5 本気見せてよ
R15注意、ヤンデレ注意
いつも優しかったはずのゼウスの冷酷な物言いに衝撃を受けているナディアは、仰向けに寝転んだまま身動き一つ取れなかった。
「『浮気』してたなんて絶対に許さない…… 他の男の痕跡なんて全て潰してやる」
ナディアは地を這うようなゼウスの声に恐れ慄いてやはり動けない。
「こんなあり得ない量のキスマークなんかつけられて……っ! シリウスと『オリオン』の二人がかりで責められてたのかっ!?」
ナディアは思ってもみない方向の卑猥な内容の浮気嫌疑をかけられてしまい、仰天した。
「ち、違う! 一人よ!」
ナディアとしては、「シリウス=オリオン」は言えないにしても、複数とエッチなことしてたなんて思われたくなくてそう叫んだが、「浮気相手は一人」とも取れる発言によって、図らずも火に油を注ぐことになってしまった。
「浮気を認めるんだなっ!」
怒髪天を衝く勢いでくわっと目を剥き、声を張り上げながら怒りを迸らせるゼウスに、ナディアは彼の逆鱗に触れてしまったようだと縮み上がった。
「メリッサ、全部正直に答えて。シリウスと『オリオン』以外に男は全部で何人いたの? そいつらとどこまでしたの?」
「正直に吐け」
「シリウスだけよ! 他の男の人なんていない! 寝ている間にされててどうしようもなくて! ゼウスを裏切るつもりはなかったの! 本当に許して!」
「……そうか、シリウスだけなんだな」
「そうよ、『オリオン』だけ――」
「どっちだ!」
尋問は延々と続き、相手は確かにシリウス一人だけであること、シリウスとは恋人同士ではなかったこと、ナディアが望んだわけではないが色々とされていたこと、たくさんお風呂に入って裸も見られてキスも千回以上されたこと―― などなど、『オリオン』との間にあったことを、ナディアは全てゼウスに白状した。
「メリッサ、何が起ころうと俺はずっと君を愛してるからね。メリッサが獣人でも、『浮気』してても、俺は君を絶対に離さないから」
ゼウスは他の男との浮気内容を聞かせられて、瞳から怒りに満ち満ちた不穏すぎる光を放ちつつも、ナディアを責めている途中から、美しい顔に仄暗い微笑みを浮かべていた。その笑みが怖いが、ゼウスとしては笑うしかないのだろう。
「う、浮気じゃない……」
「絶対に別れない」宣言をしたゼウスに対し、尋問を受けたナディアはヘロヘロな状態だったが、「浮気」の部分だけは否定したくて声を上げた。
オリオンとのアレコレは全てナディアに同意なく行われたもので、断じて浮気ではないと、そこだけは主張したかった。
ナディアが選んだのはゼウスだ。
「……じゃあ、俺に本気見せてよ」
キッ、と眉根を寄せてナディアを恨みがましい目で見たゼウスは、ナディアを抱き締めて深いキスをした。
「本気……?」
熱烈な口付けの間でナディアが疑問を口にすると、すごく何かを求めているような潤んだ目をゼウスが向けてきた。
「ちゃんとした✕✕✕✕がしたい。君の番になりたい」