5話 ある夜の風景ー02
………どうしよう。
まずは覗き穴から姿を確認するのがいいだろうか。
玄関に着いたはいいものの、僕はまだ扉を開けられずにもたもたしていた。
「………」
自分でも用心しすぎな気もするが、覗き窓に先に手を翳す事にした。
覗こうとした途端に目を突かれたら洒落にならない。
この覗き窓が強化ガラスで出来ているのだとしても、相手がどんな【能力】を持っているか分かったものではないのだ。
ある程度の痛みを覚悟したが、当然のように何も起こらなかった。
ぴんぽーん
と更に呼び出し音が重なった。意外としつこいな。いないとは思わないのだろうか。隣人とかならもう諦めてもいいと思うのだが。やっぱり普通の人ではないのだろうか。
おそるおそる、外を見る。
「……………ん?」
一瞬気を抜きそうになった自分を叱咤する。相手を外見で判断してはいけない。
扉の外では、どこかの学校の制服を着た女の子が、困った様な顔で呼び鈴を見つめていた。
ますます意味が分からない。家を間違っているんじゃないか?
ご近所さんだとしても、制服くらいは着替えてくるだろう。
ぴんぽーん
と再びの音。制服の女の子はおかしいな、とでも言いたげに首を傾げている。
その様子は、居る事を確信しているように見えた。
このまま一人で悩んでいてもらちが明かない。僕は多少の危険を犯してでも、ドアを開けてみる事にした。