10 Before birth 2
R15注意
『門番』視点→シャルロット視点
とにかく人がたくさんいる場所に行けば何とかなるだろうと思った彼は、首都がある方向へ向かった。
ところが、彼の予想に反し、シドが暴れ出した情報が独り歩きした結果、「暴れ出したシドによって大量殺戮が始まってる」だの、「シド率いる大勢の獣人たちが現れて首都一部壊滅状態」だの、正しくない情報で溢れていて、シドの処刑は既に執行されたにも関わらず、偽情報に踊らされた首都の人々は大混乱に陥っていた。
デマではあっても命の危機が迫る情報によって、逃げようとしたり、家に閉じ篭もって恐怖する人々が大多数で、愛の営みをしている者たちが全く見つからない。
(こんな状態で、真っ昼間から悠長に✕✕✕✕しとる奴らなんて、おるわけないか…………)
彼は絶望的な気分に襲われながらフラフラと空中を彷徨っていたが、ふと、『あの世』に引っ張られる力とは別方向の力がグッと自分に掛かったのを感じて、ハッとその方向を向いた。
「もうすぐ新しい命が宿る場所」を示す、例の光が発生している場合、魂をそこに引き込む力も同時に発生する。
(最中の奴らがおる! 天の導きや!)
彼は歓喜しながら、導かれる方向へと急ぎ向かった。
辿り着いた先では、黒髪に、銀色という珍しい瞳の色をした筋肉質で大柄な美男と、十代後半ほどの黒髪の美少女が部屋の中で✕✕っていた。
男の方は「✕め!」とまるで呪詛まみれのような言葉を何度も繰り返している。
二人は完全に出来上がっていたが、いきなりとんでもない場面に出くわしてしまった元『門番』の男は、ドン引きしていた。
彼は引っ張られる力に従い、首都の一角にある大豪邸にやって来ていた。商人をしていた前世の記憶を頼りに、そこがアンバー公爵邸であることには気付いたが――――
(ここ、公爵家? ホンマに公爵家? ✕✕の館とかじゃなくて?)
由緒正しき公爵家の一室で繰り広げられている、殺人現場もかくやという光景には唖然とするしかなかった。
二人は行為をし続けた。
「シャル様! あなた様が受け入れるのは生涯私だけですよ!
浮気は絶対に許しませんっ!
あなたは私の子を生んで完全に私のものになるのです! 元彼は完全排除ですっ! 元彼滅びろーッ!」
男は思いの丈を叫びながら、「子が宿る光」が腹部から出ている少女に気持ちをぶつけている。
どうやら少女が浮気をして、その制裁でお仕置きをされているらしい。
そんなことを思いつつも、元『門番』はこの少女の胎に宿るかどうかを迷っていた。
(こいつらが親…… 大丈夫かな……)
不安はあったが、他に子を宿しそうなカップルが近くにいないのも事実だった。
もう一度別のカップルを探しに行っても、必ず見つかるとは限らないし、その間に別の魂に先を越されてしまう可能性もある。
彼は、背に腹は代えられないと覚悟を決めた。
少女に近付いた彼は意を決し、えいやっ! と女の胎に宿った。
******
シャルロットの意識は朦朧としていた。
今も意識が飛びかけようとする中、ふと、シャルロットの視界に、知らない黒髪長髪の男の姿が見えた。
シャルロット好みと言えなくもない年上の優男で、そこそこイケメンだ。
神妙な顔をしたその男は突然シャルロットに近付いたかと思うと、シャルロットのお腹に手をかざし――――
彼はそのまま、手から全身が吸い込まれるようにして、シャルロットのお腹に入り込んだ。
シャルロットは彼と一つになった。
(うふふ、イケメンと一つに♡)
「また私以外の別の男のことを考えていましたね!」
蕩けた思考になったのが顔にも出ていたらしく、シャルロットの浮気心に目敏く気付いた夫ユトは、鬼の形相になった。
(あ、駄目♡)
シャルロットは悶絶した。
その後、連日連夜に渡るユトの執拗な✕✕✕✕が実り、シャルロットはユトの子供を妊娠した。
ユトは泣いて喜び、思い余ってあの日に酷くしたことを謝ってきた。
しかしシャルロットは、「これからもお願いね♡」と要求。「妊婦にそんなことできませんよ!」とユトには拒まれたが、出産後にまた✕✕✕✕✕✕✕をする約束を交わした。
シャルロットはユトに女王様に対するが如く傅かれて世話を焼かれ、デロデロ甘々幸せ妊娠生活を送った。
そして年が明けた翌年、シャルロットは自身の第一子にして、のちの公爵家の跡継ぎとなる、黒髪の男児を出産した。
・元彼の件については、第二部修羅場編の「25 後ろ見て」と「26 割れ鍋に綴じ蓋」参照
→https://ncode.syosetu.com/n5840ho/185/
・黒髪の男児のその後は「獣人姫は逃げまくる…」のアルベールハッピーエンド章「13 約束は守りたい男たち」と次話の「おまけ バージンロード」へ
→https://ncode.syosetu.com/n3337gf/152




