表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その結婚お断り ~モテなかったはずなのにイケメンと三角関係になり結婚をお断りしたらやばいヤンデレ爆誕して死にかけた結果幸せになりました~  作者: 鈴田在可
シリウストゥルーエンド 命懸けの愛

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

205/244

1 命懸けの恋

シリウストゥルーエンドです


【注意】下の1話を読んでからでないと第二部からの話の繋がりが悪いのでご注意ください


「獣人姫は逃げまくる…」のレインハッピーエンド章の「3 獣人姫と逃げる」

https://ncode.syosetu.com/n3337gf/119/




シリウス視点

 転移魔法で処刑場から逃げてきたシリウスは実家の自分の部屋にいた。


 シリウスは諜報活動のために実家にいないことが多く、兄ジュリアスが寮住まいになってからは、一人部屋になったこの部屋を他の兄弟の部屋にしようという話も出たが、シリウスの母ロゼがそれを断固として拒否し続けていた。


 なかなか家に帰れないのに、息子の部屋がなくなったらシリウスの居場所までなくなってしまうようで嫌だと、ロゼはずっと危険な場所で仕事をする息子を心配し続けてくれていた。


 シリウスはナディアの身体を、大事そうに自分の寝台の上にそっと横たえた後、急いで部屋を出た。近くにある弟たちの部屋を開けて、気絶しているカインの身体を寝台の上に放り投げる。


 カインに恨みはないが、とにかく時間がない。父アークが追ってくることを考えると、一秒すら惜しかった。


 シリウスはナディアにかけた優しさを弟へは省略した。子供であっても獣人である弟たちは総じて頑丈にできているので、多少手荒にしても大丈夫だ。


 ナディアと同じ寝台に寝かせておけば運ぶ手間は省けるが、独占欲の強いシリウスがそんなことをするはずがなかった。

 たとえ相手が思春期前の実弟であっても、自分の嫁と同衾させるなんて言語道断だった。


 シリウスはカインから吸い取った魔力を使って、この家全体に結界を張った。

 先程は押し負けてしまったが、シリウスの魔法使いとしての力はかなり優秀だ。

 通常の場合魔法は先にかけた魔法が優先されることもあり、熟練した魔法使いのアークであっても、無事に残っているもう片方の腕を黒焦げにでもしない限り、簡単には破れないだろう。


 シリウスは家の中に誰も入れないように結界を張りながら、求める部屋へ向かう。魔力温存のため瞬間移動ではなくて獣人の身体能力でもって急ぎ走った。


 シリウスがやってきたのは母ロゼが出産した部屋だった。ロゼは起きていたが寝台に横になっていて、すぐそばには、おくるみに包まれている生まれたばかりの弟が眠っていた。


「や、やめて! お兄ちゃん! どうしたの?! シーお兄ちゃんやめてぇっ!」


「ふぇぇぇぇー! 黒いぐるぐる怖いよぉぉぉーっ! 兄ちゃん怖い怖い怖い怖――――」


 魔法使いに覚醒したばかりのレオハルトの叫び声が先に消えて、次いでシオン――あまりにも女の子が生まれなさすぎて斜め上の思考に陥ったロゼが女児の格好をさせている幼い弟――も気絶する。


 もしかするとシオンあたりは、シリウスがこれからしようとしていることを理解したら止めてくる気もしたから、シリウスは驚く彼らに一切の説明はせずに、闇魔法の黒い渦を使い問答無用で弟二人の全魔力を吸い取った。


 シリウスが瞬間移動で実家に来たのは、弟たちの魔力を吸収してナディア復活のための禁断魔法に備えるためだった。

 

「シーちゃん…………」


 少し狭くなってしまうが、気絶した幼い弟二人をロゼがいる寝台の脇に寝かせていると、驚いたような声が聞こえてきて、シリウスは母がいる方を見た。


 ロゼは上半身を起こして口元に手を当てながら、驚きの表情だった。


 ロゼのそばにちょこんと寝かされている生まれたばかりの弟――出産前から名前はジークオルトにすると決められていたその赤子――も、シオンとレオハルトの叫び声に目が覚めてしまったらしく、つぶらな灰色の瞳でシリウスを見ていた。


 シリウスはジークオルトに手を伸ばした。柔らかなその頬を撫でた後に可愛い小さな頭も撫でる。ジークオルトは沐浴をしてもらっていて、繊細でフワフワな短い灰色の毛の感触が心地良かった。


 愛らしさ大爆発の可愛すぎる弟との触れ合いで気が回復し、全量には少しだけ足りなかったシリウスの魔力は全回復した。


「母さん、俺、愛に生きるから! 俺が必ずナディアを救う!」


「シ、シーちゃん…………!」


 シリウスに宣言されたロゼは衝撃を受けた様子で涙ぐみ、身体を小刻みに震わせている。


「シーちゃん! 頑張って!」


 シリウスはロゼの様子から、自分がこれからすることを反対してくるのではないかと思ったが――もしも反対されても魔法使いではない母では自分は止められないと踏んでいたが――その予想は外れた。


 ロゼはシリウスの覚悟を察したのか、涙ぐみながらもこの命懸けの恋を応援してくれた。


 母は獣人独特の鋭すぎる嗅覚で、シリウスが先程まで腕に抱いていたナディアが既に死んでいることをわかっているのだと思う。


『番の呪い』によるものであっても、その感覚や思いは通常の番に対するものと全く同じだ。


 獣人である母は番を失う悲しみがどういうものなのか理解している。シリウスのことを心配しつつも、何とかできるのであれば「頑張って!」と声をかけたくなってしまうのだろう。


 けれど、人間である父は、表面上はわかっているつもりであっても、本当の所では理解していない。だからずっと、自分の考えを曲げずに、ナディアとの結婚を許してくれなかった。


 アークがどう考えていようとも、シリウスにとってはナディアのいない人生なんて考えられない。不能のままの身体では彼女と肉体的に結びつくこともできないが、それでもいい。


(ナディアが俺のそばにずっといてくれて、笑って生きていてくれるなら、俺は何でもする――――)


 シリウスが決意を新たにした所で、ちょうどアークが瞬間移動で家の外に現れてしまった。家の中に入ってこられないように結界は張ってあるが、うかうかしてたら邪魔される。


「母さん! ジーク! ()()()()()()!」


 シリウスは覚悟を決め、()()()()()()を発動させた―――――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今作品はシリーズ別作品

完結済「獣人姫は逃げまくる ~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~」

の幕間として書いていた話を独立させたものです

両方読んでいただくと作品の理解がしやすいと思います(^^)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ