<8>主人公を攻略するわっ!
始まってしまった町娘Aルシアの学園生活。そして、ルシアは過去の自分を救う為に良い案を思い付いた。
主人公を私が攻略すればセリーが攻略対象の誰とも結ばれず、過去の自分が処刑される事もない筈だわっ!
セリーは私に懐いている。このままセリーを町娘Aルートと言うゲームにないルートへ導けないかしらっ!善は急げよっ!
ルシアは、寮の自室から張り切ってセリーの部屋へと走って行く。
「セリー!!」
「ルシア様!?」
いきなりルシアが部屋へと押し掛けて来たのでセリーは驚き歓喜した。
「ルシア様から私の自室へと訪れてくださるなんて!!セリーは幸せですわっ!」
「そ、そう?」
相も変わらずルシアにべったりのセリーを見てルシアは、このままでも十分好感度高いのでは……と思う。
「せ、せっかくだから一緒に登校しませんこと?」
「ええ!!ええ!!もちろんですわっ!是非っ!!是非っ!!」
ものすごい食い付きようであった。ルシアが思わず苦笑いしてしまう程に……。
一緒に登校するルシアとセリーは同じクラスである。登校すると周りの視線がルシアへと向かう。
「彼女でしてよ。」
「あら、町娘でありながら学園に入学を認められたって言う?」
「隣の方はマルス家のお嬢様かしら?」
こそこそとルシアは噂の的にされていた。そんなルシアはらしくもなく、少し不安になった。前世では公爵令嬢だったが、今世はただの町娘Aなのだ。ここにいていいのだろうか?と、迷いが頭を過る。
「ルシア様。」
セリーはそっとルシアの手を握って来た。セリーの温かみが手から伝わってくる。
「セリーはずっとルシア様のお側におります。」
吸い込まれそうな優しい笑顔を浮かべるセリーにルシアは安堵すると同時に自信を取り戻す。
こんな優しいセリーが過去の自分を処刑させるわけがないと思える程にセリーの優しさを感じた。
「セリー、ありがとう。」
「る、ル、ルシア様っ!今セリーと!お呼びくださいましたね!!」
「あ、しまっ」
いくら下級貴族の娘とは言え貴族に対して呼び捨てにするなど重罪である。ルシアは慌てて非礼を詫びようとするが、セリーは感激して飛び付いてきた。
「セリーは感激しております!!ルシア様っ!出来ればこれからもそうお呼びくださいませっ!!」
「あ、う、うん、」
もうこれ、攻略済みでは……。
ルシアはそんなセリーとの関係を嬉しく思った時、鐘がなった。
「あ、遅刻ーっ!!」
ルシアはセリーの手を握り走って行った。
★★★★★★
なんとか遅刻を免れた二人は午前の授業を終えて中庭でランチを共にしていた。
「ルシア様ー、どうか、お好きなものをお召し上がりくださいませー!」
にこにことしながらセリーは、テーブル上に豪華な食事を給人に用意させていた。
「あ、はは、セリー、ここまでして貰うのは悪いわ…私はこのサンドイッチがあるもの、いただけないわ」
苦笑いでそう返すルシアだったが、セリーはそれを聞き、あからさまにがっかりした様子でそうですかとポツリと答えた。それを見てルシアは
「あ、そ、そうね!いつもよりお腹が空いているわ!少しだけなら頂こうかしら…あ、ははっ、…」
セリーの眼は輝きに満ちた。キラキラした瞳をルシアへ向けて満面の笑みではい!と答える。
そんな二人の元に一人の令嬢が現れる。
「あら、誰かと思えばテレスじゃない?ここ、よろしくて?」
そう言ってルシアの横に座ったのは悪役令嬢ルシア・ルミナスである。
「あ、あの、なんのご用ですか?ルシアお嬢様。」
「何?何って、私もここで食事を取ろうと思っただけですわよ?」
「は、はは…」
なんか、嫌な予感する……。
そんなルシア・テレスの予想は見事に的中してしまう。
「それにしても、テレスはお父様のお陰で入学出来ているのですから、もっと私を敬うべきでなくて?」
「は、はい?」
「貧相なお食事ですこと」
そう言ってテーブルをひっくり返した。
「なっ?!」
「あら、ごめんなさい。手が滑りましたわっ。」
おいーーーーーーーーっ!!
ルシア・テレスは心の中で絶叫した。やると思った!流石私!!(誉めてないっ!!)
「テレス、ここは汚れてしまったから講堂で食事を取りません事?」
「あ、いや、」
「ルミナス様!今のはわざとテーブルをひっくり返したように見えましたわ?」
「あら?そんなわけないでしょう?セリー・マルス。」
「お言葉ですが、ルシア様は私と食事してくださると約束しておりましたのよ?ね?ルシア様!!」
「え、あ、そ、そう…」
「下級令嬢の癖に生意気なのよっ!テレスは私の下僕なのよっ!」
で、DEAD ENDが見えるーー(泣)!!
何故過去のルシアがルシア・テレスを食事に誘うのかと言えば、ルシア・テレスに命を救われてからと言うもの、ルシア・ルミナスはテレスを気に入ったらしく。セリーと競いあって屋敷に招きあったり、贈り物をしようとしたり色々してきていた。
まぁ、要するにルシア・テレスは過去の自分から気に入られているらしい。
ちなみに、ルシア・テレスは過去の自分を救う為に主人公のレベルが上がるごとにルシア・ルミナスのレベルも上げるように鍛えてきた。お陰でルシア・ルミナスのレベルはセリーと同じてある。つまり、最強の主人公と最強の悪役令嬢が揃っているのだ。まあ、わがままなルシア・ルミナスを鍛えるのは苦労したが……。
「ルシア様はどちらを選ぶのですか?!」
「テレスはどちらを選ぶの!??!」
「お、お二人共落ち着いてください!!三人で食べましょう?!」
二人は納得いかないが仕方なく渋々三人で食べる事になった。三人はギスギスしながらも平和?(?)な、ランチタイムを過ごした。
昼休みも終わろうとしていた頃、それは来た。
「きゃーーーーっ!?!?」
ルシアの苦難は続く……