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その結婚お断り ~モテなかったはずなのにイケメンと三角関係になり結婚をお断りしたらやばいヤンデレ爆誕して死にかけた結果幸せになりました~  作者: 鈴田在可
ゼウストゥルーエンド 『悪魔の花婿』

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7 ラスボス(?)来たる

少しR15

 素晴らしき初体験を終えた、その翌日――――


 ゼウスと共に、スヤスヤと主寝室で昼近くまで眠りこけていたナディアは、マグノリアの精神感応テレパシーの声を聞いて、にわかに意識を覚醒させた。


『二人とも、起きて。大変、ラスボスが来ちゃったわ』


「ラスボス……?」


 ナディアは寝ぼけ眼を手でこすりながら呟いた。


 隣のゼウスも、「来た? 誰が?」と言ってはいたが、瞼を開けたばかりのようで、未だに夢うつつといった状態だった。


『ジュリアスよ』


 二人は寝台から飛び起きた。


 昨夜は愛し合った二人だが、寝衣は着ていた。


 この家は高い山の上にあるために夜になるとそれなりに寒く、家に元々置かれていたモコモコな寝衣を着込んで眠った。


 ゼウスは「子供が獣人でもいい」と言っていたし、ナディアも、「本当は子供が大好きだから産みたい」と打ち明けて、「出来ているかもしれないね」とお互いにナディアの腹を撫でながら微笑み合った。


「でもしばらくは二人きりでもいいかもね」なんて話もしつつ、ナディアは身に余る幸せをひしひしと感じながら眠りに就いた。


 ところが、そんな幸せな気持ちもジュリアスの登場で一瞬で吹き飛び、早くも現実と戦わねばならない時が来たか、とナディアは気を引き締めた。


『ジュリアスは一階のリビングよ。こちらを攻撃するつもりはないようだけど、ジュリアスは「番解消の魔法」を唯一使える魔法使いだから、一応気を付けて』


 獣人の番の絆を壊すことができるというその闇魔法は、現在ジュリアスしか使えないらしい。


「ナディアはこの部屋に残って」


 ジュリアスが自分たちを無理矢理別れさせる懸念があると思ったらしきゼウスは、一人だけでジュリアスに会いに行くと言った。


 ナディアも少し不安に思ったが、『ジュリアスは私の意志を完全に無視するようなことはしないのでは?』という、肌感覚ではあるが、ジュリアスへの妙な信頼感は持っていた。


 ジュリアスが『番解消の魔法』を本当に使うつもりならば、リビングで待たずにすぐにここにやって来そうだし、マグノリアの存在があるから機を伺っている可能性はあるが、首都にいた頃だって、ナディアがシリウスを選ぶように誘導しつつも、ジュリアスが魔法を使って無理矢理どうにかこうにかすることもなかった。


 あくまでもナディアの意思は尊重してくれた。


「大丈夫、私も行く」


「でも……」


 不安そうにするゼウスの唇に、ナディアはちゅっと軽い口付けをした。


「もしも魔法で番じゃなくなってしまったら、私を抱いて。私は何度でもあなたに恋をするし、何度でもあなたと番になる」


 ナディアの愛の言葉を聞いたゼウスは、深刻そうだった顔と目の表情を少しだけ緩めて嬉しそうに微笑んだ。


 二人は抱き合って今度は深い口付けを重ねた。











 二人で生きていくと決意を新たにした後、とにかく着替えようと、ナディアはトランクに入れていた自前の服を引っ張り出し、ゼウスもアテナの家から持ってきていた私服に着替えた。


 リビングに行くと、シリウスの兄で獣人魔法使い一家ブラッドレイ家の長男であり、神懸かり的な美しさで周囲の空気すら浄化して光り輝かせている感のある超絶美形ジュリアス・ブラッドレイその御人がいた。


 ジュリアスは銃騎士隊の二番隊長代行という、平隊員のゼウスよりも上の役職に就いていて、現在も隊服姿だ。


「――――今回はあなたが助けてくれたからロイもカナも死なずに済んだし、そのことは感謝してる。私は、あなた自身と手を組むことは別に構わないのよ」


 マグノリアとジュリアスは相向かいで暖炉の前にあるソファに座り、二人で何事かを話し合っていた。


 二人の前のテーブルにはティーセットが置かれていた。マグノリアの前にあるティーカップにはハーブティーが入り、ジュリアスが手に持っているカップにはホットミルクが入っていた。


 優雅に足を組み、王侯貴族的な上品さを醸し出しているジュリアスが飲んでいるのが、ホットミルクというのが、まるで子供のようで如何とも不釣り合い(ミスマッチ)ではあるが、獣人であるナディアも、何となくホットミルクを選びたくなる気持ちはわかる。


 マグノリアは手に白百合の花束を抱えたままだった。百合はマグノリアが好きな花なので、花束はジュリアスからマグノリアへの手土産なのだろうと思う。

 香りが良いからと、マグノリアはたまに野生の百合の花を摘んできては自宅に飾っていた。


 花束を抱えたままだったマグノリアは、ナディアたちの姿を認めると、手の中の百合の花束を瞬時に花瓶に生けた状態で窓際に置いた。


「――――では、その話はまた今度。とにかく、問題はあなたのお父様なの。いつまたあの人が変なこと考えたらって思うと、背筋が凍るから、それだけは本当に何とかしてね」


「本当に申し訳ない。善処するよ」


 ジュリアスは少し苦笑したような表情を浮かべた後、入口に佇むナディアとゼウスに顔を向けた。


 ジュリアスは笑みを消していた。手を取り合って立っているナディアとゼウスを見つめるジュリアスの瞳の中に、どこか翳りというか、悲しみ――ナディアがシリウスを選ばなかったことへの悲しみ――の色が宿っている気がした。


 マグノリアは自分の隣に真新しいカップを二つ出現させた。一つにはホットミルク、もう一つには紅茶が入っている。


「二人とも、座って。これからの二人の行く先を決める、重要な話し合いになるわ」


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完結済「獣人姫は逃げまくる ~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~」

の幕間として書いていた話を独立させたものです

両方読んでいただくと作品の理解がしやすいと思います(^^)
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