2 初夜?
R15
ナディアを抱き上げたままシリウスが叫ぶ。
「初夜! 初夜! 初夜!」
「え? え?」
シリウスはまるで、「祭りだ!祭りだ!」とでも言わんばかりのはしゃぎっぷりだが、ナディアは、展開が早すぎる! と困惑していた。
ナディアが、ひとまず落ち着こう! と説得しようとした次の瞬間には、明かりの灯った家の中に戻っていた。いきなり身体全体がほんわりと温かくなり、魔法によってずぶ濡れだった髪や衣服が乾いていく。
「脱ぎ脱ぎ~」
「ちょ! 待っ!」
乾いたと思ったら、今度はすぐに服が一枚一枚勝手に動いていき――――
ナディアは下唇を噛み両手で顔を覆っている。
「……」
ナディアのそんな様子を、シリウスはどこか悲しそうに見つめていた。
(大丈夫、少し我慢すればいいだけ……)
ナディアは決死の覚悟だったが、いつまで待っても成されなかった。
「ああ、やっぱり駄目か」
シリウスの嘆息が聞こえてくる。
「ごめんナディちゃん、今日はここまでだ」
『何事?』と訝しんだナディアは瞼を開けてシリウスを見た。シリウスは表情に悔しさと悲しさを滲ませながら申し訳なさそうにこう言った。
「――――俺さ、実は不能になっちゃったんだよ」
唖然として彼を見返すナディアの脳裏に、この島に来たばかりの頃の記憶が蘇る。
――その時もシリウスは自分と番になろうとしていた。けれどシリウスは直前でやめてしまったのだ。
シリウスは直後からずっと泣いていた。普段の陽気な彼には全く似つかわしくないほどの絶望に満ちた表情で項垂れながら、次の日も、その次の日も…… ナディアに縋るようにしながら、しばらくの間泣き暮らしていたのだった。