10話 訪問者の秘密ー01
「えっとぉ~、それはぁ~」
「それは?」
どんな些細な表情の変化も見逃すまいと、湊渡さんを半ば睨みつけるように見据える栞。
例え疚しい理由が無かったとしても、そんな事をすると、言える事も言えなくなってしまうのではないだろうか。
「えぇっと~、あの~、あれですよ~」
「どれだい?」
逃がすつもりはないらしい。どうあってもこの場で、栞は湊渡さんがこの家を知っていた理由を突き止めたいと見える。
「ん~、あのぅそれって絶対言わなきゃ駄目ですか~、どうでもよくないですか~」
「絶対だ。どうでもいい訳がない」
「え~とぉ~、……………。なら言いますけど~、偶然茉莉さんが外で話してるのを聞いたんですよ~」
「………誰と?」
「……………」
そこで二人は暫し沈黙し、示し合わせたように僕の方を見た。
その可能性は限りなく低いとしても、もしかしたら本当かも知れない、という感じで、じとりと見る栞と、
縋るように、うっすらと涙を溜めて僕を見る湊渡さん。
……………。
いや。いやいや。
そんな目で見られても。
なぁ栞。いくらなんでも。いくらなんでも僕がそこまで間の抜けた行動をする訳がないだろう?
湊渡さんも。初対面の僕に、何を期待しているんだ。悪いけど、僕には色仕掛けは通じない。そんな上目遣いで見られた所で、どうという事はないのだ。
「……いや、覚えがない。悪いけどね、湊渡さん。僕達はこの町に引っ越して来たばかりだから、何でも屋を始めたという、そんな報告をわざわざするような知り合いはいないよ」
「だそうだ」
「……………うぅ」
「答えにくいなら、私が当ててあげようか」
何を思ったのか、栞がそう言った。どこか嬉しそうに、楽しそうに続ける。
「君は【能力者】だね。この場所も、君の【能力】で知ったんだ、そうだろう?」