつけるのが妥当と判断致しました」
えっ? 嘘じゃん。絶対でけぇ魔物がいる! 魔法の実験台に丁度いいじゃん! 程度にしか考えてなかったじゃん。兄様がそこまで考えて魔法を放つとは思えないもん。知ってます? 兄様は1に魔法、2に魔法、3.4に魔法で5に魔法っていう人ですよ? 魔法耐性がありそうな魔物、魔法の標的にしやすそうな魔物、そんなもの見た日には撃たずには居られない! って本気で言う人ですよ?
「そうか……そこまで考えていたとは。済まなかった」
聖騎士さん!? 考えてないってば! 兄様! 早くこの口封じの魔法解いてください! はぁやぁく! あっコラ! こっち見たじゃん! 余計なこと言いそうだなぁって顔してたじゃん!
「あっあー! 聞こえるかな? 人間諸君。我はフーリゲット! 人類と魔族に反抗するものである! 人類と魔族が手を取り合って平和な世界をなんてくだらん幻想をぶち壊すために! 我々はここに新たな世界を創造することを宣言するッ!」
それだけを言い残してフーリゲットを名乗った男は消えた。我々と言っていたところを見るに恐らく既にそれなりに人数は集めているのだろう。それを聞いた瞬間周りはパニックに陥っていた。当たり前だろう。なにせ自分たちが死にかけたのは魔族の手によるものだと知ってしまったのだから。自然発生した魔物であるならば時々ある話だが、明確な悪意を持って狙われたのだから。
「皆様落ち着いてください! 落ち着いて!」
聖騎士さんの呼び声虚しくパニックは広がっていく。そして最悪なことにこの場には魔族も人族も一緒に避難してきていた。両者が互いに疑心暗鬼になっていく。
「このままパニックが伝播していけば、恐らくあのフーリゲットとか言うやつの思いどおりになってしまうな」
その通りだろう。今回わざわざ襲撃に失敗したのに民衆の前に現れたのはきっとこの状況を作るためだったのだろう……どうにかしないとこのままでは王国が分裂してしまう。何か……何か一発民衆を掌握できる何かがあればっ!
「少し遅れてしまったが……おやおや。大分大事になっているみたいじゃあ無いかぁ。よし! 皆さん! こんにちはぁ! 勇者です!」
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