表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/244

9 手紙

 手紙を書くと言っていた通り、オリオンがいなくなってからしばらくして、差出人不明の手紙が届いた。


 手紙は人間社会での通常の輸送方法と同じくポストに入っていた。里では時々人間が用足しに街まで行くことがあったので、頼めば手紙を出すことも可能だ。

 ただ、こちらから返事を書くことは難しいかもしれない。


ジュリアス(オリオンの兄)あたりに頼めば銃騎士隊独自の経路を使って届けてくれるかもしれないけど、そこまでは……)


 オリオンが行ってしまった後、ナディアは自分で食事を作っていたが、里にいた頃は料理上手な義母が全部やっていたのでそれほど経験もなく、失敗続きだ。


 時々オリオンが作ってくれた料理の味を懐かしく思い出す。


 オリオンは仕事場で食べるお昼のお弁当まで作ってくれていた。蓋を開けるとだいたい「好き♡」とか「結婚したい」といったことがソースで書かれたり、肉に刻まれたりしていてげんなりしたものだったが、今思い出すと少し笑えてくる。


 オリオンは恋人候補としては否を突きつける相手ではあるが、ナディアの生活の面倒を見てくれて何度も食事を共にした相手なので、情はある。


 ナディアはオリオンが里でちゃんとやれているのかを確認したくて手紙を開いたのだが――――


『ナディアちゃんに浮気防止の魔法をかけておくのを忘れちゃった。くれぐれも、くれぐれも他の男に口説かれたり誘惑されてもついて行っちゃ駄目だよ! 俺のこと忘れないでね。ナディアちゃんはすごく可愛いから心配です』


 手紙の冒頭からそんなことが書いてあったので、またあの条件を付けて死ぬ呪いをかけるつもりだったのかと思い、手紙を即ゴミ箱に投げ捨ててやろうかと思ったが、思い留まって最後まで目を通してから手紙を文机の引き出しにしまった。手紙には里での近況が書かれていてとりあえず無事なようだった。


 ナディアが手紙を捨てなかったのはナディアのことを『可愛い』と書いてあったからだ。義兄のセドリック以外でそんなことを言ってくれた男性はオリオンが初めてだ。嬉しいか嬉しくないかと問われれば前者だろう。


 その後も定期的に手紙が届いたが、二通目からはナディアへの愛の言葉と共に早く結婚したいという内容が手紙の大半を占めるようになり、三通目からは開封せずにただ文机の引き出しにしまった。


 手紙は読まなかったけれど、ナディアはそれを捨てようとはしなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今作品はシリーズ別作品

完結済「獣人姫は逃げまくる ~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~」

の幕間として書いていた話を独立させたものです

両方読んでいただくと作品の理解がしやすいと思います(^^)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ