15話 茉莉と栞ー02
「………栞」
自分がそれほど純粋な人間であるとは到底思えなかった。が、それを言った時の栞がやけに寂しそうに見えたので、僕は思わず声を掛けた。
「何かな?」
そう答える栞は、まさしくいつもの栞だった。やはり僕の見間違いだったのだろうか。
「……ん。分かったよ。依頼という形で受ける以上、何らかの報酬があるのは、考えてみれば当然の事だった」
「分かればいいさ。私も少し言い方が悪かったようだしね」
「ところで栞、依頼を受けるのはいいけど、具体的にどうするつもりなんだ?さっきの話でも少し出てきたけど、部外者の僕達が入り込むのは少し難しくないか?いくら年齢的には問題無いとはいえ」
「少しどころか、とても難しいだろうね。次に会った時に聞いてみないと分からないが、もしかすると彼女の学校は女子校かもしれない。そうでなくても、学校という閉じられた空間は、異物を容易く発見、排除する」
「女子校なら僕にはどうしようもないね」
「……ま、それはないだろうね。もしそうだとすると、いの一番にそれは言うだろうから」
「………大学ならまた少し話が変わってきそうだけど。どうやって探すんだ?【何かよく分からないもの】を」
「………ねえ、茉莉君」
「ん?」
「君はもう一度学校に通ってみる気はあるかい?というか通いたいかい?」
「何を言い出すんだいきなり。君にしては珍しく話が飛ぶね」
「話は別に飛んでいないよ。で、どうなんだい茉莉君」
「そりゃあ、通えるものなら通いたいけど」
「……………ふむ。ならそうしよう」
「ちょ、ちょっと待ってくれ栞。通いたいからはいどうぞ、ってほど簡単にはいかないだろ?家を借りるのとは話が違う」
「………私の知り合いに、金さえ積めば何でも売ってくれる男がいる。そいつに頼めば、一週間もあれば転校手続きが整う筈だ」
「待ってくれ待ってくれ。通いたいとは言ったけど、そんなアンダーグラウンドな話はごめんだよ。危ないじゃないか、それは施設に居た時の知り合いだろう?通報されておしまいじゃないのか?」
「それは問題ない。確かに施設に居た時の知り合いだが、私の個人的な知り合いだ」
「個人的な?」
「ああ。いろいろ世話になっている、効果の薄い薬を買ったりね。金がある限りはこれからも世話になるだろう」
効果の薄い薬?
「いやそれでも、だよ。その男が本当に信用できるか分からないだろ?」
「少なくとも湊渡君よりは信頼できるよ。この家を借りるのにも一役買ってもらっているし」