11話 茉理と栞ー04
ぬそぬそ、と、いうような表現しずらい気持ち悪い感覚の中で目が覚めた。
なんだろう、この感覚は、ああそうか分かった。これは寝すぎた時の感覚なのだ。
眠りすぎて、起きてすぐには、頭も体も、上手く回らない。
何となく僕は目覚ましを見る。
短針が11時を指していた。
………11時。
11時?
11時!!?
遅刻じゃないか。栞も起こしてくれればいいのに。昨日マイクを薦めたのをそんなにも怒っているのだろうか。それとも怒っているのはその前の事か?つまり、僕が問い詰めた彼女の「知り合い」発言についての事だけれど。
いやそれこそないだろう。いくらなんでも、そこまでひきずるような彼女じゃない。………のか?僕が栞の何を知っている?僕は彼女の「知り合い」に過ぎないのだから。本当はあの発言にそれなりに怒っていて、僕を起こさなかったんじゃないか?
そうじゃないそうじゃない!!そういう事じゃないんだ今は!!
遅刻だ!!2日目にして!!盛大に!!
僕ががばりと起き上がると、僕の体の上から何かがずるりと滑り落ちた。
昨日僕は寝る前に、何か置いただろうか?とにかく眠かったからよく覚えていないが、置いていないはずだ。じゃあ何だ?いやどうでもいい。急いで準備して学校に行かなければ。
僕はベッドの横に落ちたそれを、一応一目確認して、ドアへと向かおうとした。が、僕はその落ちたものを見て、それまでの動作を完全に取りやめ、不格好な姿勢で固まった。
「……………栞?」
栞が、頭を抑えながら起き上がる。
「………どうして君は、寝起きからそんなに活動的なんだ」
「……………遅刻しそうだったから…………というか、栞こそどうしてここに」
「遅刻なんか別に気にしなくてもいいだろう。あの学校にはそれほど長い期間いないんだから。私なんかは、君が一日で学生生活に溶け込んでいる事のほうが不思議だね」
「………栞は何でここにいるの?」
「………。君は一応あの男の実験体だったからね。不特定多数の人間に接した事で、何か変化が生じるかもしれないと思って、観察していたんだ」
「観察なんてしないで、僕に直接聞けばいいじゃないか。何か思い出した事はないか、とか。答えるよそれくらい」
「………。………別にね。それだけが理由じゃないんだが………………」
「ないんだが?」
「………。………言う必要がないから言わない」
「なんだよそれ。教えてくれよ」
「それを私に聞くという時点で、君はもうとっくに駄目なんだよ。………さあ、朝食兼昼食にしようか。学校には昼からいけば十分だろう」
栞が部屋を出て行く。
何だよそれ。