15話 探索一日目ー02
「で、でもさ。全然そんな風に見えなかったよ?どちらかというと和田君がみんなを避けていたような」
「君はやっぱり馬鹿だな。なんで嫌っている相手に好かれる必要があるんだい?嫌いたいやつには嫌わせておけばいいんだ。………私が見た所、君は水木の事が嫌いだろう?」
「そんな事は………会ったばっかりだし………なんとも言えないよ」
「………前から言うべきだと思っていたんだが、君はいささかお人よし過ぎる。悪く言えば、誰からも嫌われたくないんだ。だから基本的に誰も嫌いたくない。そうだろう?」
「………わざわざ悪く言い直す必要がどこにあるのか分からないけれど。……………。………確かに、僕は誰も嫌いたくないし、誰からも嫌われたくないかもしれない。でもそれは―――」
それは何だろう?その後に続く言葉が、直ぐには浮かんで来なかった。もしかすると、栞の言う通りなのかもしれない。
言葉に詰まった僕を、観察するように眺め、栞はクラスで振りまいている、あの僕から見ると気持ち悪い笑顔を作り、続きを促す。
「それは?」
「………それは。………………その」
「ふふふ。まあそれは今はいいよ。でも茉莉君。その事に対する君なりの「答え」は出しておいた方がいい。それで湊渡君。水木君はクラスで好かれているかい?」
「えぇ~!?とぉ~それはぁ~んん~?」
急に話を振られて、湊渡さんはどぎまぎしながら考えている。
「そんなに難しく考える必要はないんだ。なんとなく、雰囲気で言ってくれればいい」
「ん~どうだろう~」
「言っておくけど、人が周りにたくさんいるからといって、それがすなわち好かれている事にはならないからね」
「ん~、好かれて、いや、ん~、難しいなぁ~」
「なら君はどうなんだい?」
「私は~、好きではないかな~、でも別に嫌いでもないから~」
後の嫌いではないというのは、慌てて付け加えたようにも見えた。ここが学校の廊下だという事をふと思い出したようだ。放課後とはいえ、こんな場所では誰の耳があるか分からない。栞はちゃんとその辺分かっているのだろうか。
「まあそんな所だろう。ああいうタイプは、味方と同じくらいの敵を作るからね」
「ちょっと待ってよ栞。何だか話が逸れてないか?和田君がいじめられてるっていうのはどういう事なんだ湊渡さん?」
「ん~さっきはああ言ったけど~あれはいじめというか~、う~ん」
「誰も積極的に関わろうとしないんだろう?水木君が嫌ってるからとかそういう理由で。だから結果的に孤立している。違うかな湊渡君」
「だいたいそんな感じですね~」
湊渡さんがそう答える。僕の理解が遅いのか、栞の理解が早すぎるのか、それはよく分からないけど、栞が小さく
「………めんどうだな」
と呟いたのが聞こえた。