18話 謎の視線?-02
長らく更新せずにすみませんでした。
今は【世界の狂う重さ】の方を直しているので、こちらはもう少し遅れるかもしれません。実に申し訳なく思います。
【世界の狂う重さ(追加改悪版)】は、ほぼ書き直しくらいの勢いですので、その間よければそちらをお楽しみ下さい。
見られているような気は、別にしなかった。
改めて思い出してみて、例えあの時気を抜いて、あるいは逸らしていたとしても、
何かを見つけようとしていたのだから、それでもある程度は張り詰めていた。ように思う。
――何度考えてもやっぱり結論は、
「……特に見られていた記憶はなかった」
に落ち着く。
「……そうか。だとすると……ああもうやれやれ実にめんどくさい事になって来そうだな」
「めんどくさい?」
「そうだよ。実にめんどくさい事、だ」
「……ごめん。よく分からないんだけど」
「…………まあその方が君らしいね。その前に片付けておくと、君が気配を感じなかったという事は、大きく分けて三つの可能性がある」
「三つ?」
「君の【能力】のせいで、その監視していた人物の隠匿【いんとく】性が高まってしまった、という可能性がまず一つある。これはあくまでも私の予想の域を出ないんだが、多分君は【能力者】と会えばそれと分かると思うよ。分からなくても、何となく他の人と違うと感じる筈だ。まああくまでも私の観察してきて出した一つの予想ではあるんだけれど」
「そうかな?」
自分では別に意識していなかったから、分からなかった。でも文字通り短く無い時間僕の事を「観察」してきた栞が言うのだから、そうなのかもしれない。
「そうだよ。そんな必要以上に敏感な君だから、もし【能力】を使って監視されたりすれば、気付く筈なんだ。まだその【能力者】が持っていなかった余計な部分を君が引き出したりしていない限りは」
そんな事を言われても知らない。僕は何もしていないのだから。
「二つ目は、私たちだけを監視していた可能性だ。私は別に感覚が強化される訳ではないから、私が気付いたという事は、君によって強化されているという一つ目の説は薄いかもしれない」
監視はされていたのか。というか栞はそう思っているらしい。
「で、三つ目は?」
「うん」
「いやうんじゃなくて」
「一つ聞くけど、君からみて私は可愛い部類に入るのかい?」
「はあ?」
何をいきなり。新手の自慢か? 自画自賛か?
「どちらかと言えば、でいいんだ。どちらかと言えばかわいい方かい?」
「そうだね。どちらかと言えば」
割と真剣に悩んでいるらしかったので、正直に答えた。
否、正直ではない。正直に言えば、とても可愛い部類に入ると思う。
「まあ君がそういうのなら、少なくとも外見はそうなのだろう。という事は、一番避けたい可能性の芽が大きくなってきた」
「だから何なのさ、その三番目って」
「どうやらあの水木君とかいう男は、私の事が好きらしい」
そうかもしれない。あれだけ積極的に向こうから話しかけているのだから、まあほぼ間違いないだろう。知らないけど。
「だから?」
「うん、だからね、三番目の可能性とは、普通の人間が私を監視していたという可能性だ。それなら君が間抜けにも気付かなくても当たり前だし、その場合、監視というよりも尾行と言った方が正しいかもね」
と、栞は普段と何ら変わらぬ様子でそう言った。