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8話 みんなで?-02

「で、どうするの、茉莉君」


言葉には出さないが、目で「是非とも断ってくれ」と訴えてくる栞。

アイコンタクトが出来る程には仲がいいのに、それでも僕らは、どうしようもなく「知り合い」なのだった。ああいけない、考え込むのもいい加減にしておかないと、栞の後ろでにやにやといけ好かない笑みを浮かべている水木にも、変に思われてしまう。


「普通の、平均的な一般生徒を演じる事」

栞に繰り返し繰り返し警告された事だ。栞自身がもうすでに守れていないような気がするのだが、それはそれでおいておくとしよう。


「じゃあ、行こうかな」

と僕が答えると、栞はあからさまに不服そうな顔をした。……家に帰ったら、栞に注意してあげた方がいいかもしれない。そのキャラを押し通すのなら、何処で誰が見ているかも分からないのに、そんな顔をするな、と。

栞の反応は予想通りだったが、もう一人予想通りの反応をした奴がいた。水木だ。僕が行くと言うと、明らかに嫌そうな顔をした。どうせ、僕が行かないといえば、栞を口説く事に全力を注いでいたのだろう。「みんな用事があったみたいでな、悪いけど、これだけしか集まらなかった」とか言って、栞の周りを奴の手下だけで固めるつもりなんだ。


……………とかまあ、ろくに話した事もない人間をそんなに悪く言うのもどうだろう。でもまあ、アイツを僕は嫌いだ。初対面なのに、何故か嫌いだった。自分でも珍しいと思うが、どうしようもなく、この水木という奴とは気が合わない予感がする。


水木以外の視線をふと感じたのでそちらを向くと、湊渡さんが心配そうに、何かを言いたげにこちらを見ていた。



「でも茉莉君、引越しでごたごたしているし、今日は早く帰ろうという話だったじゃない?」

もちろんそんな話はしていない。よっぽど行きたくないのだろうか。栞がこの男の事を良く思っていないというのは、僕にとってはありがたい情報だった。

「それは別に明日以降でも問題ないとも話した筈だよ、栞。せっかく誘ってくれてるんだから、行こうよ」

栞を見習ってという訳でもないが、僕も作り物の笑顔を貼り付けて答えた。

どうせ僕の返事がイエスでもノーでも、栞は無理矢理参加させられるのだ。僕が行かないという選択肢はない。栞の事だから心配ないとは思うが、万が一という事もある。それにこれは今日何となく思った事だけれど、今の作ってある方の栞は―――というよりも、栞自身が本当は人付き合いに慣れていないんじゃないだろうか。栞にとって人と話すというのはこれまで、あくまで実験の一部であったんじゃないだろうか。だから、こんな風に話している栞は、かなり危ういような気がする―――まあどちらにしろ、僕はついていく事に決めた。


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