14話 茉莉と栞ー01
結論から言うと、僕達は【学校にある何かはよく分からないけど大切なものを探して欲しい】という、掴みどころのない漠然とした依頼を受ける事にした。意外だったのは、こんな変な依頼なのに、栞が乗り気だった事だ。
具体的な内容をもっと詳しく話を聞こうとしたが、もう時間も時間なので、また後日という事になった。
送っていこうかとも思ったが、栞に無言で睨まれたので、それは止めておいた。確かに、彼女が敵でないと決まった訳ではないのだから、それは危険すぎるかもしれない。
「意外だったよ、栞」
「ん?」
「湊渡さんの事を結構信頼してるみたいじゃないか。依頼を受けるのにも肯定的だったし」
「信頼する訳がないだろう。何か勘違いしてるようだが茉莉君。私が彼女の依頼を受けようと思ったのは、彼女の事を信頼したからではなく、彼女の【能力】が非常に魅力的だったからだよ」
「え?でも彼女の【能力】が何か分からないじゃないか。どちらかというと、君が言わせなかった節もあるし」
「それでも大体の予想はつくだろう。………何かを【探す】という【能力】を持つ人間と有益な関係を築いておけば、後々皆を助ける時に便利だろう?」
「………探すとはいっても、あんな漠然とした所までしか分からないんじゃ、あまり意味がない気がするけど」
「何を言ってるんだ君は。今は情報がほぼゼロの状態なんだよ?大きな前進じゃないか」
「でも――」
「それにね、前に彼女に似た症状の男性と………「会った」事があるんだが、漠然としたものでも探せるというのは、便利なものだよ」
「………彼女の【能力】を利用するために、手を貸すって事か?」
「そうなるね」
「そんな!!そんな不純な理由で」
「何が不純だ?馬鹿な事をいうなよ。誰かを助けた見返りに、何かを要求するのは当然の事だろう。無条件で他人を助ける人間などいない」
「そんな事ない。友達の頼みなら、無条件で聞く事もある筈だ」
「………第一に、湊渡君は絶対的に他人なんだが。その君のいう事も、その友達の【信用】を得る為にする事だろう?女性に優しくする男性も同様だ。女性の【愛情】や他人からの【評価】を得たいが為にそういう事をする」
「それは極論だよ。もっと他人を信用したらどうなんだ、栞?」
「できない」
「………」
「茉莉君、君はね、少し純粋すぎるよ。その年齢にして信じられない程に」
栞はそう言った。