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15 予知

一部残酷な表現あり

ジュリアス視点

『マズい! シー兄が勘付いた! 「未来視」だよ! 何でよりによってこのタイミングで開眼しちゃうんだろう! たぶんそっちに行くから警戒して!』 


 シドを幽閉中の郊外の獣人収容施設にて父のアークと待機中だったジュリアスは、脳内に響く弟セシルの精神感応テレパシーの声を聞いた。シドの処刑執行まであと数時間と迫った所だった。


 顔を動かしたジュリアスはアークと視線を交わし合った。セシルの精神感応はアークにも送られていたらしい。


 部屋に気配が増えた。セシルの言葉通り瞬間移動で現れたのは、全身に殺気を纏ったすぐ下の弟シリウスだった。


 任務中は常に姿替えの魔法でオリオン少年や別人の姿に成り代わっているシリウスだが、今は魔法を解いて本来の白金髪の青年の姿に戻っている。


 アークを睨み付けるシリウスの様子とセシルの精神感応の言葉から、ナディアが捕まったことをシリウスが気付いてしまったようだとジュリアスは理解した。


『未来視』というかなり稀有な力がシリウスに発現したとの話だが、喜ばしい反面、ナディアについてどこまで気付いているかが気がかりだった。


(ナディアがエヴァンズと接触したことまでは知らなければいいが)


 ジュリアスは怒れる弟を見つめながら、シリウスがアークに攻撃を仕掛けることを最大限警戒していた。


 もしもの場合は、ジュリアスはアークを守るつもりだった。アークも対応はするだろうが、魔法での防御が間に合わなかった場合、アークではシリウスに勝てない。


 ふと、脳内にいきなり絵が映り込む。今視界に映るものとは別の光景が『視える』この現象は、魔法使いが他の者に絵を伝える際に起こるものだ。






 ――――断頭台に上がるのは虚ろな目をした茶髪の少女だ。


 場所はシドの処刑が予定されている処刑場で、数多くの見物人が観客席に詰めている。


 少女は何も語らず、抵抗もせず、促されるまま首切り台に首を差し出した。機械の斧が落ちてきて、少女の首が斬られる。


 切断面から血が吹き出し、残された少女の身体がビクビクと痙攣している。台の下では、目を閉じた少女――――ナディアの首がゴロリと転がる…………






 絵が切り替わり、今の凄惨な場面とは別の絵が脳内に映し出された。






 ――――茶髪の少女が泣きそうな顔で走っている。場所はやはりシドの処刑が予定されている処刑場だが、背景の観客席は空席ばかりで、ほとんど人がいない。


 銃声が聞こえた。走っていた少女は後ろから銃弾を撃ち込まれていて、倒れた。胸を撃ち抜かれて倒れ込む最中さなか、少女は銃撃された方向に視線を向けながら、その瞳を途方も無い悲しみの色に染めていた。


 少女が倒れた時には、その瞳は既に力なく閉じられていた。


『ナディアァァァァァぁぁぁっ!』


 絶叫と共にその場に現れたのは白金髪姿のシリウスだ。少女――――ナディアを胸に抱き起こしたシリウスは治癒魔法を施し始める。


 二人から光が溢れて、光が収まった時にはナディアが吐いた血や服に付いた胸からの出血の跡は消えていたが、ナディアは目を覚まさない。


『ナディア! 嘘だ! ナディア!』


 シリウスは何度も何度も治癒魔法をかけているが、傷口や出血の跡は消えて身体は綺麗になっても、ナディアはピクリとも動かない。


『嘘だ! 嘘だ! 嫌だ! いやだァァァッ! ――――――――』


 叫ぶ絵の中のシリウスは気付いたようだが、ジュリアスも気付いた。


 治癒魔法は文字通り傷を治癒するのみで、死者を蘇らせることはできない。


 シリウスの魔法も虚しく、ナディアは銃撃の直後には既に事切れていたらしい――――――






「どういうことだ!」


 脳内から絵が消えた直後、シリウスがアークに向かって凄む中、ノエルを連れたセシルも瞬間移動で姿を現していた。


『今のはシー兄が送った「未来視」だよ。愛の力なのか何なのかわからないけど、シー兄はナディアお義姉さんに将来起こりかねないことを予知しちゃったみたい。


 パターンが二つあるのは、それが未来で確定してないからだよ。『未来視』は未来の色んな可能性が視えるみたい。今の所シー兄の『未来視』は、ナディアお義姉さんの「死」しか感知してないっぽいけど……』


 セシルが精神感応で告げてきた。


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今作品はシリーズ別作品

完結済「獣人姫は逃げまくる ~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~」

の幕間として書いていた話を独立させたものです

両方読んでいただくと作品の理解がしやすいと思います(^^)
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