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その結婚お断り ~モテなかったはずなのにイケメンと三角関係になり結婚をお断りしたらやばいヤンデレ爆誕して死にかけた結果幸せになりました~  作者: 鈴田在可
シリウスアナザーエンド 生と死と

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2 未来を知る男 2

シリウス視点

 大暴れするオニキスによって、レインと、そして厄介な存在だった父アークが気絶した。同時に、アークによって身体強化の魔法をかけられていた銃騎士たちも全員昏倒した。


 既に魔力の溜まっていたシリウスは、アークに邪魔されないこの好機に、『死者蘇生の魔法』を発動させ始めた。


 すべては予定通りだ。


 アルベールたちがやってきたことで未来の方向性が定まり、あとは『未来視』で視た通りに、『死者蘇生の魔法』が成功するように動けば良いだけだ。


 最後に自分が死ぬかもしれないが、それはまだ確定していないし、ナディアが生き返る可能性があるのなら、やってみる価値はあるはずだ。


『過去改変の魔法』を使う方法もあるが、『過去改変の魔法』は()()()()()()()()()()()()()()()()という大きな問題点があり、『過去改変の魔法』を使うのは最終手段だと思っている。


 やがて『死者蘇生の魔法』の発動によって、死した魂の通り道である『冥界の門』が空に出現した。扉の上部には縦長の虹彩を持つ目玉があり、扉の周囲には無数の骸骨が(はりつけ)にされている。


『冥界の門』はあの世とこの世を繋ぐ冥界の入口だ。シリウスは魔法の力で普段は見えないその扉を顕現させた。


 門の扉は常に閉じていているが、肉体を持たない死者の魂だけは閉じた状態の扉を通過できる。しかし一度中に入ればこちら側には戻れないので、魂をこの世に呼び戻すためには門を開ける必要がある。


『死者蘇生の魔法』とは、『冥界の門』を守る『門番』と『取り引き』をして扉を開けてもらい、蘇らせたい魂をこちら側に持ってきてもらう魔法だ。


『冥界の門』の鍵は内側――あの世側――だけにあり、鍵を扱うには魔力が要るため、魂段階(レベル)で魔力を持つ死者が代々『門番』を務めている。


『門番』の交代は魂同士の交渉によるが、状況によってはあまりにも長く『冥界の門』に囚われる事態も発生するため、『門番』になることを了承する魂も少ない。


「『門番』との取り引き」とは、『死者蘇生の魔法』を使用した術者の寿命が尽きて死者となった時に、次の『門番』になることを確約することだ。


 処刑場にいる者たちが『冥界の門』に気付いてざわつき始めた。シリウスはナディアを抱えたまま『冥界の門』を見つめて立ち上がった。


『シー兄さん! すぐに『死者蘇生の魔法』を解除してください!』


 地面に座り込んて項垂れ、号泣しているゼウスのそばにいるノエルからの、焦ったような精神感応(テレパシー)が飛んできた。


 禁断魔法『死者蘇生の魔法』について書かれた魔法書はアークが持っていたので、自宅に隠されるように保管されていたそれを、シリウスもノエルも読んだことがある。


 ただし、アークは息子たちが禁断魔法について載っている魔法書を読んだことに気付くと、珍しく表情を変えて真っ青になっていたが。


『冥界の門』を開けると、あの世の物質がこの世に流入してくる。こちら側からは黒い靄のように見える物質が門から溢れ出て、触れるものすべてに「死」をもたらす。


 黒い靄に触れた空気は毒になり、植物は枯れ、人は死ぬ。


 あの世から出てきた黒い靄はこの世とは別の(ことわり)で動いているので、物理的に封じ込めることもできないし、魔法も効かない。


 ただし唯一、光魔法を極めた者の浄化魔法であれば、黒い靄を消し去ることができるので、そこに勝機はある。


「『死者蘇生の魔法』を使うと千人が死ぬ」というのは比喩であり、その本当の意味は、「『冥界の門』を開けたことで溢れ出てくる黒い靄によって、千人規模の人間が死にかねない」ということだ。


 つまり、死者を蘇生させることと直接引き換えに千人が死ぬわけではないので、上手くやれば一人の犠牲者も出さずにナディアを蘇らせることができる。


 シリウスは『未来視』により、その筋道も視えていた。


『大丈夫だ。誰も死なせない。兄さんが起きてから、()()()()()()()()。黒い靄は兄さんの浄化魔法で抑えきれる。


 この後すぐにカイがこの場所に来るから、ノエはカイと一緒に処刑場にいる人たちを全員退避させてくれ。


 オニキスも使うんだ。頼めば倒れてる人を運び出すのを手伝ってくれるから』


『未来視』でそれらの光景をあらかじめ視たことを説明し、シリウスの予言通りにその後すぐに弟カインがこの場に現れたこともあって、ノエルはシリウスの言葉を信じてくれた。ノエルはシリウスの指示通り、カインと共に処刑場に残っていた人々を避難させ始めた。


 ノエルは人外級の怪力をもつオニキスにも声を掛けていた。オニキスはシドの首を里に持ち帰ることを条件に、自分が気絶させた銃騎士たちを処刑場の外へと運び出すことに協力していた。


「兄さん、フィーを離さないで。ずっとイチャイチャしてて」


 やがて、頼みの綱のジュリアスが目を覚ましたので、シリウスは魔力補充のためにジュリアスにフィオナとの触れ合いを促した。


 シリウスは、ナディアの「死」に戸惑っているジュリアスに、ノエルへ伝えたものと同じ説明をしたが、『死者蘇生の魔法』が完成した時に自分が死ぬかもしれないことは、やはり言わなかった。


 常にジュリアスのそばにフィオナをくっつけておけば、咄嗟の状況では、兄はフィオナを置いて自分がシリウスの代わりに死ぬ選択はしないだろうし、それでももしジュリアスがシリウスの身代わりになろうとしても、番であるフィオナとの別れをすぐには決断できず、その数瞬の間にシリウスの方が先に動いている。


 もう一人の危険因子セシルにはこっそり眠りの魔法をかけておいた。セシルがシリウスの代わりに死のうとする『未来視』もあったので、やはりその未来も潰しておく。


 自分が死ぬのかはまだわからない。シリウスは生き残る未来に賭けている。もしもその賭けに負けたら、シリウスはナディアとの結婚は来世に期待することにして、自らは死を受け入れるつもりだった。


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完結済「獣人姫は逃げまくる ~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~」

の幕間として書いていた話を独立させたものです

両方読んでいただくと作品の理解がしやすいと思います(^^)
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