△2話 転校生ー02
「あーなんだ、じゃあ取り合えず自己紹介してくれるか、適当にでいいぞー」
先生がやはりダルそうに言う。何故こんな先生が人気があるのか、理解に苦しむ。
「片瀬茉莉です。よろしくお願いします」
男の方がそう言った。やはり緊張しているようだ。何を緊張しているのだろう。馬鹿馬鹿しい。
「片瀬栞です。……………よろしくお願いします」
女の方がそう言ってにこりと笑った。
兄妹なのか。全然似ていないな。それにしても、同じ日に転校してくるのだから、何らかの関係性があるのは当然か。
「よろしくお願いします」という言葉を付け足したのも少し気になったが、それよりも俺の斜め前にいた女が、「えっ?」と驚いたような声をあげた事の方が気になった。
確か湊渡とかいう名前だったか。
ほとんど喋った事もないので、詳しくは分からないが、この湊渡とかいう女は基本的に無口な奴だった筈だ。
その証拠に、今も注目を集めた事が恥ずかしいのか、俯いてしまっている。
もう一つ気になる事があった。
転校生の女の方が自己紹介をした時に、男の方が驚いたような顔をした事だ。
その表情の変化は一瞬の事だったが、あれは見間違いではなかった。
「席はまあ空いてる所に適当に座れ」
「馬鹿かよ先生ー。空いてる席なんぞねーだろーが」
「あんまり口が悪すぎると、俺も流石に見逃せないぞ」
「そこで怒るぞって言わねーで見逃さないってーのがおめーらしーな、先生」
「あーそうかい。それじゃーとりあえず今日はそことそこに座っとけ。明日までに何とかするから」
そう言って先生が指差したのは俺の右横と、水木の左横だった。二人とも、どうやら今日は休みらしく、席が空いている。
男の方が、俺の横に座った。茉莉とか言ったか。
めんどくさいから、話しかけて来ないでほしい。妙な気をきかせて、話しかけて来るような奴だったら困るな。
後ろの方の席では、栞とかいう女に、さっそく水木がなれなれしく話しかけていた。