9話 異様な訪問者ー03
「……ところでね、湊渡君」
ふいに。
僕でさえふいにと思えるタイミングで、栞が湊渡さんに話しかけた。
「え?……君?」
いきなり話を振られた事にも驚いたようだが、自分の名前を「君」付けで呼ばれた事の方が気になったらしい。
だから助け舟を出す。
「気にしないでいいよ、湊渡さん。君付けで呼ぶのは栞の、その、癖みたいなものだから」
「はぁ。そういえば茉莉さんの事もそう呼んでいますよねぇ~。それも仕込んだんですかぁ~?」
「違うよ!!」
誤解が解けていない。
冗談かもしれないが、どちらにしろ困ったものだ。
「まぁそれはどうでもいいんだ。依頼を聞く前にどうしても聞いておきたい事があるんだけどね、湊渡君」
どうでもはよくないのだけれど。
どのようにこの家に辿り着いたのかを、いよいよ尋ねてみるつもりらしい。
「………なんですかぁ~?」
別段警戒心を抱いたようにも見えない港渡さんが問い返す。
ふむ。どのように質問するのか見ものだ。
「君は、この家の場所をどのようにして知った?」
直球だった。これ以上ないほどに直球だった。
「どのようにって、ホームページを見て来たんですよぉ~」
「それはおかしいね、この家の住所は書いてなかった筈だ。そうだったよね、茉莉君」
「そうだね」
「それは…」
明らかに困惑したように、言葉を濁す湊渡さん。
この返答如何によっては、平和な日常が崩れ去ってしまう。