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1章 1話 ある朝の風景ー01


いつものように目が覚めた。

いつものようにとは言っても、普通じゃない目覚めの方が珍しいのだから、毎日毎日こういう風な事を思う僕は何かおかしいんじゃないだろうか。

かといって、いつもと違う目覚めなんて、もう二度と体験したくないのだけれど。


この家で暮らし始めるようになって、一週間になる。

いたって普通の家だった。

仮にも僕らは追われている身なのだから、もう少し隠れてすごした方がいいんじゃないかと思って栞に聞いてみたが、

「いや、心配する事はないと思う。あの男も自分のミスは隠しておきたいだろうからね。上司の記憶を書き換えるんじゃないかと思う。追っ手が来るとしても、それは奴が個人的にやとった者だろう。おそらく、ね」

と返された。一応その時は納得したものの、僕はいまだに不安だった。

目覚めが普通である事を毎日確認するのも、きっとそのせいなのだろう。たぶんきっと。


洗面所で顔を洗い、タオルで拭く。

階下でテレビがぶつぶつ言っているのが聞こえる。どうやら栞は一回にいるらしい。相変わらず驚くほど朝が早い。

栞と二人でこの家に住んでいる訳だが、栞は何とも思っていないらしい。

仮にも僕は男なのに。少し心外ではあった。


これも毎朝思う事だが、なかなかいい家だった。勢いで出てきたのはいいけど、暮らしをどうするかとかは全然考えていなかったので、実に助かる。栞は「別にいいよ」と言ってくれているが、いつかお金を返さなければ。

この家は、栞が全部お金を出している借家だ。

唖然としている僕に対して、

「給料だけはよかったからね、金はそれこそ腐るほどある。講座が止められていないか、それだけ心配だったけど、どうやら問題ないようだ」

と当然のように栞は言った。



1階のドアをガチャリと開ける。

「あぁ、おはよう茉莉まつり君」

「おはよう。何を見ているんだ?栞がテレビを見るなんて珍しいね」

「珍しいかな?………やっと生活が落ち着いて来たからね。余裕が出来たんだろう」

「ふーん。で、随分熱心に何を見ているんだ?」

「ああ、君も見てくれよこのビデオ」

ビデオかよ!!と突っ込みそうになったがこらえた。【カメラが捕らえた大自然の驚異!!】という、まあよくありそうな特番だった。

「どれどれ?…これがどうかしたのか?」

「まあね。こういうのって、誰も死ななかった場面を使うものだろう?」

「そうなのか?」

「…そうなんだよ。でもこれは、死んでるんだよ。司会者があまりにもあっさりと「死傷者は5人です」というから、聞き逃しそうになったんだけどね」

熱心に見ている栞には悪いが、僕はあまり興味を抱かなかった。


「このテレビ局は、大丈夫なのかな?苦情とか凄いんじゃないか?………うむ、興味深い」

一人ごとを言う栞を横目に、朝食の準備に取り掛かった。

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