16話 茉莉と栞ー03
「湊渡さんよりって、まるで湊渡さんをまるで信用していないような言い方じゃないか」
「ようなも何も、私が湊渡君を信用している訳がない。当たり前じゃないか。初対面だよ?そこまで心を開ける君の方がおかしいと私なんかは思うけどね、茉莉君」
「でも敵ではないだろ?だから栞も依頼を受けたんじゃないか」
「依頼を受けた事と、彼女が私達にとって利益を与える人間か否かというのは全く別の問題だ。もし彼女が私達を陥れようと画策しているのだとしても、それを逆に利用してやればいい。伊達に3年間以上も自分を騙し続けていないよ、騙しあいは大得意分野だ」
初耳の情報が含まれていた。栞が【能力】を【発現】したのは、どうやら3年以上前らしい。
「それでもさ、彼女はいい人だと思うんだよ。嘘をつけそうな人には見えなかった」
僕がそう言うと、栞はだらんとしていた姿勢を心持ち正して言った。
「ん、どうしたんだい茉莉君。今日の君はどうかしてるんじゃないか?やけに彼女の肩を持つじゃないか。まさか本当に一目惚れしたとか言い出すんじゃないだろうね」
「違うよ。それを言うなら栞だっておかしいじゃないか。普段は色恋沙汰の話は全くと言っていいほど振ってこないのに、今日はやけに話題にしている」
「する必要がないからしなかっただけだ。だいたい、あの場所を脱出してから関係らしい関係を持ったのは湊渡君が始めてじゃないか」
「そうだよ!!だから僕はせっかくの訪問者を無碍にしたくないと言ってるんだ」
「無碍になどしていないし、そういう話は今してないだろう。論点がずれている。彼女は「依頼者」なんだ。そこをずれて認識してはいけないよ」
「それだよ。その態度が気になっているんだ」
「………」
「今は依頼者かもしれないけど、同じ学校に通うのなら友達にもなるかもしれないだろ?」
「…………今度は何を言い出すんだ」
「まあ聞けよ。栞の言葉をさっきから聞いていると、そういう関係には絶対にならないと、信頼関係は築かないといっているように見える」
「何を言っているのかよく分からないが、その通りだよ。信頼関係なんて必要ない。私は未来永劫、知り合い以上の関係を築かないと決めたんだ」
「………じゃあ僕はどうなんだよ」
「それを聞くのか。無粋な奴だな、君は」
「答えてくれよ。前から嫌だったんだ。何だか軽く扱われているような気がして」
「どう扱われるのがお望みかはしらないが、君ももちろん「知り合い」の一人だ。それ以上でも以下でもない」
「それで君は寂しくないのかよ、栞!!その年齢で心を閉ざすなんて虚しいじゃないか!!」
「……!!もういい。今日はここまでにしよう。今日君はやはりどこかおかしいよ。もっと理路整然として話してくれ。………その君の今の状態が彼女の本当の【能力】なのかもしれないね。狙った男性を惚れさせるとか。は。下らない。本当に、実に、下らない」
そういい残して栞は、別段怒った様子もなく、たんたんとして部屋を出ていってしまった。