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その結婚お断り ~モテなかったはずなのにイケメンと三角関係になり結婚をお断りしたらやばいヤンデレ爆誕して死にかけた結果幸せになりました~  作者: 鈴田在可
悲恋編

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119 ブラッドレイ家の切り札

少しR15


シリウス視点

 南西列島付近から転移した直後に、黒髪黒眼の少女の姿だったシリウスは、元の白金髪に灰色眼の美青年の姿に戻っていた。


 シリウスはあの鍛錬場に降り立った直後、ナディアの惨状を知り頭に血が昇り、正体がばれることすらどうでもいいと思って自身の姿替えや諸々の魔法を解いた。


 けれど直後に父アークが姿替えの魔法をかけ直したために、髪と眼の色だけが黒に変わった少女の姿になっていた。

 父に魔法をかけられたことには気付いたが、そんなことは些細なことだと思えるくらいに眼前の男が憎くてたまらなくて攻撃を仕掛けていた。


 シリウスが元の姿に戻ったのは、父の魔法の影響が及ぶ領域(テリトリー)から抜けたためだ。


 シリウスは海上の別の場所に転移した後も船を走らせて、その後目くらましの魔法を使いつつ、同じように何度か転移した。後を追われても簡単には見つからないように撹乱するためだが、どんなに魔法を重ね掛けしても、おそらく弟のセシルなら見破るだろうなと思った。


 セシルの得意な『過去視』は言葉通り過去の全ての事象を見通せる術だ。通常、他の魔法使いの影響を受けた過去は、その魔法使いの意図が反映された過去が展開される。

 しかしセシルの『過去視』はそれを突破して本当の過去を見ることができる。だからセシルが父に協力した場合は居場所がばれてしまうが、シリウスは何となくセシルが自分を庇ってくれるような気がしていた。


 セシルは普段は意地の悪さを装っているが、その実、兄弟随一慈悲深い。シリウスの意図を汲み父親には黙っていてくれるはずだと、兄弟間の以心伝心のような何となくの思いがあった。セシルはこの恋を応援してくれている。

 ただ、博愛主義者のセシルのことなので、ゼウス(あのクソ男)にも肩入れしそうでそこだけは嫌だが。


 そして、居場所がばれそうな懸念はもう一つだけあった。それは『真眼』の魔法使いのことだ。


『真眼』という真実を見通す稀有な魔法の力を持つ彼女には、目くらましや他の誤魔化しの魔法は一切通用しない。


 ただ、現状では今回のことにほとんど関係のない彼女が、自分たちに関わってくることはないだろうとシリウスは考え、そのことについては気にしないことにした。


 シリウスは海上の適当な場所で人工的な島を作った。土の魔法を使ってそこに植物を生やし、燃えてしまった借家の代わりに第二の愛の巣を建築した。

 ここまでで結構な魔力量を消費してしまったので、家はこじんまりとした素朴な家にした。大抵のことは魔法でなんとかなるので、自分たちの愛が確かめられる空間がありさえすればそれで良かった。


 シリウスは船に戻った。ナディアは船の中にある簡易的な寝台の上に横たわっている。船を移動させながら、魔力を補充するためにシリウスは少しばかり彼女に触れていた。


 ナディアに魔力は全く無いけれど、触れることによって魔力の素となる気を充実させることができる。


「ナディアちゃん、俺だよ。わかる?」


 ナディアに近付いたシリウスは彼女の髪を撫でて優しく語りかけた。しかし、ナディアは目を開けてはいたが、無反応だった。


 身体を触れている間もずっとそんな状態で、生きているのか死んでいるのかわからない、とでも言うのか、まるで感情のない人形になってしまったかのようだった。


(それもこれも全てはあのクソ男のせいだ。今度会ったら確実に殺してやる)


 シリウスはナディアに口付けたが、やはり何の反応もない。ナディアはシリウスを見ているが、きっと何も見ていない。心が死んだようになってしまって、ただ呼吸をして生きているだけ――


「可哀想に…… でも大丈夫だよ、俺が治してあげるからね」


 恋人だと思っていた相手に裏切られて傷付けられたことが、よほどの衝撃だったのだろう。


 シリウスも今回、ゼウスと男女交際をしていたナディアに裏切られたという思いは禁じ得ないが、こんな状態の彼女を責めるわけにもいかない。


 それに結局の所、自分は彼女にフラれ続けていたわけなのである。


 モヤモヤとした思いを抱きつつ、シリウスはナディアに手を伸ばした。ナディアが里にいた頃は毎日一緒にいたが、ナディアのいない里に潜伏している最中はずっと恋しかった。シリウスは家に移動する前に少しだけ触りたくなってしまった。


 あのクソ男に斬られた傷は痕も残らないように綺麗に治してある。


 けれど身体の傷は治せても、心の傷までは治せない。


 ナディアが軽く身じろぎをした。それから、声も立てずに涙を流し始める。シリウスはナディアの涙を舐めた。


 それからシリウスはナディアの利き手に手を置いた。そこには火傷の痕が残ったままだ。ナディアの綺麗な身体には傷痕一つ残したくない。


 時間の経過と共に傷は治りにくくなる。こういった傷を治すのはいつもより多めに魔力が必要だった。ナディアとの触れ合いで魔力が回復してきたシリウスは、掌から光を溢れさせて治療を試みた。


 雷魔法は光魔法と相性がいい。兄弟の中でも自分は治癒魔法が得意な方だと思っている。


 昔は兄のジュリアスも光魔法が得意だった。


 というか、兄の昔の魔法属性は「光」だった。


 通常では治らないような怪我や病気も、以前の兄ならば治すことが出来た。


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今作品はシリーズ別作品

完結済「獣人姫は逃げまくる ~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~」

の幕間として書いていた話を独立させたものです

両方読んでいただくと作品の理解がしやすいと思います(^^)
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