7話 異様な訪問者ー01
「それで?」
「それでって?何がさ、栞」
僕がそう答えると、栞は欧米人のようなオーバーリアクションをした。
額に右手をあてて、溜め息を大きく一つ吐いたのである。
呆れられるのはもはやいつもの事なのだが、ここまでやって見せるという事は、本気で呆れているという事をアピールしたいのだろう。うん、きっとそうだ。そんな事ばかり理解出来ても意味がないのだが。
「それだけの会話で、君は彼女を信用して家にあげたのかい?」
「………いや、だってさあ―――」
だってとは言ったもの、確かに少し迂闊だったかもしれない。ドアを開けるまでは自分でも呆れるほどに慎重になっていたのに、扉を開けた途端――というより訪問者の姿を確認した途端……それも違うか、彼女と話している内にだんだん――何だか気が抜けてしまったのだ。
「だって?」
ちら、とドアを見る。今彼女はトイレに行っている。訪問して直ぐにトイレを借りるというのは些か疑問なのだけど。まぁそのお陰でこうして栞と相談できているのだからよしとしよう。まだ帰ってくる様子はない。それでも僕は声が大きくならないように続ける。
「――そんなに危なそうな子には見えないし」
「……君はもっと慎重な人間だと思ったんだけどね」
「うん、僕もそう思うよ。見た目で判断してはいけないとも思ってたんだけど、話している内になんだか気が抜けてきちゃって」
「……彼女がかわいいからかい?」
「うん?」
いや、まあ、かわいいかかわいくないかで言ったら、間違いなくかわいい部類に入るだろうけども。
「いや、そういう事じゃなくて」
「まあいいよそれは。冗談だ。私が懸念しているのはそんな事じゃない。よく考えてみろ、何故彼女はこの家の場所を知っている?」
「……?ホームページ見たからだろ?」
「君は本物の馬鹿か?」
随分な言われようだった。僕が答えを導き出すのを待たずに栞は続けた。
「あのね茉莉君。私も君が作ったホームページを見てみたんだが―――まあ出来栄えについてはあとから議論するとしても―――住所は書いてなかったように思うんだが。それとも私の見た後に書き足したのかい?」
そういえば。連絡先は書いたが、住所は書いていない。連絡先も僕の携帯の番号だ。
家の番号を書いたのなら、それを調べて辿ってくる可能性もあるが、携帯ではそれも不可能だろう。
「やっと分かったみたいだね。今この状況で現れる依頼者の異様さが」
栞がそう僕に諭すように言ったのと同時に、リビングのドアがガチャリと開いた。