4 わからせられました
R15
ナディアに用意されていたのはワンピース型の白い夜着で、元々はレイン先輩がお嫁さんのために用意していたものらしい。嫁にはまた新しいものを買うからと、新品のそれを譲ってくれた。
夜着とお揃いの白い下着も取られてしまい――――
「ずっと謝りたかったんだ。痛かったよね…………」
ゼウスが言っているのはあの時のことだ。
ナディアは首を振った。
「ゼウスのせいじゃなかったのは知ってる。むしろ、ゼウスは私を斬る動きに抵抗したとも聞いているわ。もしもあの時操られたのがゼウスじゃなかったら、私は死んでいたと思う。衝撃的な出来事だったけど、もう忘れるから」
「本当にすまない」
ゼウスの暗黒の空気は収まっていて、代わりに、とても申し訳なさそうな雰囲気を滲ませていた。
「ゼウスのせいじゃないけど、でも…… もしも、すまないって気持ちが消えないのなら、その分、私のことを大切にしてくれる?」
ナディアは、自分はちょっとずるいかもしれないなと思いながら言葉を口にしていた。
謝りはしたものの、ナディアだって正体を偽ったり、ゼウスを信じずに彼の前から姿を消したりした。その結果ゼウスはとても苦しんだのだと思う。
何よりも、彼の故郷が襲撃されてゼウスの大切な人たちが死んでしまったのはシドのせいなのだから、償わなければいけないのは自分の方だと思った。
申し訳ないのはナディアも同じだ。ナディアは一生ゼウスのそばにいて彼に尽くそうと思っている。一生ゼウスだけを愛して、今度こそは彼を信じ抜く。
「もちろんだよ」
ゼウスは即答でそう返してくれた。
「私のこと殺さないでいてくれる?」
「殺すわけないじゃないか。君を誰よりも愛している」
口付けの後に、ゼウスは――――
「ナディア、愛してるよ」
「私も、愛してる……」
ナディアは別れてからもずっと、ゼウスのことを愛していて、思い続けていた。
「俺がこの世で愛してるのはナディアだけだってわかった? もう二度と俺の愛を疑ってはいけないよ」
ナディアはこくこくと全力で頷いた。
ナディアはゼウスの深い愛に戦慄しつつも、両思いだと確認できたことを嬉しく思い、とても幸せだった。
昨夜はお互い眠ってしまったため、入浴は朝二人で入った。お湯の中で身体を温めながら「そうだ、お兄ちゃんて誰?」と、また暗黒王子が降臨しそうになったので、ナディアは慌てて、実の異母兄(こことても大事)の家に居候を始めた所から、その後都会に出てきて家庭教師をしていたことなど、これまでの経緯を話した。
ナディアは幸せだった。ゼウスのことで辛くて自死を選びそうになったこともあったけど、あの時に死なずに生き延びて本当によかったと思った。