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【番外編】 総隊長の事情

ジュリアスがフィオナとの婚約のことで総隊長グレゴリー・クレセントに呼び出された時の話です


グレゴリー視点

 ジュリアスはグレゴリーからの呼び出しの要件を理解していたらしく、婚約者のフィオナを伴って現れた。


 ちなみに上官であり父親であるアークも呼んでいたが、彼は多忙を理由に雲隠れを決め込んでしまった。


「ジュリナリーゼ様には大変良くしていただき、お互いに親友と呼べるようなお付き合いをさせていただいた事を至極光栄には思っておりますが、私のような者がジュリナリーゼ様の隣に立つなどということは畏れ多いことであります」


 ジュリアスはジュリナリーゼとの婚姻の可能性を否定し、愛するフィオナと一生を共にするつもりだと(のたま)った。


 つまりジュリアスは、ジュリナリーゼと結婚するつもりはないと、グレゴリーにはっきりそう言った。


 グレゴリーは頭を抱えそうになっていた。


 他の女との婚約を決めた時点でジュリアスにジュリナリーゼとの結婚の意志がないことは明白だったが、なぜこんなことになってしまったのか。


 ジュリアスが他の女に目移りする前にさっさと婚約させて首にナワをかけておくべきだったのだ。


 ジュリアスがジュリナリーゼを避けるようになってから、ジュリアスは彼女と結婚する意志がないのではないかとグレゴリーは危惧していた。


 ジュリアスは次期宗主の夫として申し分のない人物である。彼が相手ならば国民のほとんどが納得するだろう。

 例え本人が怖気付こうとも、この魚を逃すべきではないとグレゴリーは思っていた。逃げられないように早々に囲い込むべきだと、ミカエラにも直接そう進言していたが、実際の所ローゼン家からブラッドレイ家に婚約の打診をした様子はなかった。


 理由は、ミカエラの夫のクラウスがこの件にあまり積極的ではなかったからのようだった。


 クラウスは表面上はにこやかな紳士であるのだが、銃騎士に、というかグレゴリーに対して腹に一物どす黒いものを抱えている。


 自分の娘が、目の敵にしているグレゴリーと同じ職業の男と結婚することを歓迎していない節があった。


「何が何でも絶対に結婚させない!」というわけでもなく、おそらくジュリナリーゼが強くジュリアスと結婚したいと訴えれば聞く耳は持ったはずだ。


 この件に関しては、ジュリナリーゼがもう少しわがままで、父親にジュリアスとの結婚をねだるような姫であれば良かったのになと思ってしまう。


 ミカエラはこの国で一番尊いとされる身分ではあるが、家庭内に置いての力関係はクラウスの方が上であり、気の弱いミカエラはほとんど夫に異を唱えられなかった。


 本当は、グレゴリーがしゃしゃり出て二人の婚約をまとめてしまっても良かったのだが、そのことを考える度にあのクセ者のクラウスの顔が浮かんでしまった。


『我が家の事情にあまり首を突っ込まないでもらえますかな、()()


 仮にグレゴリーが二人を婚約させようと動いた場合に想定されるクラウスの発言と、こちらに向けられるだろう微笑みを偽装した瞳の奥に淀むように沈んでいる根強い増悪を持った視線まで脳内再生されてしまって、げんなりする。


 グレゴリーはクラウスに対して負い目があり、あまり強く出られないという事情もあった。


 そんなわけで、まだ成人してもいない幼い婚約者の前で、ジュリアスに「その娘との婚約を破棄してすぐにジュリナリーゼ様の所に馳せ参じて許しを請うてお前の全ての愛を捧げて命懸けで一生幸せにしますと宣言した上で婚約しろ!」というような(パワハラ)をかけるわけにもいかなかった。本当は言いたかったが。


 グレゴリーは、今回のジュリアスの電撃婚約については、目の前の二人に言葉少なに祝いを述べるに留めた。


 グレゴリーは退出する二人を見送りながら、実の娘のように大切に思っているジュリナリーゼの力になってやれないことを歯がゆく思った。


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今作品はシリーズ別作品

完結済「獣人姫は逃げまくる ~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~」

の幕間として書いていた話を独立させたものです

両方読んでいただくと作品の理解がしやすいと思います(^^)
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